ホンダ「GB350」とヤマハ「SR400」の価格設定
2021年4月22日についに発売されたホンダGB350。近年ブランニューの新型車がほとんど登場せず、影の薄くなっていた400ccクラスでは久しぶりの完全なニューモデルとして、発売前からすでに多くのライダーの注目を集めてきた。
ミドルクラスのレトロなシングルスポーツという、ほぼ同じセグメントを占めていたロングセラーのヤマハSR400が、まさに40年を越える歴史を閉じるタイミングで入れ替わるように登場したことも、GB350へ関心が集まった一因。しかし先行して公開されていた、そのレトロで端正な佇まいのスタイリングや、新開発されたエンジンをはじめとするメカニズムを見て、ポストSRとして大きな期待が集まっているということでもある。
ここでは、そんな注目の1台であるGB350について、主に価格という点から、その魅力を再検証してみよう。
GB350のメーカー希望小売価格は税込55万円。これはスタイル、メカニズムなどで直接比較される最大のライバルのヤマハSR400ファイナルエディション(リミテッドではない、スタンダードの方)の税込60万5000円に対し、大幅な価格的アドバンテージだ。当然、SRをターゲットに価格設定をするはずだから、後追いの対抗馬としては順当ではある。しかし、単純に低価格だからGBは魅力的だ、というだけではない。
SRは1978年にデビューし、シングルカム2バルブの空冷単気筒でキックスタートのみのエンジンをはじめとする、その当時としてもシンプルなメカニズムがもたらす荒削りだが独特な乗り味、そしてオートバイらしさにあふれる極めてオーソドックスなスタイリングを基本的に変えず、そのことが個性として支持されて現代まで生き残ってきた。基本設計は長らくそのままだったから、開発コストという面では非常に効率が良かったといえる。
しかしその長い歴史のある時点からは、自動車に関するさまざまな基準などが移り変わって、それらに対応するための改良……例えばエンジンのFI化などが必要となっていった。しかし、それもいよいよ限界に達して、今年生産終了となったわけだ。
一方GBは、SRと同じく単気筒で排気量設定も近いエンジンを新規に開発している。しかもオーソドックスなスタイリングに合わせた空冷シングルという点も共通だ。
ところが、このGBのエンジンは最新の排ガス規制であるユーロ5規制をクリアすることを前提に開発された“最新の”空冷単気筒エンジン。もちろんセルスターターも装備しているし、シンプルな単気筒では避けられない大きな振動を抑えるためにバランサーシャフトまで内蔵。乗り味という点で、まったく現代的な高い完成度を備えている。
この新しいエンジンの開発コストだけ考えても、GBの価格設定は驚異的だ。加えてSRにはない、ABSやトルクコントロールまで装備していることも考えればバーゲンプライスといえるだろう。
もっとも、これは日本向けのGBだけでは成立しない。インドなどで販売される、GBの海外向けバージョンであるハイネスCB350やCB350RSも含めた、グローバルモデルだからこそ実現したわけだが。フルサイズの400ccではなく350ccとされた排気量の設定も、実はインドでの税制に合わせた結果だという。
400ccクラスの現行モデルと「GB350」の価格を比較
もっと単純に、SR以外の400ccクラス各車と比較すると、その価格的な魅力が浮かび上がってくる。
絶大な支持を集める400ccクラス永遠のベストセラー、ホンダCB400SF/SBは、CB400SFの最も廉価なモデルでも税込88万4400円で、CB400SBの最も高価なモデルでは税込108万4600円と、その価格はほぼGBの倍に達している。
ホンダCBR400R、400Xの2気筒モデルも税込80万円オーバーだ。SR以外のヤマハ車では、MT-03が税込65万4500円、YZF-R3が税込68万7500円。
カワサキのニンジャ400が税込71万5000円からで、Z400も税込68万2000円。BMW G310RやKTM390デューク、SWMシルバーベースなど、主な外車を見ても価格設定がGB以下のモデルは存在しない。
もちろん、性能や機能といった面でそれぞれ必然の価格なのだが、GBの価格が400ccクラスの中で圧倒的なアドバンテージがあるのは間違いないだろう。
ちなみに250ccクラスの人気モデル、レブル250が税込59万9500円から……実はGB350の価格上のライバルは、400ccクラスではなく250ccクラスなのだ!
まとめ:小松信夫/写真:南 孝幸、西野鉄兵