スズキ「ジクサー150」試乗インプレ&解説(太田安治)
走りに魅せられる純粋な楽しさが満載!
スズキの「ジクサー150」は不思議なオートバイだ。
凝ったメカニズムや装備はないし、エンジンは空冷SOHC2バルブ単気筒でパワースペックもほどほど。だが、乗ると理屈抜きに楽しい。楽しいから距離も時間も気にならず、ただただ走りたくなる。インプレライダーやスタッフにもジクサーのファンは多く「とにかく楽しい」が共通認識になっている。
車格は125cc車並みにコンパクト。外装デザインでボリューム感を出しているが、実際はスリムで車重も軽く、取り回しやすさは言うことなし。スポーティなルックスなのに、ライディングポジションはゆったりしている。これが楽しさへの入り口だ。
低中回転域トルク重視のエンジン特性と軽い車重の組合わせで、無造作なクラッチワークでも力強く発進し、適当にシフトアップしても交通の流れに乗れる。ジクサーの場合、市街地では4000〜7000回転を常用するが、スロットルレスポンスが自然で振動も少ないから快適そのもの。5速・5000回転からでも加速し、タコメーターをにらんで素早くシフト、といった操作とは無縁だ。
100km/h時で5速・7200回転ほどだから、最高速はおよそ130km/h程度。都市高速なら不足のないパフォーマンスで、利便性と楽しみの幅を広げてくれる。
穏やかなエンジン特性に対し、ハンドリングはなかなかダイレクト。剛性の高いフロントフォークと硬めにセットされたリアサスペンションが車体のピッチングを抑え、ライダーの操作に素早く反応する。市街地では軽快なフットワークを見せ、小さなターンが連続する峠道では人車一体となってスパッとコーナーを切り取る痛快さも堪能できる。
タンク後部を絞った形状で車体をホールドしやすく、ハンドルも腕が伸びきらない位置にセットされている。これによって上体からの余計な力が加わりにくく、低速走行でもフラつかないし、Uターンも楽。シートの着座位置とステップまでの距離に余裕があり、足腰への負担が少ないことも特徴だ。
ここまでジクサー150の「楽しさの理由」を探してみたが、それを意識する必要はなく、ただ純粋に楽しめばいい。ネイキッドならではの圧倒的な視界の広さ、体全体で浴びる走行風、耳に心地よい吸排気音といった要素が一体となってライダーを楽しませてくれる。
ジクサー150はピュアな「走りの魅力」を持ったオートバイなのだ。
文:太田安治/写真:南 孝幸