新型グロムは、カスタムの楽しさと、走りの楽しさもアップ
2013年にグロムが市販開始となったとき、これほどの人気車種になると予想できた人は少ないと思う。125ccモデルは高速道路乗り入れ不可なのでツーリングユースには制約があり、実用面ではAT小型限定普通二輪免許で乗れるスクーターが有利。ミニバイクレースブームも沈静化した時期だったからだ。
しかし街乗りメインのライダーは、画一化されたデザインやイージーなオートマチック変速よりも、個性的なルックスとマニュアルミッションを操る楽しさ、つまり「オートバイらしさ」を求めていたのだろう。グロムはじわじわと売れ続け、各種のカスタマイズパーツが続々と登場し、それに気づいたライダーがカスタマイズを前提にグロムを選ぶ。いつの間にかそうしたサイクルができあがった。
新型グロムのタンクカバーとサイドカバーが簡単に脱着できるように工夫されたのは整備性向上が目的ではなく、ユーザー主導の楽しみを広げるためだ。今まさに世界中のカスタムパーツメーカーが、ホンダの広報写真を凝視しながらイメージを膨らませているはず。
後付けパーツはもちろん、これまでとは違った大胆な外装チェンジキットが出てくるだろう。新型グロムは「自分仕様」を作り上げる楽しさに満ちているという印象だ。
もう一つ大きな変更点が新型エンジンの搭載。僕が注目しているのは5速ミッションの新採用だ。現行グロムのワイドレシオ4速ミッションはイージーではあるものの、パワーの出るエンジン回転域を保ってキビキビ走らせる面白さは薄め。これが5速化によって大きく変わることが期待できる。すでにHRCからレースベース車が発表されているが、スポーツライディングの質も速さも高まることは間違いない。
カスタマイズの可能性とスポーツ性のレベルを上げ、オートバイライフの幅を広げたことで多様なライダーが多様に楽しめる。そうした姿を容易に想像できるのが新型グロムだ。
文:太田安治