外からの風を抑え、衣服の内側の空気をどれだけ温められるか、と考える
冬のキャンプツーリングは、なかなか悩み事が多いもの。とくに服装はどうしたらいいのか、僕もはじめはまったく分かりませんでした。
その昔、学生時代は「とにかくたくさん着たら暖かいでしょ」と数えてみたら上半身だけで11枚も着ていたことが……。動きにくい上、隙間風がビュンビュン入って、走行中はかなり寒かったといまでも覚えています。
今回は、12月中旬に、東京から静岡県磐田まで片道約250kmを走ってキャンプをしたときの実際のレイヤリングをお見せします。
僕が考える冬の重ね着のキモは、たったひとつ「デッドエアをどれだけ作れるか」。隙間風の侵入を防ぎ、どれだけ温かい空気を衣服の中に保てるか、ということです。
「レイヤリング」の基本的な考え方は、一緒に同日キャンプをした若林浩志さんが分かりやすく、解説してくれています。ぜひそちらも合わせてご覧ください。
上半身は5着
アウター(ジャケット)
バイク用ウエアメーカー「マックスフリッツ」のダウンジャケットを長年愛用しています。
ダウンジャケットの利点は軽くて動きやすいこと、そして温かい空気をため込みやすいことだと思っています。
ただ、バイク用の防風フィルムがインサートされたものでなければ、その効果はほぼ皆無です。
このジャケットは10年近く前に購入しました。たしか価格は50000円。高い買い物でためらいましたが、以降毎年冬場は大活躍。一般的なダウンジャケットとの大きな違いは表面の素材です。このジャケットはコットンと革のため、焚き火の火の粉が飛んできてもすぐには穴が空きません。
化繊のウエアは火の粉に弱いので要注意ですよ。
あと、マックスフリッツは普段から街着としても活用できるというのが大きなポイント。西野がその服いいね、と言われるときはほぼ100%マックスフリッツを着ているときです。
ミドルレイヤー(インナージャケット)
ダウンジャケットの下に着用しているのは、二輪用品メーカー「ラフ&ロード」のインナージャケット。同社のウインタージャケットに装備されていたものです。
ラフ&ロードのインナージャケットはとにかく温かい! インナー単品でもさまざまな種類が発売されていて、西野はベストタイプのものや裏地の加工が異なるものなど複数愛用しています。
手持ちのジャケットの中にこれを着るだけで、数段保温性がパワーアップする優れものです。
ミドルレイヤー(フリース)
インナージャケットの下には、アウトドアブランド「モンベル」のフリース「クリマエア ジャケット」(税別8600円)を着用。
このフリースには、防風フィルムは入っていません。表地はもこもこした起毛素材で、ストレッチも効いているのが特徴。
11月くらいまではこの上に前述のダウンジャケットを着てレイヤリングは完成します。
あと、このジャケットは一度焚き火で穴をあけてしまったことがあるのですが、縫ったらまるでどこに穴が空いたか分からなくなりました。そういった意味でも毛足の長い起毛素材は気に入っています。
ミドルレイヤー(ネルシャツ)
ここからは西野の趣味嗜好が強くなります。このネルシャツはユニクロの綿100%のもの。ユニクロは丈が長めなんですよね。
丈が長いとジーンズやオーバーパンツの中に裾を入れたときに、めくれにくくて安心。そして、ちょっと細身。細身であることで、重ね着した際にゴワゴワせずにすみます。
ベースレイヤー(Tシャツ+貼るカイロ)
以前は長袖の発熱素材を使った化繊のものを着用していた時期もあります。多くの人にとってはそのほうが正解でしょう。
ただ、ここ数年で気づいたのですが、僕は化繊の肌着が苦手でした。なんだか、むずがゆくなるというか、落ち着かないんです。
なので夏場も着ている綿100%の普通のTシャツ(丈が少し長めのもの)を愛用。
Tシャツに使い捨てカイロをペタペタと貼っています。胸とお腹に計3枚、後ろは腰と肩甲骨の間に計3枚、この日は合計6枚使用しました。
枚数はそのときの寒さによって調整しています。
電熱ウエアにすれば? なんて声も聞こえそうですが、バイクのバッテリーを電源とするタイプは、キャンプでは使えません。
ポータブルバッテリータイプはありだと思いますが、電池切れや故障のことを考えると不安があり、いまだ手を出せずにいます。
使い捨てカイロは1泊2日で、いつも10枚携行。だいたい6枚~8枚使用しています。ちなみに今回の6枚は初日の朝から貼りっぱなし。自宅に帰るまで熱は保たれていました。
使い捨てカイロを貼るタイミングは、寒くなってからではなく、寒くなりそうだと思ったときがおすすめです。
下半身は3着
アウターレイヤー(オーバーパンツ)
オーバーパンツはユニクロ製のもので10年ほど前に購入。いわゆる「暖パン」というやつで、裏地がフリースになっています。
ある年に火の粉を受けても溶けにくそうな素材のものが登場。これだ! と思い買って以降お気に入りとなりました。
