毎戦ねこの目ウィナー
10週間で8レースという超過密スケジュールでレースが行われるMotoGP後半戦。この週末はミザノ01から3連戦の3つめ、カタルニアGPです。GPは翌週に1週間休みを挟んで、フランス→アラゴン01→アラゴン02の3連戦を迎えることになります。
このカタルニアGPは、これまでヘレスやオーストリア、ミザノであった「同地で2週連続レース」ではなくて、1回きりの開催。その分、前の週にWSBKが開催されたんですけどね。
ミザノ2連戦からの注目は、やはりMotoGPクラスのチャンピン争い大混戦と、Moto3クラスの小椋藍でしょう。
MotoGPはここまでの7戦でファビオ・クアルタラロ(ペトロナスヤマハ)の2連勝→ブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリーTECH3)→アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティファクトリー)→ミゲル・オリベイラ(レッドブルKTM TECH3)→フランコ・モルビデリ(ペトロナスヤマハ)→マーベリック・ビニャーレス(モンスターヤマハ)とコロコロかわり、7戦を終わってのポイントリーダー、ドビツィオーゾの獲得ポイントが84Pという低さ!
2019年のこのタイミングでは、マルク・マルケス(レプソルホンダ)がランキングトップで、140Pを獲得していましたからね。レベルが低いというより、ウィナーが毎戦のように変わって、それだけひとり勝ちしていない、ってことなんです。
だれもがシリーズの主導権を握れないなか、第9戦カタルニアでは、ミザノ01で勝ったモルビデリがポールポジションを獲得。2019年から、どうしてもチームメイトのクアルタラロの活躍ばかりにスポットライトが当たっていましたが、モルビデリもここへきてようやく本領を発揮してきました。
公式予選では、モルビデリに続いてクアルタラロ、バレンティーノ・ロッシ(モンスターヤマハ)と、ヤマハYZR-M1勢がフロントローを独占。マルケス不在のホンダ陣営が強みを発揮できないのに対し、ヤマハ勢は誰が乗っても速い――そんな展開になっています。ここに対抗すべきドゥカティは、ファクトリー勢のドビツィオーゾ/ダニロ・ペトルッチよりもサテライトチームのはずのプラマック勢が安定して速いという現象が起こっています。このへんも、ポイントランキングで独走するライダーが現われない一因でしょうね。
カタルニアGPは、スタート早々のアクシデントで幕を開けます。スタート早々、1~2コーナーの区間で、ヨハン・ザルコ(エスポンソラマレーシングDUCATI)がスリップダウン、そのままなんと、アウト側にいたドビツィオーゾを巻き込んでしまいます。あぁぁぁ、ドビツィオーゾ、ひとまずランキングトップにいたのに、なんたるバッドラック! でも、予選17番手スタートでこんな位置にいるから巻き込まれちゃうんですね。悪い流れを作ったのも自分、ってこと。しかしザルコのまわりにはトラブルが絶えないなぁ。
レース序盤をリードしたのはモルビデリ。後方にロッシ、3番手にクアルタラロがつけ、なんとヤマハ1-2-3フォーメーション。やや後方にジャック・ミラー(プラマックDUCATI)、その後方に2戦連続表彰台を獲得したジョアン・ミルとアレックス・リンスのTeamスズキECSTARデュオがつけます。
レースは6周目にクアルタラロがロッシをかわしてモルビデリ→クアルタラロ→ロッシの順。それでもロッシは4番手のミラーに迫りかけられながらも引き離し、レース中盤あたりでは1コーナーでオーバーランを喫したモルビデリをかわして2番手に浮上! うおぉぉ、ロッシ久々の表彰台!と思ったら、16周目の2コーナーでロッシは単独スリップダウン! ここでクアルタラロ→モルビデリのYZR-M1が1-2体制となったのです。
ここに追いついてくるのはミラーかな、って予想は当たらず、後方からペースを上げてきたのはミル! ミラーをかわして3番手に浮上すると、レース後半8周くらいたっぷりかけてモルビデリまでパス! 結局、開幕2戦に続いて3勝目を挙げたクアルタラロに続く2位でフィニッシュし、3位にはこれもラスト3周くらいでモルビデリをかわしたリンスが入り、スズキGSX-RR勢のふたりが2―3位フィニッシュ!
