BMW F900R 試乗インプレ(宮崎敬一郎)
オールラウンドに楽しい優しいキャラの「R」
BMW F900Rと、同時に登場したF900XRの2台は、F850GS系のメカニカルコンポーネントをベースに誕生したニューモデル。排気量を894ccに拡大したエンジンのパワーは強力な105馬力で、アッパーミドルクラスのスタンダードなツインスポーツとしては十分なスペックを手に入れたことになる。
「R」はBMWが言うところのロードスターで、いわゆるネイキッドスポーツ。「XR」は兄貴分にS1000XRを持つ、荒れた路面でも快適に安心して走れるオンロード型のアドベンチャースポーツだ。エンジンこそ共通だが、外装、サスなどの足回りを始めとしたシャシー関係ではディメンションからしてそれぞれ異なっている。決して外装が違うだけの兄弟モデルではないのだ。
まずは「F900R」から試乗してみよう。前モデルのF800Rと比べると、シャシー、エンジンまで一新しており、全てが異なるバイクなのだが、前モデル同様、街中から峠道まで、快適にもスポーティにも走れるキャラクターとなっている。非常に扱いやすく、ハンドルにしがみついて強引に操作するようなことをしてみても、不安を誘うような挙動は一切見せない。コレがすばらしい。
今回の試乗車はローダウンサス+ローシートを採用する「スタンダード」グレード。身長176cmのライダーにはいささかヒザがキツい仕様だ。サス自体の動きがよく、細かいギャップを良く吸収してくれるので乗り心地はいいものの、大きなギャップに遭遇するといきなりドンっと衝撃を伝えてくる。
それにちょっとスポーティな走りに挑むと、勇ましくリーンする割には曲がらない傾向があるが、この手のローダウン仕様の中では極めてバランスのいいまとまり方をしていて、その点は見事だと思う。
前モデルがカラッとしたパルス系の排気音が耳に残って心地良かったのに対し、新しいエンジンは少々ノイジーになった。ヘッド周りからのノイズで5000回転を過ぎるとハンドルとシートあたりを中心に、振動は徐々に強くなる。だが、逆に4000回転あたりは非常に滑らか。6速で100~120km/h巡航だとエンジンの回転数は3800~4600回転で、極めて快適に走れる。
排気量アップの効果か、トルク感は前モデルよりふたまわりほど強力になった。追い越し加速をしても、リッターネイキッドに遅れを取ることはない。ちなみに、パワーバンドは6000~9000回転といったところだが、トルク変動自体は穏やかなので、ビギナーにも扱いやすいだろう。
新型になっても、「R」は何にでも使える扱いやすいスタンダードスポーツという本来の魅力をキープしている。日本製の同クラスのスタンダードスポーツと変わらないプライスで手に入るのも魅力だ。
BMW F900R 各部装備・ディテール解説
BMW F900R ライディングポジション・足つき性
F900Rのシート高:770(スタンダード)/815㎜
モデルの身長・体重:176cm・68kg
足着きは極めて良好で、自然な前傾姿勢になるが、身長176cmでは膝の曲がりがキツい。膝カップが入ったレザーパンツなどを履いているとなおさらだ。この体格ならスタンダードサスとハイシートをチョイスしたい。
BMW F900R タンデム〈2人乗り〉チェック(木川田ステラ)
高回転時にはエンジンのパワーをタンデムでも感じることができ、スポーティなライディングを楽しめました。グラブバーがとても握りやすいし、ライダーとの距離感も丁度よく、体をしっかり安定させられます。自然とライダーの頭の横に自分の顔が出るので、視界も良く、シートも幅広なので長距離でも楽しめそうです。
BMW F900R 主なスペック
全長×全幅×全高:2140×815×1135㎜
ホイールベース:1520㎜
最低地上高:NA
シート高:770(スタンダード)/815㎜
車両重量:215㎏
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
総排気量:894㏄
ボア×ストローク:86×77㎜
圧縮比:13.1
最高出力:105PS/8750rpm
最大トルク:9.38㎏-m/6500rpm
燃料供給方式:FI
燃料タンク容量:13L
キャスター角/トレール量:60.5度/114.3㎜
変速機形式:6速リターン
ブレーキ形式 前・後:φ320㎜ダブルディスク・φ265㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後:120/70ZR17・180/55ZR17