ホンダ「クロスカブ110」解説&試乗インプレ(太田安治)
ストリートもオフロードも軽快に楽しく走れる!
2020年6月26日に発売されるCT125・ハンターカブは、すでに年間販売予定を超える予約を集めるほどの人気ぶりだが、その呼び水となったのがクロスカブ110だ。
2013年登場の初代はオフロードムードを採り入れたスーパーカブ110の派生モデル的な存在だったが、2018年のモデルチェンジで実用車然としたレッグシールドを廃止し、前後サスペンションも舗装路での快適性を高める方向に設定を変更。
タンデムステップも装備して二人乗りを可能にするなど、洒落っ気と実用性を併せ持つストリートコミューターへと進化したことで、エントリーユーザーやスクーターからの乗り換えライダーまで、幅広い層に支持されている。
110ccのエンジンは空冷SOHC2バルブ単気筒という極めてオーソドックスなもので、扱いやすい出力特性と圧倒的な耐久性は世界中で高く評価されている。細かな改良を重ね続けて振動や変速時のショック、メカノイズも抑えられている。
ミッションはカブシリーズではお馴染みの自動遠心クラッチ+4速リターン。ハンドル左側にクラッチレバーはなく、ニュートラルからシフトペダルを踏み込んで1速に入れ、スロットルを開けるとエンジン回転の上昇に伴ってクラッチが繋がってスルスルと発進する。
シフトアップはスロットルを戻してペダルを踏み込むだけ。元々は出前や新聞などの配達業務用に右手だけで運転できるように工夫された機構だが、独特の操作性はカブシリーズだけの魅力にもなっている。
スクーターのオートマチックと比べるとスロットルのオン/オフに対する反応がダイレクトで極低速域での速度調整もしやすく、Vベルトを定期的に交換する必要もない。駆動ロスが少ないため燃費もいいし、AT小型限定普通二輪免許で乗れるのもメリット。
車重が106kgと軽量なうえ、上半身が直立するライディングポジションでハンドリングは軽快そのもの。動きのいい前後サスペンションと市街地の速度域に合った車体剛性で乗り心地もいい。フロントのドラムブレーキはレバーを握り込んだときの食い込み感が弱めだが、コントロール性は上々だ。
オフロード色の濃さが話題のハンターカブに対し、市街地を軽快に駆け回れるキャラクターがクロスカブの魅力。質実剛健な作りと車両価格、維持費の安さで、通勤通学にもうってつけの一台だ。