以下、文・写真:三橋 淳
宮城光さんのバイクはホイールベースが異様に長かった!
宮城さんが持ち込んだのはドゥカティのデザートスレッドという、スクランブラーでよりオフロードを意識したモデル。に、アメリカからロングスイングアームを持ち込んで、フロント21インチ、リア18インチに改造した、いわばスペシャルモデル。
「三橋さんこれね、ウナギイヌみたいなんですよ! ホイールベース1600mm! そんなバイク見たことあります?」
写真で見てもホイールベースが長いのが伝わると思う。調べてみたら、カワサキのバルカン800が同じ1600mmだった。アメリカンと同じとは! ちなみにCRF1100Lアフリカツインは1575mm、ゴールドウイングが1690mmだ。
「宮城さん、そのカスタムね、おそらくアメリカのデザートレースを走るために、アメリカのビルダーが作ったものだと思うんですけど、アメリカのデザートのまっすぐな道をかっ飛ばすためのカスタムだと思うんです。対ギャップ性能の向上っていうんですか? そういう狙いがあると思うんですけど、日本のタイトな林道だと、確かに曲がりずらいでしょうねぇ」
「そうなのよ。前に座ったらいいのか、後ろに座ったらいいのか、ようわからん!」
「そういうのがまた面白いんでしょ? わかります。わかりますよ。クセのあるバイク乗りたくなるの。あ、でも僕のアフリカツインは、外見はいじってますけど走行性能部分は全くいじってませんから、ノーマルですよ。ノーマル」
「僕のもノーマルです」とテクニクスの井上さんが乗っているのはヤマハのテネレ700。
「何言ってるんですか? 自分ところでスペシャルサス作って入れてるバイクをノーマルって言いませんよ。スタンダードと全然乗り心地違うクセに」
「はい、乗り心地いい感じです」
「僕もね、アフリカツインのサスペンションいじろうかなぁと思うことも、あるにはあるんですよ。リアのスプリングが2人乗り前提になているので林道走る分には硬いから、ちょっと柔らかくしたいなぁとか。逆にフロントフォークは沈み込み量を減らしたいなぁとか、あるんですよ。でもいざ林道走ってると、このままでいいかなぁって満足しちゃう。で、結局いじらずです」
止まりたがらないおっさん2人を何とか止める
林道を走りながら、B+COMで会話しているおっさん3人。なかなかいい景色の中を走っているのに、一切止まらず、ただひたすら走る。
「休憩とかしなくていいんですか?」
「僕は大丈夫です」
「写真とか撮らなくていいんですか?」
「写真は思い出の中に取っておく派なんです」
という感じで全く止まる気配なし。
「いや、僕が写真撮りたいんで。せっかくなんでwebオートバイで紹介したいし」
「じゃあ止まりましょう」
こうでもしないと止まらない。で、撮った写真がこれ。無理やり止まって写真撮ってます。
「そういえばお腹空いてないんですか?」
「朝たんまり食べたんで昼なくても大丈夫です」
「行けるとこまで行っちゃいましょー!」
「それはそうと水とか食料とか、なんか持ってます?」
「持ってませーん!」
「持ってませーん!」
だめじゃん!
飯食べないのはいいけれど、非常食を持ってないのはよろしくない。なんかあっても1日くらい食べなくても平気だけれど、そういう問題じゃない。空腹は判断力を鈍らせて間違った行動を起こす。特に我らおっさんはお腹空いてイライラして喧嘩にもなりかねん。
「この先のガソリンスタンドで給油しつつ人間の補給もなんか探しましょう」
集落にある小さなガソリンスタンドは、おじさん1人がやっているこじんまりとしたものだった。
「今時期はバイクいい季節だよね~。隣町から来たのか。あの林道最近ようやく開通したからね。崖崩れで酷かったけど、綺麗になって走りやすかったろう」
「おとうさんもしかしてバイク乗るんですか」
「KDX220持っててさ、この辺じゃオフロードバイク持ってれば遊ぶのに事欠かないからさ」
こんなところでバイク談義が花咲くなんて。一時期のバイクブームにで日本人の大半がバイクに乗ってたと言っても過言じゃない時期があっただけに、バイク経験者は今でも多いんだな。
一緒に写真撮りましょうよ! と声かけたら「俺はいいよ、3人の写真撮ってあげるよ」と言って撮っていただいたのがこの写真。みんないい顔してます。
さて、バイクも人も燃料補給したら、再び林道へ。集落をつなぐように走る林道は、時折素晴らしい景色を見せてくれる。が、雲行きがだんだん怪しくなってきた。晴れてはいるが、雲がだんだんと灰色がかっててきたからだ。聞けばこの頃、東京では大雨だったらしい。
ちなみに、この写真。膝が汚れているのはころんだからじゃなく、地面に膝をついて写真を撮ったから。転ばないペースで走るのが、大人のライダーの嗜みなのです。
話を戻そう。雲行きが怪しくなってきたのと、本日の宿、高峰温泉は17時までにチェックインしなければならない。で、その宿は標高2000mにもなる山の上。天気が荒れれば濡れて相当寒くなるぞ!
ということで、15時には林道を離脱し、一直線に高峰温泉に向かったのであった。
文・写真:三橋 淳