Text:Nobuya Yoshimura Photos:Teruyuki Hirano
HONDA RC211V(2006)を徹底解剖する
進行方向に対して斜めを向いたフレーム側面に設けられた吸気口は、このように、真正面から見るとフロントフォークよりも外側に位置しており、フロントカウル下の吸入口からフレーム左右間(フューエルタンク前方)のエアボックスへの通路が、従来型よりも直線的になっていることがわかる。ラジエターの横幅は、フレームの最大幅とほぼ同じ。
フロントゼッケン裏には、カウルステーと兼用のメーターステーが見える。このあたりに大きなスペースをとっていた電装パーツは年々少なくなり、タンクカバー内部の専用ケースに収納されている。
ステアリングダンパーは、シリンダー+ロッド型ではなくロータリー型を継続使用。下側フォークブラケットに支点を持つロッドがダンパーのローターシャフトに取り付けられたアームを作動させる構造。
マスターシリンダー〜キャリパー間のブレーキホースは、右側フォークに沿って下に向かい、下側フォークブラケットのところの3ウェイで分岐し、一方はブラケットに沿って左側フォークに達し、そこにさらに3ウェイを設け、上側に液圧センサーをマウントしている。
整備性向上と軽量化のため、ホースの固定個所は少なく、暴れてブラケットに傷をつけないよう、縦割りにした樹脂ホースでカバーしている。
φ19×18の文字が見えるブレンボのマスターシリンダーは、契約チームにのみ供給されるスペシャルパーツ。マークの入ったシリンダー本体とレバー基部はブレンボ製だが、ジョイントから先のレバーは、ライダーのヘイデンに合わせて作られた、短く、曲がりの大きなもの。
クラッチマスターもブレンボのスペシャルで、本体に覆いかぶさるようにポテンショメーター(クラッチレバーの操作角を検出)が取り付けられており、ブレンボのマークが見えない。ブレーキ側と同じくヘイデンに合わせて造られたクラッチレバーは、さらに特殊で、小指をグリップ側に残してレバーを握るのに適した形状とされている。
左側グリップ基部には、ブレーキレバーの位置調整用ダイアル(マスターシリンダーとはレリーズワイアで結合)とスイッチボックスが並んでいる。
スイッチには2種類あり、誤作動防止用ガードのついた上側のものはスピードリミッターで、オンにすると、ペナルティの対象となるピットロードでの速度超過を抑制。下側のプッシュスイッチはエンジンマネジメントシステムのプログラム選択用で、あらかじめセットした3種類のマップから、状況に合ったひとつを選択する。
右側グリップ基部には、非常に薄く作られたスロットルガイドのハウジングとスイッチボックスが並んでいる。こちらもスイッチは2系統あり、上側がエンジンストップスイッチ。下側は、通常は使用しないテスト用のプッシュスイッチ。
左右のスイッチボックスは、市販車流用のようなデザインだが、内部の接点は作り替えられている。
ショーワの倒立型フロントフォークに支持されるフロントホイールまわりは、エンケイのマグネシムホイール/フローティングマウントされたブレンボのカーボンコンポジットディスク/モノブロックタイプ(アルミブロックから左右一体で削り出し)の4ピストン・ラジアルマウントキャリパーの組み合わせ。
フロントフォーク後ろ側にストロークセンサーのロッド、ブレーキディスクのハブ取り付けボルト周囲に車速(ホイールの回転速度)のセンサーが取り付けられている。
1本に集合した後、テールカウル内を1周して全長を稼ぐパイプは、チタンの小ピースを溶接で継ぎ合わせた構造。市販車用改造パーツのチタンマフラーにはパイプベンダーで曲げたものが増えてきているが、それらよりも薄く硬い材料を使っているため、小さなアールの曲げ加工を避けるのが溶接構造を採用している理由。
差し込み式のメガホン部分は別体で、抜け止めにスプリングを装着する他、交差部分を(振動によるクラックを防止するためのダンパーを介して)結合している。テールカウル内の排気管の支持は1カ所のみで、シート裏面にダンパー+ピン+クリップを用いて取り付けられている。
テールカウルはシートとは別体で、クイックファスナーによる取り付け」のシート下部に見える黒いケースは、前(下)側にドライバッテリーを、後ろ(上)側に車載カメラ搭載時の発信器を収納する。
前側3気筒のうち中央気筒のエグゾーストパイプは、クランクケース下で複雑な曲線を描いて全長を稼いだ後、スイングアームピボット下あたりで車体左側に寄り、左側ステップ下あたりのアンダーカウル表面に開口部を持つ。
メガホンの中心線がカウル表面に対して傾いているため、先端部に切り口が傾斜したパイプを装着し、カウル表面に合わせている。
前側3気筒のうち外側2気筒分のエグゾーストパイプは、クランクケース下で接近した後、オイルパンの後部を避けて車体右側に曲がり、スイングアームピボット下あたりで1本に集合。そこからブレーキペダルに沿うように斜め上に向かっている。
このアングルから見ると、サイドカウルとアンダーカウルの側面に設けられたラジエター透過風排出ダクトの断面積の大きさがよくわかる。エンジン〜フロントホイール間を短縮し、カウリング全幅もできるだけ詰めたマシーンでは、どうやって巨大なラジエターからの風の抜けをよくするか(当てるだけではなく、抜かなければ充分な冷却性能は得られない)もまた、車体設計上の重要なテーマのひとつである。
HONDA RC211V(2006)<No.03>へ続く
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