実際にスポーク張りをしてもらおう
全ての基本になるオフセット量を計測。これ超大事。
古いリムを外す前に、まずはハブに対するリムのオフセットを計測。
曲尺を使うんだけど、これで測るのはちょっと難易度が高い。曲尺には丸目、角目(ミリ単位の√2倍)があったり、内側の目盛りは原点の位置が外の辺にあったりするんですよ。
なので、曲尺で垂直な位置を取ったら、普通の定規でオフセット量を測ると間違えにくいよ。
リム幅が変わらないならこれだけで良いんだけど、今回は、1.6→1.4にリム幅が変わるので、それを踏まえて計算が必要。
今回の場合だとこんな感じ。参考までに数字かいておきますが、車種や交換するリムなどによって変わるので、くれぐれも実際に作業するリムで計算してね。
オフセットを測ったら分解。今回はスポークをステンレススポークに交換するので再使用はしないのだ。あと古いカブだったりすると、スポーク自体も劣化してるもんね。
というわけで切断しまくり。
スポークを切ってリムとハブを分割したら、お次は新しいスポークの準備。
ネジを切った部分にスレッドコンパウンドを塗布しておこう。
そしてスポークにはハブの外側からスポークが出る「OUT」と、ハブの内側から出る「IN」とがあるので、混ざらないように別々にまとめておくのだ。
これで準備は完了。
ちなみに「IN」と「OUT」は、ハブの後を見ればどっちがどっちかわかるぞ。
写真のハブで線がついてるのが「OUT」ね。
!注意!
今回のカブの場合は、ハブの表と裏からスポークが出るけど、他社種ではまた構造が違います。
スポークの取り付け順番については、あくまで今回のスーパーカブ110のハブについてです。
ハブとリムにスポークを取り付けるぞ。
で、まずは「IN」を、表側も裏側もすべて取り付けて、付け根に輪ゴムとかをかけて止めておこう。
次に「OUT」をこれまた表裏全て取り付けていくのだ。
そしたらリムに装着。
まず片側の「IN」をバルブの横に取り付け。3つあけて「IN」をリムに取り付けていきます。
最終的にバルブの左右が「IN」になってれば正解。
交互なんだから1つあけて取り付けたくなるけど、反対側のスポークがあるからね。それで3つあけるの。
片側のハブの「IN」を全部付けたら、今付けたのと同じ側の「OUT」を隣のリム穴に取り付けていき、終わったら反対側だけど、今度は逆に「OUT」取り付けてから「IN」。
つまり、「IN」「OUT」「OUT」「IN」という具合で最後まで取り付けたら完了。
リムを正面からみると、ニップルホールが左右にオフセットされてるのよ。
で、「右にオフセットされたニップルから伸びるスポークは、向かって右側のハブに」いくのね。
逆に「左にオフセットされたニップルから伸びるスポークは、向かって左側のハブに」。
この段階で組み間違いがないかチェックチェック。
一通りスポークを取り付けたらジャイロスタンドにセットして、マイナスドライバーなど(※)で、リム側からニップルを締めるよ。
※使用するスポークの種類によって工具が異なります。今回使ったDACHIのニップルはマイナス。
先に計測しておいたオフセット量で基準位置をセット。
さて、ここからが頑張りどころ。縦と横の振れがなくなるまで、ひたすら調整なのだ。
振れ取りはまずは横から。
振れを取る順番だけど、まずは横から。その後、縦振れを取って仕上げにもっかい横振れ取り。で、最後にトルクレンチをかけて完成ってイメージ。
振れ取りの順番は、基本的には「横→縦→横」、という順番ですが、横を取りつつ縦も意識し、縦も撮りつつ横も意識する、という感じで、実際の作業は複合的な部分もあります。
最初の横振れををとるときは、あまり強いトルクはかけないようにして下さい。ニップルレンチで軽く回るくらいの感じで。
次に縦振れを取るときの段階でそこそこのトルクをかけていきます。縦振れを取ると、また横振れが出てきますのでここはしっかりトルクをかけて仕上げます。もちろんトルクのかけすぎもいけないですよ。
そして最後にトルクレンチで仕上げます。
まずは横振れ。取り方の基本はこんな感じ。
左右の振れ調整ですが、右に振れてたら右に伸びるスポークのニップルを緩め、その後左に伸びるスポークのニップルを締める、という感じです。
あとはその繰り返しを慎重に行ってください。
図でいうとこんな感じ。
そして縦振れの取り方はこんな感じ。
縦振れについてですが、調整が進みすぎてトルクがかかってくると振れを取りづらくなります。
位置決めの初期段階など、なるべく早い段階で縦振れを取れると良いと思います。
ざっくりとした言い方になってしまいますが、外に移動させる側を緩めて、逆側を締める。
これをリム全体の約半分ずつ、広い範囲で行ってください。
こちらも、図でいうとこんな感じ。なんか今回いろいろ描いてる。
そうして無事に振れが取れたら完成。
基準点さえわかってればやり直しは効くので、焦らず丁寧に。
なお、「振れ取りをどこまでやるか」ですが、サービスマニュアルなどの基準では、誤差2mm以内というのが一般的な目安。
ダートフリークでのホイール組み立てサービスでは、誤差0.5mm以内が基準。すごい。
今回の動画&参考動画。
ざっくりだけど動画もとってみたよ。
動画では短くまとめてるけど、実際にはじっくり丁寧に作業をしているのでほんと雰囲気程度の参考までに。
完成。スーパーカブ110の足元が引き締ってカッコ良い!
あとは完成したホイールにタイヤを装着。タイヤ装着についてはこちらを参照してね。
普通のはめ方以外にも、結束バンドでの装着とかもやってるよ。
リムが黒くなったことで、タイヤの存在感アップ。というか黒リム似合うね。すげー、カッコ良い。思った以上に見た目の影響はでかいですね。
あと軽量化の恩恵がすごそう。
さすがに軽量化の効果は大きくて、加減速からコーナリングまで、すべての挙動が軽快でダイレクトになりました。
そしてなにより、前後ブラックアウトしたリムが最高に気に入っています!
リム幅は純正よりワンサイズ狭くなったので細く見えるんじゃないかと心配したけど、装着してるタイヤが2.75幅のまま(※)なので、あまり影響はなかった。
むしろ黒リムのおかげでタイヤが大きく見える。
※タイヤがそのままでリムを補足すると、タイヤ外径が大きくなってスピードメーターに多少誤差が出るのでご注意を。
スーパーカブ110は、要所要所にブラックのパーツがあるので、そうした意味でもおさまりが良いね。
まとめ
というわけで、スポーク張りでした。一度覚えてしまえば今後のカスタムの幅がめっちゃ広がりそう。若林もリムの仕様が決まったらやってみますよ!
写真・文・イラスト:若林浩志 取材協力:ダートフリーク