(※以下、会話文の「」部はコーハイてっぺー、――部はパイセン中村のパートです)
文:中村浩史/写真:伊勢 悟
ジクサー150と250の価格差は9万6800円。排気量以外にも違いはさまざま!
さて、走り出そう。はじめはパイセンがジクサー250、コーハイがジクサー150。基本的に共通の車体サイズなので、どっちがどっちに乗っているのか、よく分からなくなる。僕の250から見たコーハイの150は、センスタつき、マフラーの出口デザインが「8の字」だ。
新登場のジクサー250は、とにかく油冷エンジンの出来がいい。フリクションなく回って、低回転からトルクがあり、高回転まで軽やかに回る特性。もちろん、35年前のように「超高性能を狙った油冷システム」ではないけれど、この軽やかな回転フィーリングは、スズキの250ccスポーツ、GSX250Rをしのぐ。
――いやぁ、いいな250! こんなにいいとは!
「GSX250Rと比べてどうなんですか? スズキのネイキッドっていうと、少し前にはGSR250がありましたよね」
――GSRは中国生産の新設計エンジンだってこともあって、正直性能はソコソコだったからね。ゆったりのんびりしたパワー特性、回り方が評価されてたもんね。
「それよりスポーティってことですか?」
――うん。まずフリクションなくレスポンスがいいな。すーごいフラットなトルク特性で、なにより静か! おれ静かなエンジン好きなんだよ! サウンド楽しみたい人はヨシムラつけなきゃね。
「え、もうヨシムラのマフラー出てるんですか?」
――いやまだ(笑)。でももうじき出るやろう。
――150はどうよ。ジクサーのネタ、webオートバイに載せたら反響すごいもんな。
てっぺーはオートバイ編集部のweb担当でもあるのだ。
「そうっすね、もともと原付二種の記事はすごく人気だったんですけど、ひとクラス上のジクサー150も大人気。いま誰もが注目している新しい排気量帯って感じです」
――イイだろ、すごい。このジクサー150って、ベテランほど気に入るんだよ。オレとかオータさん、ジクサー大好きだもん。あとはビギナーの人気も高いよね。
「わかりますね。125より25ccしか大きくないのにぜんぜんそんな気がしない。高速に乗ったって余裕だし、250ccに乗ってるみたいです」
――ジクサーはボディの大きさもそこそこあるから、高速走行でもシンドくないんだよね。
「ただ……」
――5速なんだよなぁ(笑)。
「そうです、幻の6速に何回もシフトしちゃいました」
後半戦は、コーハイを250に乗せてパイセンが150へ。
150、やっぱりいいなぁ。250より20kg近く軽くて、ヒラヒラ感が段違い。一般道、ワインディング、高速道路と走ったけれど、150ccで平気なの?って思われているであろう高速道路もぜんぜん平気だ。
もちろん、ビッグバイクと一緒にツーリング、って用途は厳しいけれど、単独で80~100km/hでとことこ走るのが、なんとものんびり。
ちなみに250はトップ6速で80km/hは5200rpmくらい、150はトップ5速で80km/hは5700rpmくらい。やっぱり250は余裕あるけれど、150だって苦じゃない。これが150のいちばんのビッグサプライズだ。
少しだけれどワインディングも走った。前回同様、ツーリングペースでのワインディングで、普通の峠好きが「よーっしゃ!」って気合を入れる峠の入り口で「おーっと曲がりくねってるからゆっくり行こー!」ってペースだ。
――新しい250も基本的にジクサー150の延長線上にある感じだなー。いたずらにクイックにせずに、たっぷり安定成分があるハンドリングしてる。
「怖くないですよね」
――それ大事。150に比べて車体を強化してるんだろうね。直進安定性とかブレーキングの時のこらえ方が強くなってる。
「僕、タイヤの違いがわかりました。250の方が不安なくコーナリングできたっていうか」
――お、それはすげーじゃん。250はダンロップのスポーツタイヤGPR300を履いてるんだ。前後ラジアルな。150はフロントがバイアス、リアだけラジアル。この差はデカい。
「どっちも軽々しすぎなくて怖くなくて、しっかり感は250の方が上って感じ」
――それが排気量アップに対応したフレーム強化の成果なんだよ。わかってんじゃん(笑)。
「250は、ホント150の拡大版って感じですね。ボディサイズが同じで、排気量+100ccが感じられて、150に輪をかけてラクでしたね」
――でも、俺なんか両車乗り比べて、あらためて150もいいなぁと思ったよ。もちろん250の方が余裕あるし、エンジンもすごくスムーズだけど、150でも不満ないんだ。150とか250の使い道って、やっぱり近距離じゃない? 街乗りが80%くらいだろうし、そういう用途では150がいい。
「僕はどっちを買うか、って言われたらやっぱり250ですね。同じ免許枠の兄弟車なんだったら、どうしても余裕ある方に乗りたいですもん」
――値段ってどうなんだっけ?
