撮影:柴田直行/松川 忍 文:小松信夫/編集部
最強のDNAが、アップライトなネイキッドモデルに派生し、新たなカルチャーを育む
MotoGPマシンのDNAを色濃く受け継ぎ、最先端テクノロジーの進化と実用性、そしてストリートだからこそ活きる機能をバランス良くパッケージし、世界のファンを熱狂させたパニガーレV4。そんなパニガーレV4のデビューから約2年、兄弟車と呼べるモデルが日本にてデビューする日が来た。
兄弟車といえど、そのルックスはレーシングマシンとは掛け離れたストリートファイター仕上げの純ストリートモデルとなっている。その名もズバリ『ストリートファイターV4/S』。問答無用のパフォーマンスパッケージをそのままに、ストリートでの使い勝手を考慮したセッティングと、スタイリングが与えられている。
それは、デチューンなどではなく、エンジンパフォーマンスは驚愕の203馬力もの最高出力を発揮する、類を見ないモンスターモデルとなる。しかも、パニガーレV4でとことん軽量化が図られた車両重量により、ミドルクラスと同等以下の軽量な車体重量にまとめ上げられるのだ。
もちろん、骨格や足回りの設計もハイエンドモデルに相応しい構成とディメンションを踏襲し、現代において考え得る最高傑作と言って良い仕上がりをみせている。
「メインストリームの頂に駆け上がる! 強烈な刺激とフレンドシップ」
最先端テクノロジーと贅の限りを尽くしたホットな仕上がりに、ストリートファイターV4シリーズのファーストモデルとは思えない、熟成感と隙のない傑作感を目の当たりにした気がした。それは、見た目のスタイリッシュさから受ける印象だけではなく、様々なシチュエーションを長い時間走ることで、その思いは確信となっていた。
高い安全性能と走行性能、そして高い快適性能とコントロール性能を兼ね備え、あらゆる要望に応えるとともに、リスクをリスクと感じさせない処理能力にも長けているのだ。そんな気配り&気遣い対応力を生む秘密は、精度の高い数多くの電子制御システムの採用により、人間の感覚を超越したベストパフォーマンスへ導くトータル的なマネージメント力の高さに他ならない。
今までの常識では語ることができないこのパッケージは、連綿と続くモーターサイクルの歴史の中において、あらゆる面で進化を遂げた第二形態と言っても過言ではないだろう。
試乗してとにかく驚いたことは、数値的な圧倒的パフォーマンスに対して、びっくりするほどの普通さの演出だった。いつもと変わらぬシチュエーションで、いつもと変わらぬ履き慣れた靴を履くように、ピタッと息と心のリズムが合うのだ。
自分が恐る恐る調子を合わせているのではなく、自分のわがままと変わりゆく路面コンディションをはじめとした様々な要件をバイクが掌握し、見事なまでの正しい答えを導き出してくれるのだ。しかも、サラリと違和感なく、極めて自然な捌きによって、何事もなかったかの様な熱い走りを堪能できた。
エンジンは2気筒ずつの爆発間隔が近いツインパルスと呼ばれるもので、極低回転からレッドゾーンに至るまで、歴代のドゥカティモデルを彷彿させるかの様なVツインの鼓動感に似たものだった。もちろん、不快な振動は極端に抑えられ、どこまでも滑らかで扱いやすい味付けがなされていた。
強力なパンチ力に気負うことは一切なく、優しさすら感じるほどのフィーリングともいえる。これは、どの走行モードにおいてもいえた。
街乗りで多用する極低回転低速域では、本来なら排気量の大きさでカバーする太いトルクの粘り強さを感じるはずだが、明らかにコントロールされ、必要な分だけのパワーを発揮するという優等生ぶりをみせていた。
ちなみに、信号待ちなどで、エンジン水温が上昇すると2,気筒の燃焼がカットされる機能はなかなか斬新で、正直、最初は驚いたが、夏場をはじめとしてライダーのストレス軽減にとても役立ってくれそうだ。
さて、このストリートファイターV4、長年乗り慣れたバイクからスイッチしたとしても、恐ろしいほどの馴染みやすさで、格段にレベルの高い走行パフォーマンスを違和感がないまま、楽しむことができるだろう。そして、自分の感覚を超越した進化を実感して欲しい。
DUCATI「Streetfighter V4 S」車両解説
ドゥカティのスーパーネイキッド、ストリートファイターのデビューは2009年。当時ドゥカティの最高峰であるパニガーレ1098ベースの水冷Lツインエンジンと車体に、刺激的なスタイリングを組み合わせたモデルだった。一時ラインナップから姿を消していたが、2020年モデルで華々しく復活。
そのベースモデルはMotoGPの頂点を目指して開発されているレーシングマシン・デスモセディチ直系のDNAを持ち、水冷V4エンジンを搭載した新世代スーパースポーツのパニガーレV4。
ストリートファイターV4はレーシーなフルカウルではなく、先鋭的で美しいネイキッドスタイルで大きくイメージを変えているが、199kgの車体に208psを発揮する1103ccV4エンジンを搭載。
マスの集中化のためにシート下に伸びる燃料タンク、6軸IMUを利用したABS、トラクションコントロール、エンジンブレーキコントロールといった電子制御デバイスなど、基本的なメカニズムはパニガーレV4そのまま。
強烈なパフォーマンスと美しいスタイルを併せ持つ個性的な1台。
全長×全幅×全高:-×-×-mm
ホイールベース:1488mm
シート高:845mm
車両重量:201kg/199kg(V4S)
エンジン形式: 水冷4ストローク90°V型4気筒DOHC4バルブ
総排気量:1103cc
ボア×ストローク:81×53.5mm
最高出力:208PS/12750rpm
最大トルク:12.6kgm/11500rpm
燃料供給方式:FI
燃料タンク容量:16L
変速機形式:6速リターン
タイヤサイズ前・後:120/70ZR17・200/60ZR17
価格:243万5000円/279万9000円(V4S)