ホンダ「CT ハンターカブ」誕生の歴史
各地の野山で愛された、ユニークなキャラクター
完成度抜群の実用車として世界中を席巻したスーパーカブシリーズ、そこから派生したさまざまな兄弟モデルたちの中で、一際ユニークな存在がハンターカブだ。
初代スーパーカブC100誕生からわずか3年後の1961年、スーパーカブを山中などで活用したいという要求に応え、国内向けとしてはハンターカブ55が登場。C100をベースにフロントフェンダーを取り払いキャリアを追加、オフロードタイヤを履き、悪路向けにローギアード化したモデルで、車名通り狩猟などの用途を想定していた。同様のモデルは海外にも輸出され、牧場・農家などでの業務用やレジャー用として人気となっていく。60年代半ばからはCTの名を与えられ、OHC化、排気量の拡大や副変速機の採用などの改良で実用性を向上。中でもCT110が長寿モデルとなる。
国内ではCT50、CT110が発売されたがいずれも短命。しかし後にCT110の逆輸入車が人気となり、これがCT125誕生へ繋がっていく。
伝統ある「CTらしさ」を最新技術で見事に再現
歴代のハンターカブたちはベースモデルに当時のスーパーカブがあり、カブならではの実用車としての高い完成度・信頼性や、優れた基本性能を活かしながら、悪路に分け入るための装備やメカを追加している。その結果、スーパーカブの利便性はそのままに、タフさを要求される用途に対応する機能と、優れた道具としての美しさが際立つ「CTらしさ」が生み出されてきた。
30年以上の時を経て進化したCT125もその例に洩れず、現行スーパーカブシリーズの洗練された最新メカがベースとなっている。とはいえ、変更点は多岐にわたっており、スタイリングもかつての人気モデル CT110のスタイルを忠実に再現しながら、現代的な要素を盛り込んだものとなっている。ライダーが「CTらしさ」として求める、「旅の道具」としての機能やイメージを、最新技術をもって高いレベルで実現したことが、CT125の爆発的な人気の秘密だろう。
ホンダ「CT125 ハンターカブ」ショート・インプレッション(太田安治)
かつてのCT50やCT110より一回り大きくてガッチリした印象だが、ルックスはまさにハンターカブ。C125とは違った野太い排気音もなかなかのものだ。エンジンはタイで販売されているWAVE125用がベースで、C125より低回転/高トルク型の特性。発進加速、登坂性能はC125より力強い。サスはストロークを有効に使えるソフトめのセッティング。
肉厚のシートで乗り心地は快適だし、165㎜の最低地上高で、トレッキングペースなら想像以上の走破性を発揮する。アップマフラーも出口の高さが約65㎝あり、多少の水深なら走破できそう。その作り込み、上質な仕上げを見れば、44万円という価格も納得できるはずだ。
CT125 ハンターカブの足つき性・ライディングポジション
シート高:800mm
ライダーの身長:163cm
800mmのシート高で車格の割に足着き性は良くない。ただ、シート前方が空いているのでシート前側に腰をずらせば身長150㎝台のライダーでも不安なし。高めのハンドル位置でスタンディングポジションも取りやすい。
ホンダ「CT」ブランドヒストリー
カブの歴史とともに歩んだ日々
ハンターカブは1961年に登場、当時国内でも販売された。しかし大きな市場となったのはアメリカだ。ごく初期はOHVエンジンを搭載したスーパーカブC100系がベースで、エンジン、フレームやサスはそのままでオフロード向けタイヤを履かせ、ローギアード化を図ったものだった。これが、農場や林業など業務向けに需要が高まり改良が進む。
1966年にOHCの新世代カブがベースになると、オフロードでの実用性の高いバーハンドルやテレスコピックフォーク、アップフェンダーなどを備えたCT90に進化、ハンターカブらしさがここに完成する。その後、排気量拡大したCT110は2012年まで生産されることになる。
1961年 CA100T TRAIL50
1962年 C105T TRAIL55
1963年 CA105T TRAIL55
1964年 CT200 TRAIL90
1968年 CT50
1969年 CT90K1
1981年 CT110
文:オートバイ編集部、太田安治/写真:南 孝幸、柴田直行