“何が何でも勝つ”と決めたときのホンダは、恐ろしい存在だ。ヘイデンとの二人三脚で未完のニュージェネレーションを仕上げ、見事にタイトルを獲得。一方で量産型マシーンのオリジナルにおいても優勝という結果を残して戦闘力を実証。さらにはエンジン供給メーカーとしても完璧な役割を果たした。
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2006年のMotoGPでホンダRC211Vを走らせたライダーたち
2006年でホンダRC211Vを走らせたのは4チーム6名。ヘイデンのみニュージェネレーションを駆ったが、オリジナルに乗るライダーたちも毎レース上位に進出する安定した好成績を収め、ペドロサ、メランドリ、エリアスが勝利を挙げるとともに、モトGPルーキーであるストーナーの活躍も目立った。
またエンジン供給を受けたチーム・ロバーツも、ケニー・ロバーツJRがランキング6位に入る大活躍を果たす。これはシャシーコンストラクターとしてのKRの優秀性を証明するものだが、安定したエンジン性能とホンダエンジニアのアドバイスが躍進を陰で支えた。
RC211V(2006)の“オリジナル”と“ニュージェネレーション”を比較
2006年の日本GP時に、ツインリンクもてぎで公開されたRC211V“オリジナル”のエンジン。モトGPのレギュレーションでの最低重量は、4気筒も5気筒も145㎏であり、同じ最低重量なら、気筒数が多く高回転化に有利で、しかも過去に例がないのでチャレンジしがいがあるとの理由から5気筒が選ばれた。
Original(RC211V -2006-)
75.5度という前後気筒間の角度は、並列2気筒と並列3気筒を前後に配してV型エンジン(前後気筒のコンロッドがクランクピンを共有する)を形成した場合に、クランクピンを共有しない気筒が生じるアンバランスを、他の4気筒で生じるアンバランスと相殺できる(バランサーを設ける必要がない)数値であり、吸気系の配置や車体設計上の要求をも満たした、非常に合理的なレイアウトだ。
前側を3気筒/後ろ側を2気筒としたのは、排気系の取り回しや重量配分を考慮した結果だろう。気筒当たりのバルブは吸気2/排気4の4本で、合計20本。これを、ギアトレインによる4本のカムシャフトによって開閉する。
出力の取り出しは、クランクシャフト右端にあるプライマリードライブギア+クラッチ奥にあるプライマリードリブンギア(ミッションメインシャフトと同軸)のセットを経てミッションに伝えられる3軸構成。無駄のない、合理的な設計といえる。
New Generation(RC211V -2006-)
オリジナルと同時に公開された“ニュージェネレーション”のエンジン。クランクシャフト〜ミッション間の距離を短縮しただけでなく、各部に徹底した軽量・小型化の手が加えられている。
クランクシャフト端の円形のカバー内部にはジェネレーターのローターが入っているが、それだけではなく、ここを介してクランクケース内の減圧を行っているのではないかと推測できる。
カバーの右下張り出し部の奥にはクランク室に貫通する穴があり、カバー前方下部から後ろ側シリンダー後部のスタッドボルトの根元付近まで、カバーの外周に沿うように細長い通路が加工されているのが推測の理由。
スタッドボルトの根元から先がどうなっているかは不明だが、スタッドボルト穴につながってシリンダーヘッドに達し、流速の高い(大きな負圧が得られる)排気ポート側面に開口していると考えることができる。
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