『4ストのホンダ』がバイクブームとともに起こったHY戦争を勝ち抜き、また1979年から復帰した世界GPを制覇するべく、2ストローク車の開発に本腰を入れ出した。その流れで1982年7月、世界GPでのホンダNS500(同社初の2ストGPマシン)初優勝を受け、初の本格2ストスポーツとして登場したのがMVX250Fだった。
 
NS500譲りの独創のV3エンジンを積んで、同じルックスの400cc版、MVX400Fも発売直前までいくものの販売されず、250cc市場を巻き返すためにフルGPレプリカとして開発したNS250Rを投入。さらにこのフレーム/外観を元にMVX400F用V3を積んだNS400Rも展開する。

WGPマシンイメージのV型3気筒で現れたホンダ初の本格2ストスポーツ

WGPでの’60年代の活躍と’79年の復帰(NR500)に4ストロークを使い、市販車でも4ストの代名詞的存在だったホンダが勝利を目指して’82年にWGPへ投入したNS500(112度V3/前1&後ろ2気筒)。

そのイメージによる90度V3(90度で前2/後1)を積んで’83年2月に突如発売されたのがMVX250F(MC09)だ。

’81年登場のVT250Fと似た車体構成(ビキニカウル/φ35㎜フォーク/F16インチホイール+インボードディスクブレーキ)に2気筒並みの幅と1次振動ゼロの90度V3エンジンは独創的で、GPレプリカ路線を加速させた。

■SPECIFICATIONS:●水冷2ストピストンリードバルブ90度V型3気筒249㏄(47.0×48.0㎜) 圧縮比8.0:1 最高出力40ps/9000rpm 最大トルク3.2㎏f・m/8500rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2010×735×1155㎜ 軸距1370㎜ 乾燥重量138㎏ 燃料タンク17ℓ シート高780㎜ キャスター26度30分 トレール91㎜ タイヤ:100/90-16・110/80-18 ●価格42万8000円(’83年型MVX250Fのデータ)
画像1: ホンダの2ストローク車「MVX」と「NS」の歴史を一気に振り返る! MVX&NSヒストリー(1983-1986)【Heritage&Legends】
1983 MVX250F(MC09)

画像2: ホンダの2ストローク車「MVX」と「NS」の歴史を一気に振り返る! MVX&NSヒストリー(1983-1986)【Heritage&Legends】
1983 MVX250F(OP装着車)

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HRC製レーサーとの共通イメージを高めた現代2ストレプリカの祖

MVX250Fは年間2万台近く販売したがライバル比で奮わず、1984年にHRCレーサーRS250Rと同じ90度V2で一新したのがNS250Rだ。

NSシリンダー(ニッケル素地にシリコンカーバイド粒子を分散させた皮膜でシリンダー内壁をコートしためっきシリンダー)や排気デバイスATAC(Auto controlled Torque Amplification Chamber。低回転時にサブチャンバーを使いトルクを補う)やアルミフレーム(カウルなしのFでは鉄)、前後16/17インチホイール等を採用した。

1985年のフレディ・スペンサーによるWGP500&250ダブルタイトル獲得を記念し、1986年には’85チャンピオン・カラー仕様を4000台設定した。

■SPECIFICATIONS:●水冷2ストピストンリードバルブ90度V型2気筒249㏄(56.0×50.6㎜) 圧縮比7.0:1 最高出力45ps/9000rpm 最大トルク3.6㎏f・m/8500rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2005×720×1125[1040]㎜ 軸距1375㎜ 車両重量144㎏ 燃料タンク19ℓ シート高780㎜キャスター27度15分 トレール100㎜ タイヤ:100/90-16・110/90-17 ●価格53万9000[42万9000]円 ※NS250Rのデータ。[ ]はNS250Fだ
画像3: ホンダの2ストローク車「MVX」と「NS」の歴史を一気に振り返る! MVX&NSヒストリー(1983-1986)【Heritage&Legends】
1984 NS250R(MC11)

画像4: ホンダの2ストローク車「MVX」と「NS」の歴史を一気に振り返る! MVX&NSヒストリー(1983-1986)【Heritage&Legends】
1984 NS250F(MC11)

画像5: ホンダの2ストローク車「MVX」と「NS」の歴史を一気に振り返る! MVX&NSヒストリー(1983-1986)【Heritage&Legends】
1986 NS250R ’85Champion Color(MC11)

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V3エンジンの400㏄版はWGPマシンNS500同様の車体イメージで

1983年、WGP500チャンピオンとなったNS500のレプリカとして400㏄で作ったのがNS400R。車体の基本構成はNS250Rに倣いつつエンジン重量増とパワーアップに対し剛性向上を図った。

エンジンは市販直前までこぎ着けながらお蔵入りしたMVX400F用と言われ、120度挟角/前1・後2気筒V3のNS500と異なり90度Vの前2・後1気筒で、前2気筒のみに排気デバイスATACを装備(チャンバー取り回し等の影響)。

レギュラーカラーにGPレプリカと呼べるロスマンズとホンダトリコロールを採用したのもエキサイティングだった。

■SPECIFICATIONS:●水冷2ストピストンリードバルブ90度V型3気筒387㏄(57.0×50.6㎜) 圧縮比6.7:1 最高出力59ps/8500rpm 最大トルク5.1㎏f・m/8000rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2025×720×1125㎜ 軸距1385㎜ 乾燥重量163㎏ 燃料タンク19ℓ シート高780㎜ キャスター27度05分 トレール100㎜ タイヤ:100/90-16・110/90-17●価格62万9000円※’85年型NS400Rのデータ。
画像6: ホンダの2ストローク車「MVX」と「NS」の歴史を一気に振り返る! MVX&NSヒストリー(1983-1986)【Heritage&Legends】
1985 NS400R(NC19)

画像7: ホンダの2ストローク車「MVX」と「NS」の歴史を一気に振り返る! MVX&NSヒストリー(1983-1986)【Heritage&Legends】
1985 NS400R(NC19)

まとめ:ヘリテイジ&レジェンズ

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