文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝
ヤマハ「マジェスティS」インプレ・解説(太田安治)
鋭い眼光に進化したマスクとダイレクト感ある走りが魅力
軽二輪スクーターは250ccのフルサイズ車から150cc程度のコンパクトサイズ車へと人気の中心が移ってきた。このクラスで高速道路に乗り入れるユーザーは少ないから、軽く小さな車体で取り回しやすく、価格も抑えられたコンパクト車に魅力を感じる堅実なユーザーが増えているということだ。
そうしたコンパクト車の中でも高い評価を得ているのがマジェスティS。
現行型はLEDヘッドランプとLEDポジションランプの採用、ウインカーデザインの変更などでフロントカウル回りのデザインを一新。フロントポケットにも12V電源ソケットを装備している。
155ccのエンジンは3000回転弱で遠心クラッチが繋がり始めるため、発進がスムーズで静粛性も高い。極低速走行でもクラッチが頻繁に切れたり繋がったりということがないのでギクシャクせず、渋滞路走行も楽だ。
そしてフルスロットルでの加速では最大トルクを発生する6000回転台をキープして15馬力とは思えない加速力を発揮する。
これは自動変速の設定が巧みなだけではなく、145kgという軽い車重によるところも大きいが、結果的に市街地での発進加速性能は250ccフルサイズ車よりも強力。
このエンジンは単気筒ながら振動が少なく、全回転域に渡って軽やかに回るのでクルージング中の快適性も秀逸。
最高速は250cc車ほどではないが、制限速度80km/h以下の都市高速なら余裕を持って流れに乗れ、通勤・通学だけではなく、一般道+ときどき高速道路といったツーリングも得意だ。
だが、ストリートユースで感じるマジェスティS最大の魅力はダイレクト感のあるハンドリング。高めのフレーム剛性とやや硬めのサスペンションセッティングにより、ヨーロッパや台湾ブランドのスクーターにも似たフィーリングで、クイックな操作にも遅れずに反応するし、タイヤのグリップ状態も掴みやすい。
ただし乗り心地やギャップ通過時、横風を受けたときなどの外乱収束性と、ライディングポジションの余裕、車格的な押し出しの強さはフルサイズ車に分がある。
コンパクト車のメリットが光るのは、コミューター性能とスポーティ性の高さ。フルサイズ車が豪華なミニバンなら、コンパクト車はスポーツワゴン。用途と好みをハッキリさせれば迷うことはないだろう。