ミルはミザノ01で予選8番手から3位、ミザノ02で予選11番手から2位、そしてこのカタルニアで予選8番手から2位フィニッシュ! リンスなんか、今回13番手から3位ですから、スズキの勢い、本物ですね。
ミルはこの3戦連続表彰台で、ついにポイントランキングも2位に浮上! ランキングトップのクアルタラロまであと8ポイントと、これは後半戦、スズキのふたりに要注目です。
ついに小椋はランキングトップへ!
日本人ライダーが勢いづくMoto3クラスですが、鈴木竜生(SIC58スクアドラコルセ)がミザノで手首骨折というけがを負ってしまいましたが、鈴木とともに日本人旋風を引き起こしている小椋藍がとうとうやってくれました!
小椋はここまで9戦、巻き込まれ転倒を喫したヘレス02以外は、すべて4位以内に入賞するという圧倒的安定感をキープしているんですが、ここカタリニアでは予選でセットアップが決まらず、なんと予選24番手! もちろん、今シーズンワーストグリッドです。
「金曜のフリー走行から、風なのか路面のグリップなのか、安定しないコンディションに悩まされてタイムを出せませんでした。現状、ほかのライダーがタイムはいんですが、このコンディションに合わせた走りをしなきゃですね。決勝も100%プッシュして走ります」(小椋)
そしてレースは、相変わらずの大集団のレースから、1台また1台と転倒やトラブルで姿を消すような展開。6周目にはジョン・マクフィ(ペトロナスSRT)がアルバート・アレナス(アスパーチームMoto3)を巻き込んで転倒! あれ? マクフィとアレナスって、ランキング3位と1位の! ってことは!!
ここまで9戦を終わって、Moto3のランキングは①アレナス 119P②小椋 117P③マクフィ 98Pがトップ3。そのマクフィとアレナスが姿を消したとなると、小椋がランキングトップに立つチャンス! 敵の失策に乗じるのも大事なことです!
ここで小椋が、ここまでの好調をキープして表彰台、なんてことになったら、一気にランキングトップを独走――と妄想したのに、なかなかそうは問屋が卸さない。
小椋は15台ものトップグループの最後尾につけるものの、ここからの「いつもの」終盤するするポジションアップも見られず、終わってみれば11位フィニッシュ! 5Pを加算して、ついにランキングトップに立ちました!
9戦を終わってのランキングは①小椋 122P②アレナス 119P③マクフィ 98Pとなりました。もちろん、小椋はここで一息、なんてことはなくて、ようやくスタート地点に立ち直した、とそう考えているでしょう。とにかく早く優勝したい、ってね。
Moto2クラスは、開幕戦優勝という、最高のスタートを切った日本期待の長島哲太(レッドブルKTM-AJO)が、この数戦今ひとつ波に乗れず、ここカタルニアでは12位フィニッシュ。ランキングも6位まで下がってしまいましたが、ひとつきっかけをつかんで、またトップ争いに浮上してもらいたい!と切に望みます!
■MotoGP正式結果
優勝 ファビオ・クアルタラロ PetronasヤマハSRT
2位 ジョアン・ミル TeamスズキECSTAR
3位 アレックス・リンス TeamスズキECSTAR
4位 フランコ・モルビデリ PetronasヤマハSRT
5位 ジャック・ミラー プラマックレーシング
6位 フランチェスコ・バニャイア プラマックレーシング
7位 中上貴晶 LCRホンダIDEMITSU
■Moto2正式結果
優勝 ルカ・マリーニ SKYレーシングVR46
2位 サム・ロウズ マークVDS
3位 ファビオ・ディ・ジャンアントニオ HDRスピードアップ
4位 ホルヘ・ナバーロ HDRスピードアップ
5位 ジョー・ロバーツ Tennorアメリカンレーシング
6位 エネア・バスティアニーニ イタルトランスレーシング
■Moto3正式結果
優勝 ダリン・ビンダー CIPグリーンパワー
2位 トニ・アルボリーノ Rivacoldスナイパー
3位 デニス・フォッジア レオパードレーシング
4位 セルジオ・ガルシア エストレージャガリシア
5位 アロンソ・ロペス ステリルガルダMaxレーシング
6位 ロマーノ・フェナティ ステリルガルダMaxレーシング
11位 小椋 藍 ホンダTeamアジア
写真/motogp.com Honda MICHELIN 文責/中村浩史