コンパクトで軽量な車体、伸びやかな4気筒エンジンで、スーパースポーツながら幅広い層のライダーに愛されてきたCBR600RRがアップデートを受けて復活を果たした。兄貴分の1000RR-Rと同じく、目指したのは「勝てるマシン」。その実力をサーキットと峠で検証する。

ホンダ「CBR600RR」試乗インプレ(宮崎 敬一郎)

画像: Honda CBR600RR 総排気量:599cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 最高出力:121PS/14000rpm 最大トルク:6.5kgf・m/11500rpm シート高:820mm 車両重量:194kg 発売日:2020年9月25日 メーカー希望小売価格:160万6000円(消費税10%込)

Honda CBR600RR

総排気量:599cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
最高出力:121PS/14000rpm
最大トルク:6.5kgf・m/11500rpm
シート高:820mm
車両重量:194kg

発売日:2020年9月25日
メーカー希望小売価格:160万6000円(消費税10%込)

サーキットでも、峠でも「ホンダの本気」を楽しめる

新型CBR600RRは、アジアロードレース選手権や全日本ST600選手権での戦闘力向上を睨んで登場した、いわば生粋の「レプリカ」である。

ライバルたちよりさらに古い世代の設計なのに更新されてこなかったCBR600RRでレースを戦うのは厳しい。そこで、昨年のST600チャンピオン・小山選手にアドバイスをもらいながら開発。ゴールはズバリ、サーキットでの強さ…という熱いキャラクターが特徴。ベースとなっているのは見慣れた従来型CBR600RRの骨格とエンジンだ。

だが、単にそのまま再登場したわけではない。この新型は言わば「メーカーチューン」。大きく手が入っている。

まず、兄貴分のCBR1000RR-R譲りのIMUと連動し、細かくセッティングできる電子制御アシスト機構群を搭載。シリンダーヘッド回りを中心に手を加えてパワーアップ、運動性能向上のための車体剛性バランスも見直し、足回りの刷新なども行われている。

約10馬力ほどパワーアッフしたエンジンだが、上が以前より回るようになった以外、出力特性に大きな変化がない。先代モデルのオーナーが乗れば、上でパンチがある! とカンゲキするだろうが、そうでないライダーは滑らかで優しいエンジンと感じると思う。

実際のところ、5000〜7500回転といった中域のトルクが細くなっていて、その分、10000〜14000回転までのパワーが強力になり、レッドソーンの15000回転までの伸びに活力が生まれている。そもそも旧型はそこまで回らなかったが。

画像1: ホンダ「CBR600RR」試乗インプレ(宮崎 敬一郎)

最初の試乗は、スポーツランドSUGO。コンディションはウエットからハーフウエット、ちょっとウエットの残るドライ路面。雨だと滑りやすい箇所が結構あるコースだ。

最初はモードを比べてようと、パワーモードやトルクコントロール、ABSなどを一括可変できるライディングモードを試してみた。だが3速まで出力規制の入るモード3でも、もっともレスポンスがダイレクトなモード1で走っても感触は変わらない。ライディング制御は同じようにしやすく、滑らかなエンジンで車体の動きも掴みやすい。そして、滑りやすい場所では同じようによく滑った。

モード3はトルクコントロール(HSTC)の介入も大きいのでペースは落ちるはずだが、少しだけラフにスロットルを扱えた。そんな違い。速く走るためのパッケージではない。

注目のウイングだが、SUGOでも威力ははっきりとはわからなかった。後日峠道や高速道路も走ってみたが、同じくよくわからない。ただ、その運動特性は非常に面白いものだ。

SUGOでのウエット箇所や峠道を、パワーバンドの核に相当する12000回転以上は回さないよう、つまりある程度流すような走りをすると、従来モデル以上に落ち着きがある。旋回性は従来モデルなりで大差ないが、ひとたびパワーをかけた操作を行い、ペースを上げると、身軽さが増し、旋回性も強力になる。サスセッティングやシャシー、ライディングアシスト群が「美味しい」のは完全にバトルペースの時だ。

