文:中村浩史/写真:森 浩輔、中村浩史、ヘリテイジ&レジェンズ編集部
バイク専門のラッピングを行なう「ガレージシャンティ」の風晴さんにお話を伺いました!

ガレージシャンティ代表の風晴さん。ご自身もレース活動をされていた関係で、モータースポーツを軸とした活動を続けている。デザイナー出身、カーラッピング施工技術の認定資格も持つ。
ガレージシャンティの作品例

もとはトリコロールカラーを、ガレージシャンティのイメージカラーとした作品例。ベースカラーのブルーグレー、濃紺に、プリントフィルムの組み合わせでここまでイメージチェンジ! これを元に戻せるのがラッピング最大のメリットだ。
元のカラーはこちら
「ラッピング」の特徴
クルマ業界から始まりバイクでも一般的になってきた「ラッピング」
ラッピングといえば、四輪車カスタムの世界でいち早く定着したエクステリアドレスアップの手法だ。
「簡単に言えば、ホームセンターで売っているカッティングシートをバイクやクルマに貼ってカラーチェンジやドレスアップをする手法です。もちろん、ラッピング専用のフィルムを使って、施工認定を受けたプロがやるんですが、バイクの世界ではまだまだ一般的とは言えないですね」とは、全日本ロードレースにもエントリーする「ガレージシャンティ」の風晴さん。
風晴さんがバイクのドレスアップ用にラッピングを始めたのは、この5年ほどのこと。デザイナー兼用でレーシングチーム運営をするなか、クルマのドレスアップでは一般的になりつつあったラッピングに注目した。
「四輪のレースではわりと当たり前になってきていて、ドリフトのD1なんてどんどんブツケるけど補修もタッチアップじゃなくて上からフィルムを貼る感じ──あ、これバイクの世界でもいけそう、ってまずは我流で自分たちのチーム内だけでやり始めたんです」
それから、フィルムメーカーの施工技師の資格認定を取得、お客さんのバイクへの施工オーダーを受け始めたのは、この1〜2年なのだという。

ウィングレット部分はカーボンフィルムに、抜き文字を入れたプリントフィルムを多層貼り。

印刷専用のラッピングフィルムには写真もイラストもオリジナルデザインも印刷可能。

タンク上部前半のダクトなどは細かい作業。こういう箇所はペイントに軍配が上がる。
「ラッピング」のメリットは元に戻せること
バイクのカラーカスタムといえば、やはりペイントが一般的。では塗装とラッピングはどんな違いがある?
「ラッピングのメリットは、とにかく『元に戻せる』こと。全塗装したけどその車両を売却するとか、いま新車販売で多い『残価設定ローン』でも、売却時にノーマルに戻さなきゃいけないとなると、それが塗装だと剥離や新品パーツ購入で交換、ってことになるんですがフィルムははがせばいい」
もちろん、ボディ面の耐久性や美しさは塗装のほうが上だと、風晴さんは言う。ラッピングは最悪、フィルムの端がはがれることが前提〜といっても耐久性は5年〜10年あるというが、塗装もラッピングも、メリットとデメリットがあるというわけだ。
「あとはフィルムはプリントに対応できるので、写真やイラストをフィルムに印刷して、それをボディラッピングする、ってユーザーさんが多い。微妙な色の再現も、塗装では厳密な調色が必要で、フィルムは最初からその微妙な色が存在するケースも多いです」
手間もコストも、どちらにもメリット・デメリットがある。けれどバイクへのボディラッピングという手法は、これからどんどん増えそう──フィルムにはそんな可能性が広がっている。

ラッピングフィルムのカラーサンプル。ペイントでいう「調色」に当たるもので、既存色で数100色、これにクローム色、さらに印刷専用フィルムがあるのだという。
「ラッピング」が向かない車両とは?
カラーチェンジに新しい可能性を見せてくれるラッピングだが、大きなメリットでもある初期化がイージーということが、実は絶版モデルやレストアには向かない手法なのだと風晴さんは言う。
「気軽に元に戻す、というのがラッピングの最大のメリットだとしたら、塗り替えた色も大事に乗り続けようとする絶版モデルには向かないかもしれないですね。ウチのお客さんも、絶版モデルの方はほとんどいないです」
それでも、新しい可能性として、カラーチェンジを身近に感じさせてくれるのも、またラッピングなのだ。
「今はマフラー、サス、ホイールを換えても、カスタムとしてはそう目立たないじゃないですか。それがフルラッピングだと最大限に効果を発揮します! しかも、数年はその色で乗って、ノーマルに戻したり、また新しいデザインにしたり、というのもラッピングのメリットです。もっとオールペンとかフルラッピングが、カスタムの選択肢に入ってくるといいですね」
ペイントの良さも、ラッピングの良さも両方分かった上で「もっと気軽に」カラーチェンジを考えられることが、ラッピングの大きな可能性なのだ。
「ラッピング」の手順
ラッピングをわかりやすく言えばカッティングシートを手張りする作業。ただしそれを、プロが専用のフィルムで行なうのだ。
ラッピングを行うのはこの車両! さて、どんな仕上がりになるかな?


タンクのエッジ部分に沿って2枚貼りの作業例。

やや大きめに切断したラッピングフィルムを……

専用のヘラでエアを抜きながら圧着していく。

パーツを取り外して単体で細かい仕上げを行ない、合わせ面の、普段は目に触れない場所まで巻き込んでいく。

合わせ面に仕込んだナイフレステープで切断面をカット。ラッピング面にカッターなど刃物を触れさせることはない。
出来上がったのはこちら!

この車両は、納車前の新車をラッピングしたもの。純正色がこれしかない、欲しいカラーが絶版になってしまった時などに、オーナーからでなく、納車前にディーラーからオーダーが入るケースも少なくない。著作権に問題がなければ、BMWのMパフォーマンスの純正ラインだって入れられるというわけ。
「ラッピング」によりイメージを一新したカスタム車の一例
J-TRIP/カワサキ Ninja ZX-25R


「Made in JAPAN」のレーシングスタンドを作り続けるJ-TRIPが、デモマシン用に購入したNinja ZX-25Rを「おじさんほいほい」的、ZXR750カラーにフルラッピング! こちらは大阪のファンファクトリーによる作品で、一時的な展示車で、将来的に売却する予定があるため、ラッピングでカラーチェンジしたのだという。その用途、正解!
アクティブ/ホンダ CB1000R


単色で、ちょっと大人し目のCB1000Rを、レーシングライン風に処理したアクティブの作品。これは手軽なイメージチェンジの好例で、ペイントではフルペイントでも部分ペイントでも下地処理は同じ手間なところを、ラッピングならば部分処理でOK、のメリットを生かしている。これも気軽にノーマルに戻せるところがイイ!
文:中村浩史/写真:森 浩輔、中村浩史、ヘリテイジ&レジェンズ編集部