文:宮崎敬一郎、小松信夫、オートバイ編集部/写真:南 孝幸、森 浩輔
ホンダ「CB1300 SUPER FOUR」シリーズ インプレ・解説(宮崎敬一郎)
目に見えない部分が大きく「正常進化」
長年、このクラスで絶大な人気を誇るだけのことはある。CB1300シリーズは、世代は変われど「BIG1」のイメージは変わらない。美しい塗装、丁寧な造形はオトナを満足させる迫力と高級感を醸し出す。
この新型も外観的に大きな変更はない。大きく変わったのはドライバビリティ制御で、ついにスロットルバイワイヤが採用された。
当然、点火系を含めたプログラムも刷新、パワーモードやトルクコントロール(いわゆるトラコン)も導入している。目に見えない部分での変更だが、これは大きな進化だ。
このCBの巨大なエンジンは、排気量に似合わず非常にピックアップがいい。回転の落ちも早く、慣れないとそれを低中回転域で過敏と感じたりするライダーもいるほどだ。
それにトルクも強烈。今回はそれをもっと多くのライダーが容易に使えるようにするため、その立ち上がり方をキメ細かく制御してより扱いやすくしている、というわけだ。
CB1300シリーズの魅力は「ビッグバイクらしい、豪華でボリューム感ある車体を、ビッグバイクらしいトルク感、重厚感ある手応えを楽しませつつ、容易に軽快にフットワークさせてしまう」能力。
こんな相反するような性能を自然に実現してしまったから、このジャンル、このクラスの定番モデルと言われるほどのヒットとなったのだ。今回の進化で、その「キモ」である扱いやすさがさらに磨かれたのだ。
もっともダイレクトなレスポンスの「スポーツ」モードでも、4000回転以下の低中回転域でのツキがマイルドになった。ただ、力量が落ちたとは全く感じないし、5000~8000回転といった中高回転域ではこれまで同様に素直で力強い。
大きく違うのは「スタンダード」モードで、渋滞路や都市高速を流すようなときに使うアイドリングの少し上から3000回転あたりでの制御。少々ラフなスロットルワークでも、ほとんどショックを生まないレスポンスをする。足回りなどに変更はない。相変わらず峠道でも巨体の割にはよく曲がるし、全ての挙動が自然で把握しやすい。
同時に試乗したSPは、オーリンズの前後サスペンションとブレンボのキャリパーが付く。街中から峠道までスタンダードより乗り心地がよく、スポーティな走りをした時のスタビリティもかなりいい。
設定は同じはずなのに、ノーマルサスのSTDに比べ、トルクコントロールの作動ランプが点く回数も一気に減ってしまう。それだけタイヤがトラクションを失っていないということだ。ただ、決して「スポーツ一辺倒」のサスではない。ここがSPの大きな魅力。後は何をカスタムして遊ぼうか、と悩むほどまとまりが良く、完成度も高い。
今回のモデルチェンジに派手さはないが、熟成度は確実に高まった。これぞまさしく安定の「正常進化」だ。