ホンダ「MSX125 グロム」インプレ・解説(太田安治)
ストレスなくキビキビと走れる「5速グロム」
ホンダは1960年代終盤から「ミニバイク」「レジャーバイク」と呼ばれる小型オートバイを作り続け、その思想は現行のモンキー125やグロムに受け継がれているが「ユーザーが手軽にカスタマイズできる」という、これまでのメーカーの姿勢とは異なるコンセプトで注目されているのが新型グロム。
車体の基本構成は前モデルがベースだが、外装パネルを一新、同時にハンドル/シートも変更。グリップ位置が高くなって上半身のリラックス度が増し、着座位置の自由度が大きいシート形状と併せて大柄なライダーでも窮屈さを感じないポジションになった。
だが、僕が最も注目したのはエンジン。空冷OHC2バルブ単気筒は変わらないが、ボア×ストロークを52.4mm×57.9mmから50mm×63.1mmに変更。圧縮比は9.3から10に高められた。ロングストローク設定なので低回転型の穏やかな特性を想像したが、走ってみると低回転域での粘り強さより、5000〜7000回転あたりの反応が良くなっていたことが印象的だった。
特に6000回転近辺での力強さはストリートライディングの楽しさを大きく引き上げている。8000回転手前から回転上昇の勢いは弱まるが、レブリミッターが作動する9500回転までキッチリ回るのでストレスは感じない。
そして最大のトピックが5速ミッションの採用。従来の4速ミッションはビギナーでも扱いやすい反面、各ギアのレシオ差が大きく、登り坂やコーナーで意図した回転域から外れてパワー不足やギクシャク感が出ることがあった。対して、新型の5速は自然な繋がりで加減速がスムーズ。ピークパワーはほとんど変わらないが、最高速に到達するまでの時間は新型の方が短いはずで、サーキットでも大きな武器になる。なお、60km/h巡航時は4速で5000回転、5速だと4000回転。市街地は4速までを多用し、クルージングは5速でゆったり、というイメージだ。
前後12インチの小径ホイール+短いホイールベースによるコロコロと転がるようなコーナリング特性と比較的硬めのサスペンション設定が生むキビキビした操縦性に、格段に爽快感を増したパワー特性がプラスされ、全体的にスポーティーな走りが楽しめるのが新型グロム。とっつきやすさを保ったまま、より幅広いライダー層に支持される仕上がりになっている。
ホンダ「MSX125 グロム」足つき性・ライディングポジション
シート高:761mm
ライダーの身長:163cm(モデル 国友愛佳)
コンパクトな車体サイズだが、新型はハンドルが高くなり、シートの段差がなくなったことで大柄なライダーでもゆったりとしたライディングポジションが取れる。761mmのシート高で足着き性がいいこともグロムの美点だ。
ホンダ「MSX125 グロム」タンデム 2人乗り(国友愛佳)
タンデムシートが短いのと、車格がコンパクトなので、タンデムはどうしても窮屈になりがちです。座面自体はフラットなので座りやすいのですが、急加速ではお尻が後ろにズレやすいので、ライダーにしっかりつかまって体を安定させるとベターです。密着度が高いから、仲のいい2人でちょっとお出かけ、という使い方がいいと思います。
ホンダ「MSX125 グロム」主なスペック
全長×全幅×全高 | 1758×722×1017mm |
ホイールベース | 1198mm |
最低地上高 | 178mm |
シート高 | 761mm |
車両重量 | 102(ABSは104)kg |
エンジン形式 | 空冷4スト2バルブ単気筒 |
総排気量 | 123.9cc |
ボア×ストローク | 50.0×63.1mm |
圧縮比 | 10.0 |
最高出力 | 7.2kW(9.78PS)/7250rpm |
最大トルク | 10.5N・m(1.07kgf・m)/5500rpm |
燃料タンク容量 | 6.0L |
変速機形式 | 5速リターン |
キャスター角 | 25゜ |
トレール量 | 81mm |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70-12・130/70-12 |
ブレーキ形式(前・後) | 220mmシングルディスク・190mmシングルディスク |
「パッセージ」で販売予約の受付を開始
今回の試乗車を用意してくれたのは、ホンダの海外モデル、逆輸入車でおなじみのパッセージ。試乗車と同じABS付きのシルバーは38万5000円、ブルー、レッド、ブラックのABSなしは36万5000円で、各色5台ずつ、合計限定20台の予約を受け付けている。
文:太田安治、国友愛佳、オートバイ編集部/写真:南 孝幸