CB-Fコンセプトは、身近なレベルでのスポーツ領域での使い勝手の良さを念頭に置いているはず
スポーツポテンシャルや使い勝手の良さに注目
このFがオマージュするCB750(900)Fを最初に見た時の衝撃は強烈だった。
空冷DOHC4バルブのエンジンは当時最高のハイメカ。しかも、それは鈴鹿8耐で大活躍したワークスレーサー・RCB直系だと宣伝されていた。それまでのバイクにはなかった、タンク、サイドカバー、テールカウルまでをフラッシュサーフェス化したルックスも近未来的。ZやGSといったライバルすら圧倒する存在感が光っていた。
そして、このバイクを伝説たらしめたのはAMAスーパーバイクでのF・スペンサー操るCBとE・ローソン操るZの死闘。アップハンドルのまま、豪快にドリフトしながらの戦いは圧巻のひと言。強力なライバル相手にCBが繰り広げたバトルに世界中が注目した。
CB-Fコンセプトのカラーリングはその時のCBのカラー。コイツは、そんな栄光の歴史を漂わせたCBの新しい提案となるモデルなのだ。ただ、聞けばホンダは、オリジナルのCB750Fが世に放った衝撃を知らない世代にデザインさせたという……。
制作は難しかったと思う。長いタンクは今風ではないし、オリジナルの、のっぺりしたクサビのような造形はある意味殺風景にも見える。でも、CB-Fコンセプトのフォルムはバランスがよくキレイだ。車格も現代的で、コンパクトにまとまっている。
車体のベースはモノバックボーンフレームのCB1000Rだが、このFコンセプトはRより「バイクらしいフォルム」になっていると思う。荷物も積めそうだし、実用性も高そうだ。
で、どんな走りになるか?
試乗したわけではないから類推するしかないが、常用域での乗り心地や、身近なレベルでのスポーツ領域での使い勝手の良さを念頭に置いているはずだ。そうしなければこの姿になる意味がない。
また、もともと高価なバイクをベースにしているので、市販化にあたり、それ以上のプライスになれば、熱烈なファンが触手を伸ばすだけになる。ライバルたちと戦うなら、エンジンもピークを抑えるなどして扱いやすさを向上させつつコストを抑え、それらに近いプライスに落ち着かせる必要もあるだろう。
ベースのCB1000Rは、しなやかなシャシーで常用域への適応力が高い。キモになるのはサスのセッティング。狙う走りのさじ加減と、プライスが現実的なら十分に魅力的な提案だと思う。
文:宮崎敬一郎