ワンオフ連発で完成したモンスタートルクマシン
「元々この車両のオーナーさんはヤマハVMAX1200を1400cc化したり、後継の1700もターボ化したりして楽しんでらしたんです。それが事情から他社モデルに乗っていたんですけど、パワーを初めとして、物足りないと。それでもう1度VMAX1200に戻られたんです。
でも今までの経歴からすると、1200でも非力に思えたそうです。それで60歳超えて、“これが最後のバイクになるかなあ”と相談されて。じゃあ、“私がおごる(笑)から、誰もやってない、世界のどこにもない、ロイヤルスターのエンジンを載せましょう”って作ったんです」
楽しそうにこのバイクのバックグラウンドを教えてくれるエスパーの小宮さん。VMAX1200誕生の元となったクルーザー、ベンチャーロイヤル。その発展型のXVZ13ロイヤルスター(VMAX1200と同じ70度挟角の、1294ccエンジン)だから、写真を見ればすっきり収まったように思える。
「いやいや、それが! です。エンジンはフレームに当たる、ジェネレーターはVバンク内に入らないなど、近いモデルだからポン付け、なんて夢みたいな話(笑)。キャブレターにしてもVMAXのは合わなくて。たまたま私が持っていた2連のFCRにインマニを作って何とかできましたが、この車両を見て“お、付きそう”なんて思わない方がいいですよ」
いかにもカスタムらしい手順と苦労で出来上がったこの仕様だが……。
「ロイヤルスターがクルーザーですからパワーも100psそこそこかなと思って試乗してみたら、びっくり。とにかくトルクがすごいんです。VMAXにプラス100cc分の余裕があって、ポートが細く長いのも効いてるんでしょう。ターボとはまた違って、余裕どころじゃない押し出し感。外観も空冷風フィンが付いて、面白い乗り物になって、オーナーさんも喜んでくれました。でも、この仕様はもう作れないなあ」
数あるパワーチューンをこなす小宮さんにして、この感想。期せずして空前絶後の1台、これぞカスタムを地で行くような1台となったのだ。
▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!
Detailed Description 詳細説明
GIVI製のバイザースクリーンを追加して快適性を高めている。フロントマスターシリンダーはブレンボ・ラジアルポンプだ。
センター単眼式の速度計、またタンクカバー上に置かれるエンジン回転計やインジケーター類のレイアウトは、VMAX1200純正そのままだ。
外装はVMAX1200の'05年北米仕様純正のレッドで、タンクカバーには隠しフレアパターンとVMAX20周年記念エンブレムが見える。
前後分割式のシートやテールのアルミグラブバー、前半部のダミーエアダクト等やサイドカバー等も、VMAX1200のノーマルパーツをそのまま使う。
空冷風フィンの付いたシリンダーを持つエンジンはVMAX(VMAXは水冷らしくすっきりとした外観だ)の1199ccから約100ccアップした、ロイヤルスターの1294cc・70度V4エンジン。フレームを初めとした各部への干渉を避け、文字通りにワンオフを駆使して積まれている。
ダミータンクカバーを外して現れるのは2連のダウンドラフト・FCRキャブレターとラジエーターリザーバータンク(こちらは純正状態で付いている)。FCRはたまたまショップにあったもので、見る限りスムーズに付いているようだが、マニホールドをワンオフ、装着した。
Φ43mmフロントフォークはVMAXノーマルで、フロントキャリパーはブレンボ4ピストンに、またディスクはウェーブタイプに換装している。
4本出しのマフラーはエスパーオリジナルで、VMAXのV4エンジンらしさをサウンドでもトルクでもサポートする。もちろんV4のロイヤルスターにもマッチし、ここではスタイリングを上質にするのにもひと役買っている。リヤブレーキキャリパーもブレンボ4ピストンだ。
2.15-18/3.50-15インチの変則ディッシュホイールやシャフトドライブ+パイプのスイングアーム等の足まわりは、後期VMAX1200のノーマルがベース。リヤショックはオーリンズに換装される。完成した状態を見ると、普通にこのようなエンジンを積んだ車両にすら感じられる。