ホンダ「モンキー125」試乗インプレ&解説(太田安治)
愛されてきた50㏄の魅力を125ccになっても継承
モンキーというオートバイは不思議な存在だ。オートバイに関心のない人でも、その愛らしいデザインを見ると思わず微笑むし、独特のライディングポジションと走行特性で乗る人を笑顔にしてくれる。
1967年に初代が発売されてから50年以上も人気を保ち続けたのは、オートバイというより、まるで小動物のような愛くるしさを持っていたからだろう。モンキーは「ユーザー」ではなく「飼い主」の愛に支えられていたのだ。
だから、モンキー125がデビューした当初、これまでのファンが、まるでヨチヨチ歩きの子供が突然成人したような驚きを感じても無理はなかった。
今でこそ、すっかりライダーの心を鷲掴みにしているが、デビュー当初は戸惑うモンキーファンの声を聞いたし、16歳で免許を取って最初にZ50Mを手に入れた僕も最初は同じ印象だった。
でも、そうした声も承知の上でこの125を出して「モンキー」ブランドを続けてくれたホンダの姿勢が嬉しかった。
しっかりした車体の造りと125ccの力強さが嬉しい
50㏄のモンキーはミニマムトランスポーターという存在だったが、今では動力性能も、小さな車体ゆえの操縦安定性も、現在の混合交通の中にあっては安全だとは言い難い。しかも、50㏄以下の原付一種は二段階右折の交差点、通行不可の箇所が多いことなどで利便性が損なわれ、現実的なミニマムトランスポーターは原付二種、それも世界各国の市場に合う125㏄モデルが主役になっている。
こうした現実から考えて、モンキーが125㏄に進化したのは納得できる。50ccモンキーの延長線上ではなく、時代に合った新型モデルとして「モンキー」のネームバリューとデザインを活かしたわけだ。
ベースはタイで生産されているMSX(日本ではグロム)なので、車体サイズは案外大きいが、離れて見ると前後ホイールからタンク/シートに掛けての「台形シルエット」は紛れもなくモンキーのもの。前後フェンダーやマフラーカバーといったメッキパーツの質感も高く、グロムとはまったく違った存在感、高級感があり、リビングに飾っておくのもいいかなと思わせるほどだ。
実際に走ってみても、50㏄のモンキーのようなオモチャっぽい危うさはなく、普通の125㏄ミニバイクの感覚。リアフレームを専用設計としたことでホイールベースはグロムよりも45mm短くなっているが、地に足が着いたような直進安定性を備え、前後のサスペンションストロークが充分に確保されているので、ギャップ通過時の落ち着きもいい。
前後ディスクブレーキは、ハードに使っても車体のヨジレはなく、しっかりと踏ん張る。パワーに対して充分な剛性を持った車体だ。
エンジンはベースのグロムと同じく、低回転からトップエンドまでフラットに回転が上昇する特性。ただ、グロムと比べると高回転のパワーを少し削り、その分を中回転域に振り分けてあるようだ。
ゼロ発進が楽だし、原付二種の法定速度である60km/hまでの加速も力強いから、交通の流れに飲まれるようなことはない。
マニュアルクラッチの4速ミッションを駆使してスポーツライクな走りも楽しめるし、ブロックパターンのタイヤと最低地上高の高さを活かしてオフロードで遊ぶこともできそう。オーナーの夢が広がる作りだ。
一人乗り仕様なのでタンデムができないのが残念だが、モンキーらしさ満点の愛らしさとトランスポーターとしての実用性とが融合した乗り味と造りには感心させられた。
生産国のタイでは、オートバイに乗ったことがない人からも支持されているそうだが、日本でも幅広い層のファンを獲得しているのもうなずける。
ホンダ「モンキー125」主なスペックと価格
全長×全幅×全高 | 1710×755×1030mm |
ホイールベース | 1155mm |
最低地上高 | 160mm |
シート高 | 775mm |
車両重量 | 105kg(ABSは107kg) |
エンジン形式 | 空冷4ストSOHC 2バルブ単気筒 |
総排気量 | 124cc |
ボア×ストローク | 52.4×57.9mm |
圧縮比 | 9.3 |
最高出力 | 6.9kW(9.4PS)/7000rpm |
最大トルク | 11N・m(1.1kgf・m)/5250rpm |
燃料タンク容量 | 5.6L |
変速機形式 | 4速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 120/80-12 65J・130/80-12 69J |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 税込40万7000円(ABSは税込44万円) |