シャープなCBR1000RR‐Rに対し、S1000RRはしなやかさが魅力
今回の試乗ルートは、走行時間を多く取る為にCBR1000RR‐Rで編集部を出発、都内の一般道や首都高速を経て東名高速に乗り、用賀料金所でS1000RRに乗り換えるパターン。東名高速を走り始めて直ぐに大渋滞に遭遇したが、渋滞の中でしみじみ思ったのは、S1000RRに乗り換えておいて本当に良かった! ってこと。
大渋滞の中でライディングポジションの厳しいCBR1000RR‐Rに乗り続けるのはある意味拷問。途中でバイクをCBRに交換した宮崎敬一郎君が、停車する度にストレッチしたり、タンクにヒジをついて休憩しているのがバックミラーで見えたもの。
CBR1000RR‐Rのハンドル角度は、正直言ってストリートユースには形状が不自然で、手首に大きな負担が掛かる。そして、ハードな走りに耐えられるように固められたスタンダードの前後サスペンションは、低荷重では初期作動が固く、都内や首都高速では跳ねることもあった。
その一方で、走行条件によってセッティング変更されるSPの電子制御サスは初期作動もスムーズで乗り心地が良く、オートシフターなどの電子制御もしっかり利いて凄く乗りやすかったので、スタンダードとの違いに驚くばかりだった。CBR1000RR‐Rで公道を走るならSPがお勧めだ。
ちなみに、乗り換えてすぐに渋滞に巻き込まれたS1000RRだけど、走り始めた直後に感じたのはライポジが自然で快適なこと。2009年にデビューして、このモデルで5代目にあたるS1000RRは、今回のモデルチェンジで丸みを帯びた柔らかなデザインに変更されたのだが、ライダーに対するアタリも柔らかくなり、快適性が向上している。
電子制御のすばらしさは相変わらずで、オートシフターはどのスピード域でもスムーズに作動し、アップダウン両方向で吸い込まれるようにギアが切り替わる。またシートも肉厚で柔らかく、ソリッドなCBR1000RR‐Rとは対照的だった。サスペンションも初期作動がスムーズで、肉厚なシートと相まって長時間のライディングもさほど苦にならない。
SPが前提だが、ワインディングではCBRの軽快で鋭いハンドリングに惹かれる一方で、S1000RRの軽快だがしなやかさが感じられるハンドリングも捨てがたい。ツーリングも含めた長時間のライディングならS1000RRの勝ちかな。CBRはトラック専用、って言われちゃうと身もフタもないけれど。
文:八代俊二/写真:赤松 孝、南 孝幸