林道ツーリングを始めようと思ったとき、周りにベテランライダーがいれば頼ることもあるでしょう。でもそれ、ちょっと待った方がいいかもしれません、もしかしたら危険かも! その理由をダカールラリーライダーとして有名なオフロードのスペシャリスト三橋淳さんが教えてくれました。
以下、文・写真:三橋 淳

ビギナーがベテラングループと一緒に林道を走るときの危険性

画像1: ビギナーがベテラングループと一緒に林道を走るときの危険性

先日、俳優の大鶴義丹さんと、日経ビジネス電子版でコラムを執筆中のフェルディナント・ヤマグチさんと3人で林道ツーリングをしてきました。このメンバー構成を見ると、私も義丹さんも30年以上のバイク歴を持つベテランと呼ばれるライダー。そこにポツンと1人、免許取ってまだ1年のフェルさんが混じるという構成です。

これ、正直お勧めしません。

理由は、ベテランのペースと雰囲気に、初心者が合わせざるを得なくなることがあるから。その辺はフェルさんの証言から検証してみましょう。

【フェルディナント・ヤマグチさんの林道デビューの話】

「ギーちゃん(大鶴義丹さん)にね、しつこく勧誘されたんですよ。バイク乗ろうって。オンロードは危ないけどオフロードなら大丈夫って。何の根拠もない説得を受けましてね。同席してた得体の知れない人がいきなり某メーカーに電話してね、初心者に最適だっていうオフロードバイクの広報車を借り受ける話までつけちゃいましてね。もう逃げられないってんで免許取りに行ったわけですよ」

なるほど。初めからオフロード走行のために免許取ったんですね。

「そんな感じですね。で、公道デビューがいきなり林道ツーリングですよ」

公道デビューがいきなり林道ですか!? そりゃまた思い切りましたね。

「え、そうなんですか? 免許取り立てっていきなり林道行っちゃいけないんですか?」

そんなことはないですけどね。一般的な人はいきなりは行かないですからね。

画像1: 林道初心者がベテラングループとツーリングをしてはいけない理由【三橋 淳の林道デビュー講座】

「そうなんですか。でもまぁいきなり行ったんですよ。ギーちゃん入れて3名のベテラン勢と走ったんですがね、これが結構走れちゃって。いい感じじゃんてなったんですよ」

思いのほか簡単だったんですね。

「普通に走れました。気持ちよかったですね。で、調子に乗ってペース上げたら転んじゃってね。それも結構な勢いで」

あー、ありがちですね。ついて行こうとしたんですね。

「そうそう。頑張って走ったら転んじゃって。で、レバー曲げちゃって。怪我はなかったんですけどね」

スキーやってるだけあってスピード感覚はあるんでしょうね。

「そうかも知れないです。でまたギーちゃんに連れてってもらったんですが、これが林道というよりは、なんかもう、荒れてて。初心者だからよくわかんないんですけど、あれも林道なんですか?」

多分違うと思います。

「で、そこでも頑張って走ったら、借り物のバイク崖から落しましてね。もうボロボロ」

あちゃー。

「ギーちゃんが、スポーク4本も折れるの初めてみたって」

ほとんど事故車ですね。

「広報車だったんでメーカーにめちゃくちゃ怒られました」

以上がフェルディナント・ヤマグチさんの証言でした。

でもベテランチームと走るとよくある話です。ペースが早くてついていくのがやっと。でもみんなを待たせたら申し訳ない。で無理して転ぶ。もちろん全部のベテラングループがこうとは言いませんが、あるあるです。

実際ベテランライダー達が歩んできた道も、そんな感じなんですよ。

画像2: ビギナーがベテラングループと一緒に林道を走るときの危険性

ここで大鶴義丹さんの証言を頂きましょう。

【大鶴義丹さんの林道デビューの話】

「僕は高校生の時ですね。もう30年以上も前かな。当時のトレールバイクでトンガったやつ手に入れて、林道走ってましたよ。東京から近い林道をね。そしたら、他のライダーが煽ってくるんですよ」

えええ? そんなローリング族みたいな林道ライダーいるんですか?

「当時はね。林道にいっぱいいたんですよ。ギャラリーコーナーなんかもあってね」

林道でですか……。

「で、見かけねー顔だなってんで煽られてぶち抜かれたりしたんです」

まるで漫画みたいな話ですね。

「まぁ僕も負けん気が強かったんで、必死になって追いかけるわけですよ。そしたらその先輩ライダーが、お前ガッツあるな、一緒に来い! って、それから色々面倒見てもらったりしたんですよ」

林道でも走り屋のサクセスストーリーがあったとは知りませんでした。

でもまぁ昔の人は、こうやってオフロードにハマっていったんですよ。わかります。わかりますよ。今のベテランと言われている人のほとんどがそうなんじゃないでかね。

だからベテランに連れて行かれたフェルさんも同じ道を歩んだという訳です。もっともフェルさん自身が体育会系の体質なので、その方が性に合っていたのかも知れませんね。その後どっぷりハマってシゴかれるバイクライフを送っているみたいです。

でも世の中にはこんなノリがあふれています。それがすごく嫌なんですよ。だって怖いでしょう? そりゃそうですよ。

だからだと思いますが、実はね、私も初心者ツーリングに同行するというと、大抵嫌がられます。「三橋さんみたいに走れないから」とみんな口を揃えていうわけです。

雑誌や動画で激しい走りを見せているので、そう思われるのも仕方のないことかも知れない。

画像3: ビギナーがベテラングループと一緒に林道を走るときの危険性

いやこれね。撮影用の走りですから!

普段の林道ツーリングはのんびり走ってますから。ABSもトラクションコントロールも入れっぱなし。ゆるりと楽しんでいるんですよ。

画像4: ビギナーがベテラングループと一緒に林道を走るときの危険性

私の林道へのファーストコンタクトは、義丹さんやフェルさんの体育会系のノリではなく、もっとフレンドリーでした。

私の場合は東京と埼玉の間に湖があって、そこの林道で遊んでたんです。小さな広場があって、そこにライダーが集まってましたけど、どちらかというとおしゃべりがメイン。気が向いたらその広場で八の字して遊んだりした程度で、早い遅いとかあんまり気にしないで遊べる環境でした。だってレースするっていうのが嫌いでしたからね。

それがどうしてダカールラリーに繋がるのかはまたの機会に話すとして、そういう原点があるから、林道ツーリングで早い人と行きたくないという気持ちはよくわかる。

じゃあ林道ツーリングに行きたい初心者はどうすればいいんだろう?

This article is a sponsored article by
''.