スゴいのは、そうやって速く、クイックに走っていることを気付かせない従順さ。もちろんスキルはある程度必要だが、バトルペースになれば想像以上に気楽で速い。レースではこれが強力な武器になるだろう。

画像2: ホンダ「CBR600RR」試乗インプレ(宮崎 敬一郎)

それでいて、一般道で普通に使える懐の深さも備えている。リッターSSと違い、峠道で遊べる程よいバランスも魅力。新型CBR600RRは、ハイレベルなレースマシンのマインドを現実的な領域でも楽しめる数少ないスーパースポーツ。いまや貴重な一台だ。

ホンダ「CBR600RR」主なスペック・価格

全長×全幅×全高2030×685×1140mm
ホイールベース1375mm
最低地上高125mm
シート高820mm
車両重量194kg
エンジン形式水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量599cc
ボア×ストローク67.0×42.5mm
圧縮比12.2
最高出力89kW(121PS)/14000rpm
最大トルク64N・m(6.5kgf・m)/11500rpm
燃料タンク容量18L
変速機形式6速リターン
キャスター角24゜06'
トレール量100mm
タイヤサイズ(前・後)120/70ZR17M/C(58W)・180/55ZR17M/C(73W)
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・シングルディスク
メーカー希望小売価格160万6000円(消費税10%込)

ホンダ「CBR600RR」ライディングポジション・足つき性

シート高:820mm
ライダーの身長・体重:176cm・68kg

画像1: ホンダ「CBR600RR」ライディングポジション・足つき性

スーパースポーツの中でもハンドルが低めで、シート、ステップなどの配置が比較的コンパクト。着座位置で前傾度の強さをある程度フォローすることも可能だが、ロングランには覚悟が必要だ。少し窮屈だがホールドは自然にできる。

画像2: ホンダ「CBR600RR」ライディングポジション・足つき性

ホンダ「CBR600RR」各部装備・ディテール解説

画像: 動弁系パーツの見直し、クランクの材質変更、吸入ポート変更など、あらゆるパーツを見直し、121PSの最強パワーを達成。

動弁系パーツの見直し、クランクの材質変更、吸入ポート変更など、あらゆるパーツを見直し、121PSの最強パワーを達成。

画像: センターアップマフラーは継続だが、エキパイはパイプサイズを見直し、キャタライザーも大型化され、高回転・高出力化を実現。

センターアップマフラーは継続だが、エキパイはパイプサイズを見直し、キャタライザーも大型化され、高回転・高出力化を実現。

画像: アップ/ダウン両方に対応するクイックシフターは2万6950円のオプション。スポーツランには欠かせないアイテムだ。

アップ/ダウン両方に対応するクイックシフターは2万6950円のオプション。スポーツランには欠かせないアイテムだ。

画像: 4個のパーツを組み合わせた構造のアルミダイキャストフレームを継承。エンジンを重心に近い位置にマウントするレイアウトを採用。

4個のパーツを組み合わせた構造のアルミダイキャストフレームを継承。エンジンを重心に近い位置にマウントするレイアウトを採用。

画像: 倒立フォークはショーワ製のBPFで、従来型から継続採用。今回アウターチューブ長を延長してセッティング幅を広げた。

倒立フォークはショーワ製のBPFで、従来型から継続採用。今回アウターチューブ長を延長してセッティング幅を広げた。

画像: スイングアームは内部構造を最適化するとともに各部の板厚を見直すことで、単体で150gの軽量化も果たしている。

スイングアームは内部構造を最適化するとともに各部の板厚を見直すことで、単体で150gの軽量化も果たしている。

画像: 従来型の逆スラントノーズを思わせるマスク。1000RR-Rのデザインの流れも汲んでいる。スクリーン角度は38°に設定される。

従来型の逆スラントノーズを思わせるマスク。1000RR-Rのデザインの流れも汲んでいる。スクリーン角度は38°に設定される。

画像: シートの座面は大きく、マシンコントロール性に優れるもの。テールカウル形状は従来型の面影を強く残したものとなっている。

シートの座面は大きく、マシンコントロール性に優れるもの。テールカウル形状は従来型の面影を強く残したものとなっている。

文:宮崎 敬一郎、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、南 孝幸

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