「ジクサー150が35万2000円、ジクサー250が44万8800円です。10万円弱の差ですね」
――うーむ、やっぱ150がいいかな(笑)。
「えー、10万円しか違わないんですよ? 新設計の油冷エンジンなのに」
150と250、本来なら違うクラスのモデルなのに、直接の買いのライバルになっちゃうところがジクサーのすごいところだ。ちなみに150も「原付二種」ではないから、保険なんかの維持費は250ccと同じになる。
「そうなると150選ぶなら125でいいや、ファミリーバイク特約で安く保険に入れるから、って人もいますよね」
――結局は排気量なりのメリットとデメリットがちゃんとある、ってことだな。そうするとやっぱり150は維持費が250と同じになっちゃう、ってことなんだ。
「じゃあ250を、って人が多くなるんでしょうね」
けれど「2台目」として考えてみると、メインバイクとなるべく差をつけた方が機能的だから、そうすると250より150の方が現実味を帯びてくる、って面もある。
ちなみに僕も、メインバイクはGSX1100Sカタナで、サブにCB125Rを使っている。これは排気量をなるべく離したかったからで、とはいえ50ccってのもなぁ、って選択で1100ccと125ccの2台持ちになっているというわけだ。
「そういえば、最初に言ってた『スズキだけ狙いが違う』って何なんですか?」
――おう、言ったね。いま250ccのモデルって、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキと4社ライバルが揃ってるだろ?
「はい。CBR250RRとYZF-R25、ニンジャ250にGSX250Rですね」
――その中で、GSX250Rは直接的なライバルじゃないんだよ。GSXは現実的なスポーツバイクであって、スーパースポーツじゃないんだ。サーキットに持っていっても、ほかの3車には適わないけど、あえてそれ狙ってる。ロングツーリングに出たりすると、GSXモテモテだからね。
「じゃぁジクサーもスーパースポーツを狙ってない、ってことですね」
――うん、スズキは今のタイミングで、高性能化を目指して普通の人が乗れなくなっちゃうようなバイクは、250ccじゃいらないって考えてるんだと思う。すごいまっとうな考え方だと思うよ。
意地になって「クラス最強」を狙うことはイイ。でもクラス最強を「性能」じゃなくて、「250ccらしく毎日使えていつでもどこでも快適に乗って行けて燃費もいい」度最強にすることだって、またイイのだ。
文:中村浩史/写真:伊勢 悟
スズキ「ジクサー150」主なスペックと価格
全長×全幅×全高 | 2020×800×1035mm |
ホイールベース | 1335mm |
最低地上高 | 160mm |
シート高 | 795mm |
車両重量 | 139kg |
エンジン形式 | 空冷4ストSOHC2バルブ単気筒 |
総排気量 | 154cc |
ボア×ストローク | 56.0×62.9mm |
圧縮比 | 9.8 |
最高出力 | 10kW(14PS)/8000rpm |
最大トルク | 14N・m(1.4kgf・m)/6000rpm |
燃料タンク容量 | 12L |
変速機形式 | 5速リターン |
キャスター角 | 24゜50’ |
トレール量 | 100mm |
タイヤサイズ(前・後) | 100/80-17M/C 52S・140/60R17M/C 63H |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 35万2000円(税込) |
スズキ「ジクサー250」主なスペックと価格
全長×全幅×全高 | 2010×805×1035mm |
ホイールベース | 1345mm |
最低地上高 | 165mm |
シート高 | 800mm |
車両重量 | 154kg |
エンジン形式 | 油冷4ストSOHC4バルブ単気筒 |
総排気量 | 249cc |
ボア×ストローク | 76.0×54.9mm |
圧縮比 | 10.7 |
最高出力 | 19kW(26PS)/9000rpm |
最大トルク | 22N・m(2.2kgf・m)/7300rpm |
燃料タンク容量 | 12L |
変速機形式 | 6速リターン |
キャスター角 | 24゜20’ |
トレール量 | 96mm |
タイヤサイズ(前・後) | 110/70R17M/C 54H / 150/60R17M/C 66H |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 44万8800円(税込) |