今のところ天候は安定、な開幕戦
まだまだコロナ禍が油断できない状況ではありますが、いよいよ全日本ロードレースが開幕を迎えました。舞台となったツインリンクもてぎは、開幕戦ということで木曜日から走行がスタート。安定した天候に恵まれ、JSB1000/ST1000/ST600/J-GP3/JP250の5レースが開催されました。
きょう土曜日はJSB1000のレース1と、全日本選手権とは別枠の「MFJカップ」として開催されているJP250の決勝レースが行なわれました。
JP250っていうのは、2016年スタート、今年で6シーズン目を迎える、ご存じ市販250ccスポーツを使ったプロダクションクラスで、ホンダCBR250RR、ヤマハYZF-R25、カワサキNinja250らがエントリーしています。ライダーは国内(ナショナル)ライセンスも国際(インター)ライセンスも出場OKで、レースは個別表彰、インタークラスとナショナルクラスが混走するレースです。
2021年は、ここにカワサキ4気筒250ccスポーツであるNinja ZX-25Rが出場OKとなって、2気筒vs4気筒の戦いがスタートするという節目の年なのです。数シーズンを通じて完成されてきた2気筒が速いのか、それとも“超高回転”4気筒が速いのか――。そんな興味が加わったシーズンとなったのです。
まだまだ発売されたばっかりのモデル、しかもレース出場OKとなったのも年末でしたから、4気筒勢はまだまだ準備不足。この開幕戦には、つくばのレーシングガレージでおなじみの、豊田浩史率いるD-REXから2台がエントリー。ほか有力チームのいくつかも、現在進行形でNinja ZX-25Rのレーシングバージョンを作ってる、ってウワサもちらほらパドックを駆け巡ってますね。
木曜に行われた特別スポーツ走行1回目では、中村龍之介(ENDLESS TEAM SHANTI)、石井千優(千葉北ポケバイコースTeam N-PLAN)、篠崎佐助(TEAM TEC2 & YSS)が、2回目では中沢寿寛(i-FACTORY & Mガレージ)、石井、篠崎がトップ3。
明けて金曜の走行では、午前に篠崎-石井-中村、午後には鈴木悠大(キジマKISSレーシング)、岡部怜(Team i-FACTORY)、石井がトップ3。この辺のメンバーがレースをリードしていく存在になりそうな感じでした。
ちなみに18年シーズンからのインタークラス3連覇チャンピオン、「絶対王者」(ってぼくが言ってるだけだけど)こと笠井悠太は、昨シーズン最終戦、予選で負ったケガが完治しておらず、開幕戦を欠場。この後もけがの回復具合を見ながらで、出場は未定なんだそうです。その笠井にかわって開幕戦にエントリーしたのが、かつて全日本を、それも2ストロークマシン時代のGP125クラスから走っていた篠崎佐助です。
篠崎は2014年にST600を走ったのを最後に、しばらくレース界から距離を置いていたんですが、笠井が出場できないことになり、白羽の矢が立った、と。ちなみにGP125時代に、篠崎はTEC2からエントリーしていましたから、その縁もあってのオファーだったようです。
「しばらくレース界から離れて、就職して結婚して子供が生まれて、って生活をしていました。もちろん、その間もレースの情報は耳に入っていたし、あぁ久々にレースやりたいなぁ、って気持ちはずっとあったんです。そんなときにテック2さんから誘ってもらって、テック2のマシンなら心配ない、信頼してるし、って復帰を決めたんです。今年は仕事先とも相談して時間をもらって、JP250にフル参戦しようと思います!」と篠崎、いやサスケ、て呼んだ方がしっくり来ますね。ちなみにサスケ、1993年生まれ、マルク・マルケスと同い年の現在27歳! 全日本デビューの頃は中学生だったんじゃない?? こんなレース界への復帰も大歓迎です!
帰ってきたサスケ 開幕ポール奪取
土曜午前に行なわれた公式予選では、そのサスケがポールポジションを獲得。2番手にナショナルクラスのキジマ鈴木、3番手にiファクトリー中沢が入りました。鈴木は昨年までのYZF-R25をCBR250RRに乗り換えての初戦、中沢は去年のこのもてぎ大会、雨のレースで終盤までトップ争いをしながら転倒、ってレースでしたね。
1Dayで行なわれるクラスだからして、決勝レースも土曜の夕方。天気はずっと晴れていて、時折ぶ厚い雲がかかるようなコンディションで、こりゃ明日は……いや、言うまい言うまい。
スタートで飛び出したのは、キジマ鈴木にTEC2サスケ、サスケがホールショット、2列目5番グリッドから田中敬秀(7cエムズホーム+NTRセクレテール)が好スタートを切りました! 田中は2020年、ナショナルクラスチャンピオンから2021年にはインタークラスに昇格しました。
トップグループは、キジマ鈴木とTEC2サスケが接近戦、後方にシャンティ中村、iファクトリー中沢、NTR田中、N-PLAN石井らがつける展開。このへんが後方を引き離して5~6台のトップグループを形成します。
周回は10周。みんなJP250クラスの猛者ですから、この接近戦からうかつに抜け出さないんですね。相手の出方を見ながら、逃げられるようなら逃げるけれど、誰かの後ろにくっついて――って展開が続くことになります。サスケが、中沢が、鈴木が先頭に出るも逃げるほどのスピードを見せられず、一進一退。最終ラップの最終コーナーで先頭に立てばいい、っていうMoto3みたいな息詰まるバトルが続きました。
そして、勝ったのはサスケ! 最終ラップのダウンヒルから90度コーナーで2番手にいて、セカンドアンダーブリッジを抜けたところでアウトから中沢をパス! 2位に中沢、3位に中村が入りました。
ナショナルクラスはきっちりこの集団について、ラスト2周ではトップに立ってみせた鈴木がクラス優勝、2位に2020年ナショナルクラス2勝を挙げた梶山采千夏(RankUp WingStore)、3位に豊原由拡(TEAM TEC2 & 24Service & YSS)が入りました。
篠原佐助(TEAM TEC2 & YSS) 予選:1位 決勝:インター1位
「TEC2から走ることになって、まず岡山のエリア戦に出たんです。そこでも勝てて、うまく波に乗れた走れたな、って感じです。茂木を走るのも何年振りだろう、7年とかぶりで、事前練習から少しずつ走りを取り戻しながら決勝にたどり着いた感じですね。レースは、絶対に逃げられないとは思ったから、とにかくトップグループにいて、最後の最後にだけ前に出られたらい、って思って走ってました。何とか思う通りの展開に持ち込めてよかったです!」
鈴木悠大(キジマKISSレーシング) 予選:2位 決勝:ナショナル1位
「今年からニューマシンだったんですが、チームがきっちり準備をしてくれて、乗り換えもスムーズにいきました。予選でもレコードを出せて、いい勢いで決勝に臨めたんですが、決勝レースは気温が下がったのか、路面温度が低くなったのか、いちばん走りがうまく行かずに、結果まわりのみんなもペースが速くなかったです。その中でも逃げられなかったし、最後の最後にトップに立とうと思っていたんですが、それも不発になっちゃいました。ナショナル優勝はうれしいけど、ちょっと悔しいかな」
ちなみに注目のNinja ZX-25Rは、まだまだ準備不足ですね。まずはレーシングマシンにするキットもないし、スぺアパーツもなし、タイヤも合わないし、ファイナルもセッティングパーツがなく、よくぞ開幕戦に出てきたなぁ、って感じです。その意味でD-REXグッジョブ! 次のレースからぐいぐい完成度を上げてくる存在になると思います!
写真・文責/中村浩史