「CB750F」との思い出。「CB-Fコンセプト」は市販されるとしたら、どのようなカタチになるのか?
思わず当時の思い出が蘇る魅惑のボディライン!
「ナナハン」という呼び方を定着させたCB750Fourの後継モデルとして、1978年12月に登場したのがCB750K。ただ、この『K』はさほど注目されなかった。同年8月に最先端スーパースポーツのCB900Fが発表され、日本市場には750㏄版が投入される、という噂が広まっていたからだ。
1979年6月に登場したCB750Fはワークス耐久レーサー『RCB』譲りのDOHC4バルブエンジンを採用していたが、それ以上に注目されたのがデザイン。長いタンクからサイドカバー、テールカウルまでを流れるように繋げたヨーロピアンフォルム、国内市販車初のセパレートハンドル、後退したステップ位置など、新時代の到来を感じさせる構成で、発売と同時に空前の大ヒットとなる。
ライダーはシンプルに「エフ」と呼び、そのエフに乗りたい一心で、当時超難関と言われた限定解除に挑む者も多かった。1979年型をCB750FZ、1980年型を同FA、1981年型をFB、最終型となる1982年型をFCと呼んで区別するのもエフファンの特徴。ちなみに漫画『バリバリ伝説』の主人公、巨摩 郡の愛車は赤のFBと言われている。
当時20代だった僕もエフに魅せられたが、続々と登場する新車に試乗するうちにエフのことは忘れていた。ところが通りすがりの小さなバイク屋で8年落ちのFCを見つけて衝動買い。すでに時代遅れだったが、何とか新型車と同等の性能に仕上げようとカスタムの泥沼にはまり込んだ。
955ccへのボアアップ、前後17インチ化、アルミスイングアームにオーリンズのサス、V&HのマフラーとCRキャブ、大型オイルクーラー、鋳鉄ディスクなどなど、改造費は200万円オーバー。じっくりセッティングを煮詰めて……と思っていたら、盗難に遭い、すべてが水の泡に。
それでもエフへの想いは残っていて、Z900RSに続いてKATANAが登場したとき、「CB1000Fを作って欲しい」と強く願ったものだ。
CB-Fコンセプトの、タンクからテールカウルに繋がる伸びやかなフォルムはエフと重なり、斜め右後ろから見るとドキッとするほど。ウインカーやリアフェンダーの形次第で、さらにエフの雰囲気は濃くなるだろう。
ただ、デザイナーはかつてのエフを再現するつもりはないはず。僕は「どこかエフの香りがする新しいネイキッド」として市販されることを期待している。
文:太田安治