※最近、各地で二輪車の事故が多発しています。自粛要請の緩和にともない、オートバイで出かける機会も増えると思いますが、運転の際は余裕をもって、交通ルールとマナーを守った運転を心がけましょう。また、長期間運転しなかったバイクの点検も忘れずに行うようにしてください。
慣らしと点検の終わったアフリカツインで、ちょっとそこまで。
東京をはじめとする都心部はまだ自粛モードだが、その他のエリアは自粛解禁に。多くのライダーがバイクに乗って出かけていくのをSNSでも見かけるようになってきた。県を越えなければ問題なし、という国の指標が出たこともあり、私も近所の林道へと軽く繰り出してみた。
ネットで調べた林道は、短いながらも景色が良さそうな感じ。とはいえ、地図に詳しく載っているわけではないので、なんとなくあたりをつけて入り口を目指す。
しかし、早速分岐でどっちに行っていいのかわからず(苦笑)
こういう場合はメインルートを選ぶ! という鉄則に従って左を選ぶ。
道はクネクネと曲がりながら高度を上げていく。ポツンポツンと家があって、この道が生活道路だということがわかる。にしても、この山奥での暮らしというのは、どんなものなんだろう? とちょっと想像してみたりする。
すると、目の前に分岐がまたも現れた。右が舗装。まっすぐ進めば林道だ。明らかにメインルートは右だが、林道を走りにきた身としては、目の前のダートをみすみす見過ごすわけにはいかない! というわけで林道に突入!
待ち焦がれたダートに突入! しかし自粛生活のブランクが…?
しかし! なんということ! どうしちゃったんだオレ? 全然乗れてないじゃないか!
久しぶりの林道というのもあるだろうが、それにしても全然うまく乗れない。というか怖い。転倒の恐怖が常にオレの周りを支配している。そんな感覚なのだ。
体は硬直し、フロントタイヤがグリップを失って滑るのではないか? そう思えば思うほど、ますます体が硬くなっていく、という負のスパイラル。道も草が生い茂り、適度に湿っていて、ところどころ水溜りもあるウエット路面というのも大きい。
いくら自粛モードでバイクに乗れなかったからって、ここまで乗れなくなるものなのか?
偉そうに言えば、私ですらこれだけ「乗れないモード」になるのだから、世のおじさんライダーたちは、自粛モード明けのライディング、本当に気をつけたほうがいいと思う。
林道は新緑の緑と相まって、とても美しく輝いている。
まさに今が旬。林道ツーリングのベストシーズンといってもいい。だってこれ以上気温が高くなると、虫の攻撃がすごいからね。
気持ちよく汗をかいたあと、痛恨のミス発覚…
程なくしてダートは終わり、舗装路にでた。数キロの林道だったのに、すでに体は汗ばみ、脱いだヘルメットの下は汗で髪の毛が濡れている。
そしてここで重大なミスをしたことに気がついた。
水を持ってきていない…。
軽く林道ツーリングする程度だし、という油断から、水も食料も持ってきていなかったのだ。これはしくじった。この喉の渇きをどうしたものか?
我慢しよう(笑)
戻って自販機を探すよりも、抜けてしまえばいいのさ。
…ああ、一番ダメな思考回路。皆さんは真似しちゃいけません! コレ、すでに水分不足で思考が鈍ってきている証拠なのです。
というわけで、ヘルメットを被り直して進んでいくと、道は再びダートになった。今度は固く締まっていて、しかも草が綺麗に刈ってあってとても綺麗だ。そして山の合間からは、綺麗な雪山が!
なんというロケーション!
林道ツーリングはこれだからいいのだよ。舗装路で行けるところでは見られない景色と驚き。オフロードバイクだけが味わえる特権だ。
絶景に次ぐ絶景。神々しい景色を満喫する
そして道は尾根道となり、左右を切り立った崖に囲まれた素晴らしい道となった。
これは気持ちいい!
すると、まるでここで休憩しなさいと言わんばかりの、笹を刈り取って見晴らしをよくした広場に出くわした。当然、アフリカツインをおいて、キメポーズで自撮りするでしょう!
景色に見とれていると、1台のハイエースがやってきた。
「この道どこで知ったの?」
こう聞かれると、つい身構えてしまう…。
もしかして、ここ走ったらダメなところでしたか?
「いやいや、そんなことはないよ。むしろ、もっと多くの人に走ってもらいたいと思っているんだよ。そのために、今あなたがいるところのように、草を刈って抜けを良くしたりしてるんだよ」
なるほど。確かに、この道はよく手入れされていますよね。
「最近ようやく知られるようになってね。あなたも宣伝してよ」
そう言って、ハイエースのおじさんは走り去っていった。
確かにこの道はよく整備されている。雑草も綺麗に刈り取られているしね。
地元の人から走って欲しいと言われるのは、ライダーとしては正直嬉しい。とはいえ、大々的に場所を知らしめていいものか? ここにバイクが大挙してやってきて、サーキットまがいの走りをされたり、ゴミを捨てられたり…と思うと、おいそれとは場所を公開出来ない。なかなか難しい問題だ。
油断大敵。体が暖まったところで今度は…
尾根道を抜けて里に降りてくると、山菜採りの車や、林業の人のものであろう軽トラがちらほら出てきた。地元では知られた道なのだろう。里が近いことを感じる。
すると、またしても分岐に。まっすぐはそのまま舗装路となるが、左側にはまだ林道がある。しかし、先ほどと違って草が刈られていない。すると、先ほどの軽トラがやってきて、迷っている私の隣に止まった。
「こっちの林道はね、2〜3km進むと隣の集落に抜けるよ」
親切にそう教えてくれた。なんていい人なんだ! そう言われたら走らないわけにはいかない(笑)
まだ手入れがされていない道はある意味ワイルド。これはこれで楽しい。
草が覆い茂っているので、路面が見えず緊張感があるが、ここまで走ってきたおかげで体が慣れていて、最初よりは乗れるようになっている。つまり楽しくなってきたのだ。
すると! いきなりフロントタイヤが取られて、バイクが右に大きく傾いた!
やばい、転ぶ!
と思い、とっさにハンドルを左に切りつつアクセルをオン。
転ぶなー!
と心の中で叫びながら、時間にしたら一瞬なんだろうが、私の中では長く長く思える時間を耐えて立ち直った。
諦めなくてよかった! レースやってた自分に感謝だ(笑) おそらく太めの枝が落ちていて、その木を斜めに踏んだんだろう。危うく新型アフリカツインで初ゴケするところだった。
久々の林道探索。ノドは渇いたが大満足!
道はさらに降り、ポッと集落に出た。抜けた。総距離でいけば10kmくらいのダートだろうか。でも変化に富んでとても楽しかった。
久しぶりの林道ツーリングにしては上出来だ! このぐらいで許しておいてやろう。
何しろ私には急いで向かわねばならない場所がある。目指すは自販機! もう喉がカラカラだ!
協力:ホンダモーターサイクルジャパン、有限会社野口装美、ダートフリーク
写真:三橋 淳
【次回予告】この企画初の絶景、お楽しみいただけましたでしょうか? 本格的に移動解禁となりましたら、日本中のステキな景色を求めて、三橋 淳はさすらいます。と、その前に、次回はライディングポジション講座の続きをば…次回「ポジションはじめの一歩・後編」をお楽しみに!