2サイクル500ccマシンとの混走となった初年度2002年にフルエントリーした4メーカーに加え、全車4サイクルとなった2003年には、ドゥカティ/カワサキ/プロトンKRがフル参戦を開始。2007年の800cc化までの5シーズンを走った990ccモトGPマシン達を紹介。今回はYAMAHA YZR-M1(2004)前編をご覧頂こう。
Photos:Teruyuki Hirano Text:Nobuya Yoshimura
多くの新技術を盛り込みつつ、12年ぶりのライダータイトルをヤマハにもたらした、2004年モデル
眺めれば眺めるほど、このマシーンは、まるで一瞬を切り取った写真のように、常に進化を続けるワークス・モトGPレーサーの、2004年最終戦当時の姿を見せつつ、これまでの変遷やその後の進化を考えさせてしまう、怪しい魅力に満ちている。
世界チャンピオンを獲得したロッシが最終戦を走ったまま(前後のタイヤ/ホイールのみは、レース時の16.5インチから移動用の17インチに換装されている)のヤマハYZR-M1。そこには、ホンダから移籍してきた“ロッシ効果”が、明らかに見てとれる。
ひとりのライダーの存在が、これほどヤマハのGPマシーン開発に大きな影響を与えたのは、1978年のケニー・ロバーツ以来だろう。そういう意味で、YZR-M1の2004年モデルは、まさしくロッシスペシャルだったといえる。
だが、これは、ロッシの移籍を契機に登場した、新世代YZR-M1への過渡的モデルである。このモデルに続いて紹介する2005年モデルこそ、フルモデルチェンジをしたニューマシーンとなる。
2004年モデルをじっくりと観察し、2002〜2004年に至る進化をおさらいしつつ2005年モデルを見る楽しみが味わえる。
4軸構成(クランク+プライマリー+ミッションの2本)でありながら、非常に前後長の短いエンジンは、クランク軸中心の高さとオイルパンの深さも特徴的。低重心化がテーマとされた1980年代以前とは隔世の感がある。
エンジンの前後長を短縮すると、ホイールベース(ロッシ号は約146cm)に占めるスイングアームの割合を大きくできる。
これは、前輪分布荷重が大きく、かつ、リアショックのストロークによるスイングアーム角度変化が小さく、トラクションの変化/車体の挙動/リアタイヤのグリップなどが安定したマシーン造りを狙ったためだ。低重心化に熱心でないのは、ローリング挙動を神経質にせず、加えてライダーの感性に素直かつ把握しやすいピッチング挙動を得るため。
エンジンの主要構成パーツの中でキャスティングなのはシリンダーとシリンダーヘッドだけ。これほど削り出しパーツが多いと、逆にキャスティングが珍しく感じられる。
シリンダーヘッドカバー合わせ面がシリンダー/ヘッド合わせ面に対して傾いているのは、吸気カムシャフトが持ち上がっているため。
こうすることで、よりスムーズな吸気ポート形状を実現している。カムシャフトの駆動は、クランク軸端のギアで減速された後、チェーンを介して駆動されるシリンダーヘッド側のギアが、吸気/排気それぞれのカム軸端のギアと噛み合う方式。2004年モデルになって、従来の5バルブ(吸気3/排気2)ではなく、4バルブ(吸気2/排気2)に変更された。
5バルブ/4バルブ、等間隔爆発/不等間隔爆発の4種類を比較検討し、シーズン開幕前の実走テストでロッシが選んだのが4バルブ+不等間隔爆発の仕様だった。
↓後編へ続く
Powered By Bikers Station
日本のバイク遺産シリーズ「MotoGP伝1-2」はアマゾンでも購入できます
モーターマガジン社 (2020-02-29)
売り上げランキング: 33,833
モーターマガジン社 (2020-01-31)
売り上げランキング: 17,435
「MotoGP伝」関連記事はこちら