Photos:Teruyuki Hirano
'87年に4耐2連覇を達成したノービス仕様車
当時、ヨシムラは全日本の国際A級TT-F1、TT-F3両クラスに参戦する一方で、レーシングチーム・ミラージュ関東にノービスTT-F3仕様のマシーンを供給。ここに紹介するのは、鈴鹿4耐2連覇を達成した'87GSX-R400である。
1987 YOSHIMURA GSX-R400 4耐仕様
こちらはTT-F1と同年式のTT-F3仕様車。'87年シーズンははヨシムラは国際A級TT-F3にも参戦していたが、これはノービス4耐で優勝した、ヨシムラ・ミラージュ・モトライオン&シエットGP-1レーシングチームのマシーン。
改造範囲の狭いノービスTT-F3レーサーにいかに効果的なチューアップを施していたかを、今はなきこのクラスを走った車両を通じてご覧いただきたい。
ノービスクラスでは、フレームの交換は禁止されていた。このため、カウルやタンクを外したときのイメージは市販車に近い。
ベースマシンは、シリンダーヘッドのみ完全なウォータージャケットを持つ水冷で、シリンダー以下は油冷と空冷の併用、このため、大容量オイルクーラーをフロントカウル内に装備。
STDのカウルステー用ボスを利用すると簡単に取り付けられたステアリングダンパー。当時はどのメーカーもTT-F3仕様への改造を考えて、公道用レーサーレプリカの開発を行っていた。
前後ショックユニットの交換は認められていたため、キットパーツとして販売されていたヨシムラ・ショーワのフロントフォークを装着。上下のフォークブラケットは同じくキットパーツ。
フロントブレーキは、φ290㎜の鋳鉄製フローティングディスクとニッシン製対向式異径4ピストンキャリパーで、どちらもTT-F3キットパーツとしてヨシムラが販売していた。
アルミ削り出し+ハードアルマイト仕上げの左右ステップは、ストリート用パーツとしても市販されていた。
STDではステップ下にピボットを置いて、長いロッドを介することで1ダウン5アップとした変速パターンだったが、フレームにピボットを取り付けて逆パターンに変更している。
キットパーツとして販売されていた、ヨシムラ・ショーワのリアショックユニット。この年ヨシムラでは、TT-F3用にヨシムラ・ショーワを、TT-F1用にはヨシムラ・カヤバをリリースしていた。
ピボットに偏心カムを持つ“E-フルフローター”と呼ばれたリアサスペンション。ショックユニット以外は純正パーツを使用。
STDのスイングアームに、F1と同様にリアフェンダーを装着。
φ210㎜ディスクや対向式2ピストンキャリパーとそれをフローティングマウントするトルクロッドなどは、STD部品を使用。
'87年にヨシムラが販売したコンプリートマシーン、トルネード(TT-F1用も存在した)とほぼ同等の仕上がり見せるエンジンまわり。右サイドは、クランクケースカバーも純正品のままだ。
ジェネレーターを廃し、キットパーツを用いてフルトランジスタのバッテリー点火に改めたため、左側クランクケースカバーは、ヨシムラが製作した小型のスペシャルパーツに交換されている。
キャブレターは変更禁止だったため、ツインチョークの負圧可変ベンチュリー型のままだ。2気筒が1個のダイヤフラムを兼用する特殊な形式のため、セッティングにはずいぶん苦労したとのこと。
排気系は、エキパイの1-2/3-4気筒をチャンバーで結んだデュプレックス方式。この年からベースマシーンにもメーカー純正で採用されたが、レース用のそれとはチャンバーの位置も容量も異なる。
アルミ製の胴体を持つサイレンサーは、キットパーツと同じ。
カムシャフトはむろんヨシムラ製だが、このマシーンにはキットパーツとして販売されていたものと同一品が装着されていた。
ポート研磨以外、大きな手を加えていないシリンダーヘッド。
ロッカーアームはTT-F1用とは異なり純正部品を使用。ただしバルブコッターとリテーナーは、F1用と同手法で軽量化がなされる。
バルブ径は、ノービス仕様は拡大せず。国際A級は拡大していた。
クランクシャフトはSTD。ミッションはF1用と同様にして減速比の変更とギアの強化が行われていた。国際A級仕様車は、さらに1次減速をスパーギアに変更したクランクシャフトを使用していた。
純正品と同じ鋳型で鋳造した2本リングのピストンと、ボルト+ナット留めによる締結をボルト留めに変更した強化ロッド。
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この続きは「ヨシムラ」と「モリワキ」の歴代のレーシングマシンやヒストリーを一冊に集結した、日本のバイク遺産シリーズMOOK「ヨシムラとモリワキ」に掲載されています。