完全新設計の2006年型は好走し、第14戦オーストラリアGPでクリス・バーミューレンが2位入賞。800ccとなってさらに開発が進められた2007年には、ついに第5戦フランスGPでバーミューレンによって初優勝。ランキングでも、J.ホプキンス:4位、C.バーミューレン:6位と、2名ともがベスト6に入った。
Photos:Yushi Kobayashi and Teruyuki Hirano
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SUZUKI GSV-R(2006)徹底解剖
ホンダが2008年型RC212Vへの採用を公表し、ドゥカティを除く4メーカーのモトGP用エンジンに共通の装備となったニューマチックバルブスプリングを、4社の中で最初に実戦投入したのはスズキだった。
あり余るパワーの抑制が至上課題だった990㏄マシーンの特性を考えると、ニューマチックバルブスプリングなど必要ないというのが、2003年ごろの多数意見だったが、その中で、いち早くこのメカニズムの開発に着手したスズキは、KRのエンジンを造ったKTMやアプリリアがそうであったように、これを当然の装備とする4輪のF1エンジンを参考にしている。
ニューマチックバルブスプリングのことを、縮めてニューマチックバルブと呼ぶのは混乱のもとである。金属製スプリングの代わりに圧搾空気を用いるのがこのシステムであり、圧搾空気がバルブを駆動するわけではない。カムシャフトは備わっており、金属製スプリングの場合と同じようにバルブを押している。
金属製スプリングの代わりに圧搾空気を使用するメリットは多い。高回転になればなるほど速くなるバルブの動きに対する追従性がよい、固有振動数が低いので共振によるトラブルが起きにくい、往復運動部分の軽量化につながる、空気圧の変化によってバネ常数を変えることができる、などであり、いずれも金属スプリングの限界を超えた高回転化に有利である。
細部の構造は明らかでないが、直押し式のバルブリフターの中に圧搾空気を充填し、それが圧縮されたときの反発力でバルブを戻すと考えればわかりやすい。シールをちゃんとすれば、エアコンプレッサーや大きなボンベを搭載する必要はなく、リーク分を補充するだけでよい。
GSV-Rの場合、200気圧まで加圧した空気をテニスボール大の球体容器に入れて搭載しているが、1レースを走るのに充分以上の量であるとのこと。
ニューマチックバルブスプリングがどれほどモトGPマシーンにとって有効なのかは、GSV-Rの戦闘力アップと、ライバルが相次いで採用に踏み切ったことからも明らかといわねばならない。
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