文:太田安治、木川田ステラ、オートバイ編集部/写真:森 浩輔、南 孝幸
ベネリ「TNT249S」インプレ・解説(太田安治)
ビッグバイクのような手応えと充実感が魅力
「TNT」はベネリのスポーツネイキッドのシリーズ名。現在は125ccと250ccの2機種がラインアップされている。
並列2気筒エンジン、トレリスフレームにリンクレスのモノショック、丸みを帯びた外装というパッケージングは欧州で人気となった同社のTNT302S譲り。カワサキのER-6nにも似た雰囲気があり、およそ250cc車らしからぬ存在感がある。
驚いたのは204kgという車体重量だ。同じ並列2気筒エンジンを持つZ250の164kg、MT-25の169kgと比べるとかなり重く、取り回しではミドルクラスのようにドシッとした手応えがある。
この車重に約30馬力のエンジンの組み合わせということで、試乗前はアンダーパワーが気になったが、走らせてみると数値からは判らない意外なフィーリングがあった。
スロットルに対するレスポンスは穏やかだが、危惧していた低回転域での頼りなさはなく、ゼロ発進時もエンジン回転やクラッチ操作に気を使う必要はない。
ライバル車の2気筒エンジンは高回転でパワーを稼ぐ180度クランクだが、このTNTは360度クランクで低中回転域から力強さを発揮する。街乗りはもちろん、峠道でも頻繁なギアチェンジが不要で、スムーズに走れるのが特徴だ。
最も加減速の反応がいいのは9000回転から1万1000回転。ギュワッ! とパワーが盛り上がる特性ではないが、回転数に関係なく一定のパワーを感じさせ、重低音サウンドを豪快に響かせるので、大排気量車に乗っているような充足感がある。
6速・100km/hは約7200回転。ビリビリした振動がないのでロングランも苦にならない。
204kgという重量に加え、400〜650ccクラスなみの太い前後タイヤを装着しているため、ハンドリングは大型車的。旋回性も穏やかで、バンク角に応じて素直に曲がる。
前後サスペンションは減衰力が高めで加減速時のピッチングが抑えられているが、ギャップ通過時の衝撃が気になるなら、スプリングイニシャルと減衰力の調整機構を活用して弱めにセッティングするといいだろう。
このクラスのネイキッドは軽快感を前面に出したものが中心だが、TNTは1クラスどころか2クラス上の重厚感が魅力。街中からツーリングまでゆったり走りたいライダーにお薦めする。