ヤマハ「TMAX560 TECH MAX」解説&試乗インプレ(太田安治)
ダイレクト感を増してスポーティさを向上!
変速操作不要のイージーさ、ウインドプロテクション効果や荷物収納力といった実用性の高さを備えるスクーターは市街地の移動手段として欠かせない存在。そんな中、TMAXはストリートコミューターの概念にとらわれず、走る楽しさを優先したコンセプトによってスクーターの本場ヨーロッパでも高く評価されているモデルだ。
先代の2017年モデルで快適性を高める方向のマイナーチェンジを受けたが、新型はエンジンの排気量アップ、前後サスペンションのセッティング変更など、フルチェンジに近い内容で、車名もTMAX560となった。3年という短さでフルモデルチェンジした狙いを探るべく、市街地から高速道路を経由して峠道へ、というルートで試乗した。
従来型と決定的に違うのは加速性能の向上。約2000回転で遠心クラッチが繋がってスルスルと走り出す扱いやすさは同じだが、スロットルをワイドに開けてから速度が上昇するまでのダイレクト感が格段に高まっている。
フル加速時のエンジン回転数はスロットルを開けた時点での速度によって変わるが、公道の速度域なら3500〜4500回転、高速道路では6000回転あたりを保って豪快に加速する。この強力な加速性能は排気量が約30㏄増えたことに加え、相対的にショートストローク化されたことで中高回転域での実質的なパワーも上がっているからだ。オートマチック変速特有のタイムラグが気に入らないライダーも、新型TMAX560なら不満を感じないはずだ。
100km/h巡航でのエンジン回転数は従来モデルより低い4600回転ほどで、振動はほとんどない。今回試乗した上級グレード・テックマックスに標準装備されている電動スクリーンを上げれば上体に風圧がかからず、風切り音も消える。クルーズコントロールをセットしてのクルージングは走っているというより浮遊しているような感覚。これなら一日1000kmのロングツーリングも苦にならない。
基本的な車体構成は従来モデルから踏襲しているが、前後サスペンションは減衰力が高まり、加減速時のピッチングモーション、特にブレーキング時のノーズダイブが減った。車体剛性や前後加重配分も通常のオートバイと変わらず、コーナリング中にグニャついたり、立ち上がりでフロント加重が抜けるような挙動も一切出ない。
実際の車重は従来モデルと大差ないが、加減速時のダイレクトな反応と併せて軽快さも増している。この素直でシャープなハンドリングは主要マーケットのヨーロッパで好評価が得られるはずだし、国内のTMAXファンも大歓迎だろう。
スタンダードと今回試乗したテックマックスの価格差は14万3000円。装備の差を考えるとテックマックスは驚くほど割安だ。雨でも冬でも走る、ツーリングにも使う、というヘビーユーザーならテックマックスを選べば間違いない。
ヤマハ「TMAX560」「TMAX560 TECH MAX」主なスペックと価格
※《 》内はTMAX560 TECH MAX
全長×全幅×全高 | 2200×765×1420mm |
ホイールベース | 1575mm |
最低地上高 | 125mm |
シート高 | 800mm |
車両重量 | 218《220》kg |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 |
総排気量 | 561cc |
ボア×ストローク | 70.0×73.0mm |
圧縮比 | 10.9 |
最高出力 | 35kW(48PS)/75000rpm |
最大トルク | 56N・m(5.7kgf・m)/5250rpm |
燃料タンク容量 | 15L |
変速機形式 | Vベルト式無段変速 |
キャスター角 | 26゜ |
トレール量 | 98mm |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70R15M/C 56H(チューブレス)・160/60R15M/C 67H(チューブレス) |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 127万6000円《141万9000円》(税込) |