ツーリングライダーに適したテントとは
昨今のキャンプ人気は、約25年ぶりのキャンプブームともいわれています。話題の『ゆるキャン△』をはじめ、芸人ヒロシさんのキャンプ動画など、キャンプに関する面白いコンテンツが次々登場しているのもひとつの要因でしょう。そんななか、ソーシャルディスタンスを保ちやすい野外で楽しむキャンプは、コロナ禍においても注目されています。
今回は、ライダー向けの「テント」に関して考察していきます。
バイクで持っていくことを考慮すると、おのずとコンパクトなものに絞られます。コンパクトというのは収納時のサイズ。なるべく携行性が高く、組み立てたらなるべく居住性の高いもの。それが理想ですよね。
そうして絞られるのが、一般的にドーム型と呼ばれるものと、近年流行中のワンポールテントです。ふたつの特徴を見比べていきます。
ライダーのテントの主流は昔からドーム型テント
ツーリングライダーのテントというと、昔からドーム型が一般的でした。コールマンの「ツーリングドーム」シリーズをはじめ、アウトドア用品メーカーのコンパクトなテント、これを多くのキャンプライダーは好んで選んでいます。
山岳用ほど軽量さとコンパクトさは求めなくていいため、そこそこのものが1~2万円台で手に入るというのも魅力です。
ドーム型テントは、自立式やセミ自立式に分類され、テント本体にポールを通すだけで、ドーム形状を形作ることができるのが特徴です。場合によってはペグを打たなくても立てられるので、砂浜やコンクリートでも張ることはできます(例外もあります)。
私西野が愛用しているドームテントは、ダンロップ「VL-3」。西野が中古で譲り受けてから、10年以上愛用しています。おそらく15年以上前の製品です。
このテントを持って全国各地をキャンプしながらツーリングしました。
構成物はインナーテント+フライシート+ポール2本。シンプルな設計で壊れにくく、シームテープ(防水の目止め)の加水分解の補修だけで10年間使い続けられています。
「VL-3」の3とは、3人用を示すもの。このテントは山岳テントの3人用となります。山岳テントの場合、標準体型の人が中に寝られる人数で何人用か決められるため、荷物の収納スペースのことは考えられていません。
キャンプツーリング用として山岳テントの選ぶ場合は、ソロでの利用でも2~3人用にするのがおすすめ。シートバッグやヘルメット、脱いだライディングジャケットなどを入れるには、人が2人以上寝られるスペースが必要となるためです。
ちなみに現在このVLシリーズは、ダンロップブランドから「プロモンテ」ブランドに変わって、仕様が進化したものが販売されています。山岳用テントは少し値段が高いのがネックですね。
近年流行しているのがワンポールテント
ワンポールテントは、その名の通り、ポールを1本しか使わないテントです。地面にテント本体を固定するペグを打ち、最後にテント中央にポールを立てれば完成。とんがりテントやティピーテントとも呼ばれます。
組み立てると、四角錐や六角錐、八角錐の形状となります。
慣れるととても早く立てられるというのがひとつの魅力。また、なんといってもその可愛らしい見た目でしょう。ワクワクする感じがしませんか? ファミリーキャンパーには巨大なワンポールテントが大流行しています。
ダンロップのドームテントを愛用していた西野も衝動に駆られ買ってしまいました。選んだのは、テンマクデザインの「パンダ」です。
ワンポールテントはその構造上インナーテントを持たない製品も多く、地面の上にコットを置くのが一般的。ただこのパンダは、ドームテントと同じようにインナーテントが標準装備されています。
インナーはアウターの本体を立てた後、中に吊るだけなので簡単に組み立てられます。ちなみにインナーの位置は、出入り口に対して、四辺のどこに配置してもOK。好みの場所にレイアウトが可能です。
前室部分が広いというも特長。雨が降ったときも中で調理ができますし、のんびりとくつろげます。荷物は大きなものは前室に置いて貴重品などはインナー部分に入れておくと安心ですね。
ちなみに西野は昔から赤や黄色のテントを好んで愛用していますが、これは写真映えを見越してのこと。バイクと並べたときにいい感じに映えます。欠点は、朝眩しいことですね。地味めなグリーンやブラウンなら極端に眩しくて目覚めることはないでしょう。
ワンポールテントは日本一周のような旅には不向きか
ワンポールテントを実際に使ってみて、その特徴が分かりました。
このタイプは、大前提としてペグがしっかり打てる地面であることがマストです。ドームテント(自立タイプ)の場合は、ペグなしでも成立しますが、ワンポールテントは立てることすらできません。
ペグが打てないコンクリートやアスファルトはもちろん、すぐに抜けてしまう砂浜もNG。大きめの石がごろごろしている河原も張りにくそうです。得意なのは、芝生や土のサイト。ペグが打てないときは、重石になるものを見つけて使えば、何とかなりますが、ちょっと面倒ですね。
同じように最近流行の兆しを見せている「パップテント」もペグ打ちが必要となりますので注意が必要です。
あと、この製品「パンダ」の場合、標準装備されているインナーがフルメッシュタイプで、冬場は不向き。オプションの「パンダ スタンダードインナーDX」と換装するのがよさそうです。
結論、もし自分が日本一周や北海道を1週間走るツーリングに出るとしたら、ワンポールテントは選ばないでしょう。やはり万能性という面では、ドームテントに分があります。
でも、ペグが確実に打てるキャンプ場に泊まることが分かってるツーリングでは、これからも「パンダ」を使っていくつもりです。
購入の決め手はやはり、見た目でした。この中で寝る、前室でくつろぐ、愛車と一緒に写真を撮る……いろいろ夢が膨らみました。モノとしての魅力に満ちています。
文・写真:西野鉄兵