高速道路で移動、その後峠を楽しむ想定で比較してみた
リッタースーパースポーツは200馬力が当たり前になり、洗練された空力特性で最高速近辺での直進安定性も高い。伏せていれば風圧も感じないから、あっけなく300km/hに到達する。しかしサーキットランを楽しむユーザーは少数派で、現実的にはSA・PAに立ち寄りながら高速道路で移動し、峠道を2速ホールドで流すように走って本来のポテンシャルを垣間見る、という使い方が普通だ。
今回試乗した3台の中で最も楽に走れたのはBMW S1000RR。上体を起こし気味の姿勢で長時間走っても腕や首への負担が少なく、ゼロ発進時もスロットルレスポンスはスムーズ。公道適性の高さはスズキGSX-R1000R、カワサキNinja ZX-10Rと同等で、スーパースポーツ初心者でも安心だ。
対してドゥカティ パニガーレV4Sはストリートユースなど考えていない、と言わんばかりに尖っている。クランクのイナーシャが小さく、スロットル操作に対するレスポンス、寝かし始めの旋回性とも実に鋭い。ライダーが高い位置から操作する感覚に加えて、前後サスペンションも基本的に高荷重設定なので加減速のメリハリを付けないとトラクションを感じにくいが、それだけに超高性能オートバイを駆っているという「非日常」の時間を堪能できる。
ホンダCBR1000RR-Rで僕が感心、いや感動したのはタイヤのトラクションが圧倒的に高く、特にフロントの接地感が速度域に関わらず一定かつダイレクトに伝わってくること。
これは完全新設計になった車体の剛性・ディメンションと、緻密なトラクションコントロール制御、標準装着タイヤのピレリ・スーパーコルサSPに合せたセッティングの合わせ技だろう。スロットルオフでの一次旋回が強力で、強引に扱ってもフロントからスリップダウンする気がしないし、立ち上がりでスロットルを大きめに開けても挙動が一切乱れないから、自分のテクが上がったように感じる。
218馬力というスペックは強烈だが、特定の回転域から唐突にパワーが増すわけではない。直4エンジンのスムーズさで峠道を流す走りが心地良く、排気バルブが開いたときの快音はスポーツ心を刺激してくれる。
電子制御サスペンションを装備したCBR1000RR-Rの『SP』仕様は市街地や峠道の荒れた路面での乗り心地が段違いに優しく、制御タイミングを調整できるクイックシフターの仕上がりも文句なし。スタンダードとの価格差は約36万円だが、サーキットメインでないのなら無理してでもSPを選んだほうがいいだろう。
文:太田安治/写真:赤松 孝、南 孝幸