文:太田安治、木川田ステラ、オートバイ編集部/写真:森 浩輔、南 孝幸
ホンダ「フォルツァ」インプレ・解説(太田安治)
走り出せばすぐに分かる上質なレスポンス
国内250ccスクーターの「顔」ともいうべきフォルツァが、フルモデルチェンジを受けたのは2018年5月。それから3年足らずで、新設計エンジン搭載やフレームの部分的な設計変更などを行った新型が登場した。
2018年モデル以前は、ライダーが車体に沈み込むようなライディングポジションで操縦性もクルーザー的な穏やかな味付けだったが、2018年モデルからホイールを前15インチ、後14インチに大径化。ホイールベースは35mm短縮し、シート高を65mm高くして俊敏なハンドリングを得た。
スクーター需要の大きいヨーロッパでは荒れた路面の市街地を自在に駆け抜けられるハンドリング性能が必須。大径ホイール化することで、フォルツァはグローバルモデルに相応しいキャラクターへと生まれ変わったということになる。
今回の新型はキープコンセプトで、完全新設計のスクーター用エンジン『eSP+』を搭載したことが最大のトピック。ロングストローク化に加え、フリクションロスも低減したという。これによる乗り味の変化はアベレージ速度の低い市街地で実感できる。
前モデルよりも発進加速が穏やかで、スロットル開度が小さい低速域での加減速がスムーズ。渋滞路も走りやすく、Uターンのような微速でのコントロールも気を使わずに済む。
スロットル全開のフル加速では前モデルより若干高めの6200回転あたりをキープ。動き出しが穏やかなので実感しにくいものの、70km/hまでの加速は前モデルより力強い。
高回転域でのパワーの盛り上がり感はないが、動き出しからトップエンドまで分厚いトルク感を保ったまま加速する特性。全回転域に渡って振動が減っているので高速道路クルージングの快適性も上がっている。
新型はフレームの一部が新設計とされたが、市街地走行ではハンドリングの変化を感じることはなかった。資料によるとフロント分担荷重が増えているとのことなので、高速道路での直進性向上に寄与しているのだろう。
今回は試乗中雨に降られたが、絶大な威力を発揮したのが可動域が40mm増えた電動スクリーン。僕の体格だと少しだけ頭を下げればヘルメットのシールドに水滴が付くこともなく、ジャケットもほとん濡れなかった。
各種の安全装備、便利な実用装備を満載し、通勤通学からツーリングまでに幅広く対応するフォルツァ。日本が世界に誇る中型スクーターとしての完成度はさらに高まった。