見えない力に助けられて撮れた1枚

初めての佐渡だった。

島を巡っていた初日の夕暮れ時に突然出会った大絶景。その景色がCBとともに俺に強烈な印象を残した。

俺は出かけた先の野外で撮影することが多い、いわゆるロケカメラマン。仕事に恵まれて長いキャリアの中で47都道府県の全てで撮影をしたことある。そんな俺が初めての佐渡。思わずテンションが上がる。

画像1: 見えない力に助けられて撮れた1枚

佐渡ヶ島に渡るにはフェリー。俺たちが乗ったのは佐渡汽船の高速カーフェリーあかね。なんと船体がオールアルミボディ。

島に渡ればそこは昭和の香りが漂う不思議な場所。宿根木地区の風情ある家並みも良いが、海岸の方は道路脇に黒板の家が続き、ツーリングしている間、まるでタイムトラベルをしている気分。

画像2: 見えない力に助けられて撮れた1枚
画像3: 見えない力に助けられて撮れた1枚

佐渡は一周すると約280km。島内に1泊するならツーリングペースでも余裕で走り切れる。一番高い金北山が標高1,171mで、大佐渡スカイラインというワインディングもある。

画像4: 見えない力に助けられて撮れた1枚

そんな佐渡を走らせたのはCB400SB。ベストセラーバイクであるCB400スーパーフォアにハーフカウリングをつけたバリエーションモデルがスーパーボルドール。かつての先輩CBにちなんでネーミングされているが、皆さんにはこの400SBと1300SBの方がお馴染みだろうか。

上体を起こして乗るポジションながら、風を防いでくれるカウリングはデザインも防風効果も両立した秀逸なもの。キャンディレッドの車体色とともに、400ccだが大人が乗っても似合う1台。

画像5: 見えない力に助けられて撮れた1枚

さて金山跡などの観光地も巡り、ツーリングの予定を順調に消化。島の西側から宿のある北端に向かっていた。

海沿いを走っていた県道45号線は、いつ間にか海から一段上がった高台を抜けるルートに。6時も過ぎてそろそろ宿の夕飯の時間が気になりだした頃、その景色は現れた。 

道は突然、海からそのまま登った崖の上に出た。いきなり広がる大パノラマにCBを止める。夕焼けのオレンジと雲の下の青と、白く輝いて抜けて来る空。そしてそれを反射する、風に撫でられただけの凪の海。感激しやすい俺は「これを撮るために佐渡に来た」と思った。

「暗いけど撮れる?」ライダー役の編集者が聞いてくるが、その前にカメラの用意を始めていた。広角レンズを選び、自分が見ている全てを写し込む。先のヘアピンコーナーを曲がって折り返してくるCBが小さく見える。編集者も心臓が高鳴っていただろう。

画像6: 見えない力に助けられて撮れた1枚

海に囲まれた佐渡ヶ島。はるか水平線の向こうで空と繋がる。そこを走るCB400SB。この日は日本中に傘マークが付く雨予報の中、新潟だけが晴れていた。何か見えない力に助けられて撮れた1枚。信心深くない俺だけど、こういう日は素直に自然に感謝。

写真・文:柴田直行

柴田直行/プロフィール

柴田直行 しばたなおゆき
1963年3月生まれ
横浜市在住
 
オートバイとライダーをカッコ良く撮るのを生業にしているカメラマンです。
ホンダVT250Fが発売になった1982年(19歳の頃)にオートバイブームに乗じて雑誌編集部にバイトで潜入。
スズキGSX-R750発売の翌年1986年に取材のため渡米。
デイトナでヤマハFZ750+ローソンの優勝に痺れてアメリカ大好きに。
ホンダCRM250R発売の1994年に仲間とモトクロス専門誌を創刊して、米国系オフロードにどっぷり。
カワサキニンジャ250が発表された2007年から、ゴーグル誌でも撮影を担当し現在に至る。
オンでもオフでも、レースでもツーリングでもオートバイライフが全部好き。

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