文:竹山ケンタ/写真:西野鉄兵
ホンダ「レブル1100DCT」街乗りファーストインプレッション
想像よりも軽くて乗りやすい!
大型リッタークラスのクルーザーを目の前にして、昔ながらの丸型ヘッドライトとパイプフレームの上に載せられたタンクに無骨な雰囲気を感じた。
マッシブな存在感のある車体に「やや重そうだなと」と思って跨った。引き起こした瞬間……軽い!
ハンドル・シート・ステップの3点は、レブル250/500を踏襲していてコンパクトにまとめられている。ポジションがゆったりしているのも同じだ。レブル250/500に対してタンク幅とシート幅、それにクッションのボリュームが増しているが、スタイルバランスがいい。
走り出すとシートの座り心地はかなり快適で、クッションボリュームの余裕から高級感も感じられる。
エンジンは、大排気量の2気筒らしく重厚で迫力のある排気音だ。低回転からピックアップがよく、フラットなトルク特性は扱いやすくてリッタークラスに初めて乗るライダーにもオススメできる。
発進から2気筒エンジン特有のパルス感があり、エンジンの鼓動を心地よく感じられるし、街乗りで常用する5000rpm以下で不快な振動はほとんど感じなかった。
DCTはドライブモードでもマニュアルモードで操作しても変速ショックはほぼなくて機械的にも秀逸だ。変速プログラムの制御にも違和感はない。
マニュアル操作時の反応はとてもリニア。「UP」の変速はスムーズで、「DOWN」のときにはしっかりとブリッピングの制御が入る。ライダーの運転操作に対する追従性が高次元でバランスされている。
DCTの変速特性は3段階のモード選択が可能で、走行環境に合わせて簡単に変更できる。「どうしてもMTじゃなきゃダメ!」って人以外はDCTモデルの選択も全然アリだと思う。
真っ黒にコーティングされたインナーチューブの見た目が特徴のフロントフォークは、作動がなめらかでストローク感があり、細かな路面のギャップにもよく追従してくれて吸収性は良好だ。
リアのサスペンションももちろん吸収性はいいのだけど、レブルシリーズのフラッグシップらしく弟達とは違うピギーバックタイプを採用している。しっとりとした減衰感を感じる落ち着きがあって、なんでも受け止めてくれそうなくらいな器の大きさを感じた。
前後タイヤは吸収性もよく、街乗りでもほどよくコシのある潰れ感で安心できる手応えだ。
最小回転半径のはなし
最小回転半径がレブル250とレブル500はともに2.8mなのに対し、レブル1100は2.9m。
これが何を意味するかと言うと、「いまレブル250/500に乗っているライダーは、ほとんどそのままの感覚でUターンとかもできちゃうよ」ってこと。
中型車から大型車へのステップアップの際に、どうしても車格が大きかったり重かったりして「扱いにくそう……」っていう苦手意識のある人もいると思うけれど、心配しなくていい。レブル1100は、ちゃんとレブルなのだ。
参考までに、同じホンダの大型車の最小回転半径(一例)を記しておく。CRF1100Lアフリカツインは2.6m、CB1100・CB1300は2.7m、CB1000R・NC750Xは3.0m。※いずれもカタログスペック。
ハンドリング ~魔法の28°~
レブル1100DCTで走り出した瞬間、思わず声が漏れた「あ、一緒だ」。レブルシリーズのカタログスペックを見てみると、全モデルでキャスター角は28°になっている。
一般的にクルーザーモデルは、キャスター角30°以上が主流となる。つまりレブルは、ロー&ロングなクルーザーらしさを持ちながら、キャスター角が起きている。
多くのクルーザーは、キャスター角を寝かせることで、直進安定性を高め、クルージングでの快適性を重視している。それに対し、レブルが狙ったのは、ハンドリングの軽さ。すなわち市街地での扱いやすさや、ワインディングロードでの走りやすさなのだろう。
ちなみにスポーティなハンドリングを求められるスポーツモデルでは、キャスター角25°前後が採用されることが多い。
まとめ
レブル250とレブル1100DCTを比べると、車重は+62kg、ホイールベースは+30mmとなる。ハンドリングに適度な重みを持たせつつも、安定感があってクセがない。クルーザーとスポーツモデルの間を狙ったと伺えるレブルのハンドリング性能は、シリーズを通して完成度が高い。
いま普通自動二輪免許でレブル250に乗っている人にとって、大型にステップアップしたときに、レブル500とともにレブル1100もあるというのは、とても幸せなことだと思う。恋人や家族で大小レブルシリーズに乗る、そんな素敵な光景も今後ツーリングスポットで見かけることになるだろう。
文:竹山ケンタ/写真:西野鉄兵
ホンダ「レブル1100」「レブル1100 DCT」主なスペック&価格
※《 》内はDCT仕様車
全長×全幅×全高 | 2240×850《830》×1115mm |
ホイールベース | 1520mm |
最低地上高 | 120mm |
シート高 | 700mm |
車両重量 | 223《233》kg |
エンジン形式 | 水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒270°クランク |
総排気量 | 1082cc |
ボア×ストローク | 92×81.4mm |
圧縮比 | 10.1 |
最高出力 | 64kW(87PS)/7000rpm |
最大トルク | 98N・m(10.0kgf・m)/4750rpm |
燃料タンク容量 | 13L |
変速機形式 | 6速リターン《6速DCT》 |
キャスター角 | 28゜ |
トレール量 | 110mm |
タイヤサイズ(前・後) | 130/70B 18M/C・180/65B 16M/C |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・シングルディスク |