2021年1月28日に発売された新型PCXシリーズは、どのような想いを持って開発されたのか。開発メンバーの皆さんに新型誕生の背景を伺った。

お話を伺ったのはこちらの5名

大森純平 氏(開発責任者)

本田技研工業株式会社
二輪事業本部 ものづくりセンター
完成車開発部 完成車統括課
チーフエンジニア

半田悦美

本田技研工業株式会社
二輪事業本部 ものづくりセンター
完成車開発部 完成車研究課
技師

岸 敏秋

株式会社本田技術研究所
デザインセンターモーターサイクルデザイン開発室
プロダクトデザインスタジオ
エキスパートエンジニア デザイナー

前田匡雅
本田技研工業株式会社
二輪事業本部 ものづくりセンター
完成車開発部 完成車設計課
アシスタントチーフエンジニア

武市廣人

本田技研工業株式会社
二輪事業本部 ものづくりセンター
パワーユニット開発部 動力設計課
スタッフエンジニア

画像: (右)PCX (中央)PCX e:HEV (左)PCX160

(右)PCX
(中央)PCX e:HEV
(左)PCX160

こだわりと熱意が支える大人気モデルの充実進化

PCXは誰もが認める大ヒットモデル。前モデルはデビューから2年しか経っていない。モデルチェンジの必要があったのだろうか? 開発メンバーの皆さんに、まずその疑問をぶつけてみた。

「開発をしていると色々なアイデアが出てきますが、中には間に合わなかったものもあるわけです。先代で相当刷新しましたが、まだまだやりたいことはありました。その中のひとつがUSBタイプCソケットの採用です。スマホがきちんと充電できる電力を確保して省スペースも実現した、こだわりの装備です」(大森)

画像: フロントインナーボックス内にUSB Type-Cソケットを標準装備。スマホの充電などに使える。

フロントインナーボックス内にUSB Type-Cソケットを標準装備。スマホの充電などに使える。

そんな新型PCXだが、ハイライトのひとつである4バルブヘッド採用の「eSP+」エンジンは、高出力と省燃費、どちらを狙ったものだったのだろうか?

「正直、両方とも狙っていました。パワーも燃費も向上する欲張りなエンジンですが、ウォーターポンプ回りを簡略化して部品点数を減らすなど、コストも抑えています」(武市)

画像: 従来の「eSP」から「eSP+」となった新型水冷単気筒エンジン。2バルブから4バルブ化された。

従来の「eSP」から「eSP+」となった新型水冷単気筒エンジン。2バルブから4バルブ化された。

新型は車体周りも大きく変わった。洗練されたフレーム形状に加え、リアタイヤは1インチダウンさせている。

「リアの13インチ化で稼いだスペースはトランク容量の拡大ではなく、ほとんどサスストロークのアップに使っています。シットインスタイルのPCXでは段差を乗り越える際の突き上げも大きく感じられるので、リアのトラベル量を増やして、足回りがしっかり動く、乗り心地のいいバイクを目指しました」(大森・半田)

画像: リアサスペンションのトラベル量は95mmに。合わせてホイールを新設計しタイヤをワイドサイズ化。1インチ落とことにより乗り心地の低下は、こうして充分すぎるほど補われている。

リアサスペンションのトラベル量は95mmに。合わせてホイールを新設計しタイヤをワイドサイズ化。1インチ落とことにより乗り心地の低下は、こうして充分すぎるほど補われている。

今回はHSTC(Honda セレクタブル トルク コントロール)というビッグバイク並みのハイテクデバイスも採用されている。

「濡れたマンホールや道路のペイント、石畳など、スリップするリスクはどのバイクも同じです。若い方からベテランまで、幅広いが乗るPCXだから、HSTCはあった方がいい、ということで採用しました」(大森)

画像: 原付二種にもトラクションコントロールが備わる時代に。液晶メーター横の「T」の表示がHSTCを示す。カットすることも可能。ABSは、前輪にのみ搭載。

原付二種にもトラクションコントロールが備わる時代に。液晶メーター横の「T」の表示がHSTCを示す。カットすることも可能。ABSは、前輪にのみ搭載。

PCXらしさをさらに研ぎ澄ませたスタイリングも今回のハイライトだ。

「エッジの効いた水平基調のデザインを取り入れながら、大人の方にも似合う、エレガントなイメージに仕上げました。スポーティでありながら、必要以上にアグレッシブにならないよう、面構成にも気を配っています」(岸)

画像: こだわりと熱意が支える大人気モデルの充実進化
画像: 新型PCXのスタイリングモチーフとして描かれたパワークルーザーのスケッチ。水平基調のシャープなラインをイメージしたもの。

新型PCXのスタイリングモチーフとして描かれたパワークルーザーのスケッチ。水平基調のシャープなラインをイメージしたもの。

流麗なスタイル、装備、そして上質な走り。PCXの魅力は、常に「一歩先」を見続ける開発陣の努力が切り開いている。

「こうしたら絶対によくなる、というものを新型はすべて盛り込みました。」(前田)
「初めてバイクに乗られる方にも、PCXを通じてバイクの楽しさを味わっていただけたら嬉しいです」(大森)

まとめ:オートバイ編集部/写真:南 孝幸、オートバイ編集部

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