寝るときは中のジーンズを脱いで、下着の上にこれ一枚。暖パンは動きやすくて肌触りが心地いいのも魅力です。
ミドルレイヤー(ジーンズ)
ジーンズは前述のダウンジャケットと同じマックスフリッツの「デニムスクランブラーパンツ」を長年愛用。税別16000円。
パンツが男女問わず人気のマックスフリッツの中でも名作といえるアイテム。膝にはパッドを挿入可能で、腰にもソフトプロテクターが備わっています。
マックスフリッツは、ライディングパンツにいち早くストレッチ素材を使ったメーカーでもあり、ぴたっとしていますが、動きやすさは抜群です。
このパンツは季節を問わず、バイクに乗る日に穿いています。
ちなみに、マックスフリッツは冬用の暖かい仕様のパンツもさまざま展開中。それも持っているのですが、事情がありまして、ちょっと今回は穿いてこれませんでした。
太ってしまったんです。汗
冬用のパンツなら正直オーバーパンツもインナーパンツもいらないくらいに暖かいので、そちらもおすすめです。
ベースレイヤー
以前は化繊のインナーパンツ(ももひきのようなもの)を履いていましたが、やはり化繊が密着するのが苦手だということに気付き、ここ2年ほどは穿いていません。
なので、ジーンズの下は下着のパンツ一丁なので、写真は載せないでおきます。
靴・グローブ・そのほか
シューズ・ソックス
今回はシフトチェンジ不要のトリシティ155でのキャンプだったため、軽登山もできるアウトドア用のハイカットシューズを履いてきました。
ノースフェイス製で、防水透湿フィルムのGORE-TEXを内蔵したもの。冬場に足元が濡れると一巻の終わり。だから天気予報がどんなによくても防水性に優れるシューズやブーツを選んでいます。
靴下はユニクロのヒートテック。シューズが防水性とともに防風性も持ち、さらにトリシティ155は足元に風が直接当たらないため、これだけで充分でした。
場合によっては、靴下に貼るタイプの使い捨てカイロを装着します。靴の中敷きに貼るタイプもありますが、経験上靴下に貼った方が効果が高いと思っています。
ネックウォーマー
ネックウォーマーは必需品と考えています。首やあごに直接風が当たらないようにするのとともに、首元から風が入るのを防ぐ役割を果たします。
なので、アウターを着た後にネックウォーマーを付けるのではなく、フリースを着たくらいの段階で僕は装着しています。その上からジャケットを重ね着をすることで、首周りの隙間を埋めまくるのです。
グローブ
グローブは、手袋の町・香川県東かがわ市の老舗バイク用グローブメーカー「JRP」製。
製品名は「DMW」。同社の最高峰のウインターグローブです。税別28000円。表皮は鹿革で、内装には天然ムートンを採用。防風防水フィルムのサイトスがインサートされています。
値は張りますが、かれこれ10年近く愛用中。その間、ほかのウインターグローブもいろいろ試してみましたが、結局このグローブが一番気に入っています。
何がいいかって、暖かいうえに、操作性が高いこと。夏場も夏用のJRP製グローブを愛用していますが、同社の製品は手がものすごく動かしやすいんです。だから、キャンプ中も活躍してくれますよ。
また、丈夫さも魅力。縫製がしっかりとしているのが二輪用品店で製品を見れば分かるはず。物としてとても美しい仕上がりになっています。
レインスーツが保険になる
今回のキャンプは、日中の気温が10℃弱、朝夜は2~3℃でした。ここまで紹介した装備で寒くないということはありません。「耐えられる」くらいです。
いざとなれば、レインスーツを着よう、と思っていました。ただ、そこまでではなかった。冬のキャンプで、ぬくぬくというのはグランピングでもしなければ無理でしょう。寒いのも醍醐味、くらいの気持ちでいます。
でも、レインスーツは雨具としてだけではなく、持っていると保険の意味で心強いもの。泊まりがけで距離を走る場合は、必ず携行したいものです。ズボンが破れてしまうことだってあるかもしれませんからね(西野は経験があります)。
【まとめ】防風・保温・加温を意識!
以上、webオートバイ編集部・西野が実際に1泊2日のキャンプツーリングを行なった際のウエアの装備紹介でした。
文中でもお伝えしましたが、個人的な好みによるセレクトという面が多分にあります。やはりベースレイヤーには化繊タイプのものを着用するのが王道でしょう。オーバーパンツもユニクロの暖パンを紹介しましたが、二輪用品メーカーから専用品がさまざま販売されています。
あと、わりと僕は寒いのが得意な方です。暑いのは苦手(最近、急激に太ったということもありますが)。
キモは、隙間風をシャットアウトすること、保温している空気の層を逃がさないこと。防風&保温です。そこに、使い捨てカイロや電熱ウエアなどを使って、いかに「加温」ができるか。
レイヤリングとともに、防風・保温・加温を意識するといいかと思います。
あとはキャンプ中に泣かないために、焚き火の火の粉対策を忘れずに!
文:西野鉄兵/写真:若林浩志