ホンダ「スープラGTR150」とは?
前回の記事を書くためにCB150R Streetfireについて調べながら、インドネシアのアストラ・ホンダのWebページでインドネシア国内でのホンダのラインナップを見ていると、PCXシリーズやモンキー、CT125やCBR250RRのように、日本で販売されてるものとほぼ同じモデルもある。
しかしインドネシア独自のモデル、しかもCB150R Streetfire以上になかなか個性的なモデルが存在していた。中でもADV150にも似たシャープなスタイリングに眼を惹かれた1台がSupra GTR150だ。
アストラ・ホンダによるカテゴリー分類では、「Cub」ということになっているこのSupra GTR150、現行モデルは2019年に登場。
しかしインドネシアでも販売されているスーパーカブC125やCT125のようないわゆる純粋な「カブ」の血統ではない。アンダーボーンフレームながらスポーティさを追求したスタイリングと、17インチのキャストホイールやディスクブレーキを備えるなど、独自の進化を遂げ、東南アジア各国で絶大な注目を集めるアンダーボーンスポーツモデルの1台。アストラ・ホンダでは他にも、Revo X、Supra X 125 FIを販売している。
しかしその中でも、Supra GTR150は破格の存在だ。それは価格を見れば明白で、Supra GTR150は2428万ルピア!(ちなみに5月11日現在1ルピア=0.0077円)。1845万5500ルピアのSupra X 125 FIと比較しても600万ルピア以上の価格差がある。参考までに前回取り上げたCB150R Streetfireは2970万ルピア。日本でも販売されているモデルでいえば、ADV150は3518万6000ルピアだ。
このようにアンダーボーンスポーツのSupra GTR150が、ロードスポーツのCB150R Streetfireにかなり近い価格となっているのは、それだけの理由がある。
インドネシアに限らず、東南アジアのアンダーボーンスポーツモデルの多くは、実用車としての信頼性の高さで信頼されているスーパーカブ系のメカニズムをベースに発展してきた。現在のインドネシア・ホンダでも、Revo X、Supra X 125 FIは、水平シリンダーの4スト空冷単気筒エンジンを積んでいるという点では、スーパーカブの系譜に連なるモデルだといえる。
しかし、Supra GTR150のメカニズムは完全に別系統に属する。なんせ搭載されているエンジンは、CB150R Streetfireと同じ、水冷の149ccDOHCシングル。6速ミッションで最高出力16.3 PSというから、スペック上もほぼCBと変わらない。
フレーム形状も全く異なるツインチューブフレームで、リアサスもモノショックを採用。しかも車重はCBよりも10kg以上軽い。エンジンもシリンダーが立っているためにアンダーボーンモデルの特徴であるセンタートンネルの位置は非常に高く、もはやアンダーボーンというか、通常の位置に燃料タンクがないだけのロードスポーツというべき存在。価格も当然、CBに近くなるわけだ。
アンダーボーンスポーツの歴史を振り返ると、かつてはスーパーカブ系エンジン搭載モデルとは別に、ハイパワーの上級モデルとして2ストエンジンを積んだモデルが人気を集めていた。もちろん排気ガス規制の問題もあって、すでにハイパワーな2ストアンダーボーンスポーツは絶滅している。
そこでラインアップに開いた最上級アンダーボーンスポーツという穴を補完するように、CB150R系の水冷DOHCエンジンを使って用意されたSupra GTR150というわけだ。
現地では大人気のようで、アジア選手権をはじめとするレースでも活躍していて、チューニングパーツ、カスタムパーツも豊富。でも、日本ではその姿を見ることはない、ほとんどの人が存在していることすら知らないというSupra GTR150。そんなモデルも世界にはあるんですねぇ。
文:小松信夫
ホンダ「スープラGTR150」の主なスペック
全長×全幅×全高 | 2025×705×1105mm |
ホイールベース | 1284mm |
シート高 | 780mm |
車両重量 | 119kg |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ単気筒 |
総排気量 | 149cc |
ボア×ストローク | 57.3×57.8mm |
圧縮比 | 11.3 |
最高出力 | 16.3PS/9000rpm |
最大トルク | 1.45kgf・m/6500rpm |
燃料タンク容量 | 4.5L |
変速機形式 | 6速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 90/80-17・120/70-17 |
ブレーキ形式(前・後) | ディスク・ディスク |