燃費の向上や騒音の軽減を図れるアイドリング・ストップ機構。バイクの世界ではホンダが20年以上前から積極的に開発をすすめ、その性能を日進月歩で高めています。最新型のPCXで街中を走ったときに感じた疑問をホンダの担当者の方に尋ねてみました。
レポート:西野鉄兵

ホンダ新型PCXで通勤してみて感じた「アイドリングストップ・システム」の進化

画像: ▲ホンダ PCX 2021年モデル

▲ホンダ PCX 2021年モデル

ホンダの125ccスクーターPCXの2021年モデルで通勤ライフを送っていたときのこと。

街中を走っていて、振動が少なくなったとか、よりいっそう機敏になったとか、ブレーキがよく利くとか、新型PCXの特長にはいろいろと驚かされました。

そのひとつがアイドリングストップ時の始動性の向上。「あれ、立ち上がりが早くなってる?」と感じたのです。

そもそも「アイドリングストップ・システム」とはどういった機構なのか。その歴史も調べてみました。

「アイドリングストップ・システム」とは?

画像: ▲アイドリングストップ作動時、PCXの場合は「A」の緑の表示が点灯します。

▲アイドリングストップ作動時、PCXの場合は「A」の緑の表示が点灯します。

クルマでは軽自動車でも標準装備が当たり前のアイドリングストップ・システム。信号待ちなどの停車時に、自動的にエンジンが停止する機構です。

燃費の向上が期待でき、停止時に排気ガスを出さないため、環境にも優しい。騒音が抑えられるのも嬉しいポイント。住宅が近い場所での信号待ちは、気まずいですからね。夜間はとくにありがたみを感じます。

画像: ▲PCXのアイドリングストップ・システムは右手親指でオン・オフを切り替えられます。

▲PCXのアイドリングストップ・システムは右手親指でオン・オフを切り替えられます。

バイクでは、ホンダ車のスクーターなど一部機種の搭載にとどまっています。ヤマハの50ccスクーターもホンダが製造を担当するようになった2018年モデルから搭載され始めました。

また、ヤマハは2021年6月28日に発売する新型NMAX(125cc)に搭載。海外では以前からアイドリングストップ機構を搭載したモデルを販売しており、研究・開発は進められていたのでしょう。

ちなみに世界で初めて「アイドリングストップ・システム」が搭載された量産二輪車は、1999年7月に発売されたホンダ「ジョルノクレア・デラックス」です。

画像: ▲ホンダ ジョルノクレア・デラックス(1999年)

▲ホンダ ジョルノクレア・デラックス(1999年)

原付二種のPCXに関しては、2010年3月に発売された初代モデルから搭載。125ccクラスでは、国内で初めての採用となりました。

画像: ▲ホンダ PCX(2010年)

▲ホンダ PCX(2010年)

それから約11年、2020年末に発売された最新PCX(2021年モデル)に至るまで、「アイドリングストップ・システム」は、綿々と受け継がれてきた定番の機能となっています。

画像: ▲ホンダ PCX(2021年)

▲ホンダ PCX(2021年)

ちなみにPCXのオーナーズマニュアルには、下記の条件を満たしたときに「アイドリングストップ・システム」が起動すると書かれています。

・サイドスタンドを格納していること
・スタータースイッチによりエンジンが始動されていること
・エンジンが十分に暖機されていること
・車速10km/h以上で走行していること

「車速10km/h以上で走行していること」というのは個人的に発見でした。超低速走行を続けていても、アイドリングストップ・システムは起動されないのですね。

また、バッテリーの電圧が低いときは、起動されない仕組みになっているそう。
ただし安心しきるのは禁物。ライト類は点灯しているので、長時間のアイドリングストップは控えましょう。とくに冬場は気を付けたいですね。

以上が公式サイトや取扱説明書から得られた情報。ここから先は少し深い情報です。
 
実際に乗ってみて感じた疑問をホンダの担当者の方に伺いました。

ホンダさんに「アイドリングストップ・システム」に関するいろいろなことを聞いてみた!

Q. アイドリングストップからの始動が新しいモデルほど素早くなっている印象を受けます。立ち上がりに要する時間設定の変更が行なわれているのでしょうか?

A. PCXは新型エンジン「eSP+」になったことで、エンジン内部のフリクションが低減できております。そのため、同じACGスターターでの起動においてもより素早く燃焼に達して始動できるようになりました。具体的な数値については社外秘となります。

画像: ▲PCXは最新型でエンジンがこれまでの「eSP」から「eSP+」にバージョンアップ。最高出力も12PSから12.5PSにアップしました。

▲PCXは最新型でエンジンがこれまでの「eSP」から「eSP+」にバージョンアップ。最高出力も12PSから12.5PSにアップしました。

Q. 走りだしてから1回目のアイドリングストップは、2回目以降と比べると時間がかかります。これはバッテリーの消耗を抑えつつ、暖機を行なっているという解釈でいいでしょうか? それとも学習機能のようなものが搭載されているのでしょうか?

A. アイドリングストップは、エンジン暖機が完了しなければ作動しないようになっております。これはバッテリーの消耗保護ではなく、排気ガスの浄化性能が安定するように配慮を行なっております。マフラーが冷間時であると触媒が不活性であるため、触媒の活性状態が安定するまで作動しません。これは実験値により決定しておりますので、学習機能はありません。

画像: ▲エンジンとともにマフラーが暖まるまで作動しないんですね!

▲エンジンとともにマフラーが暖まるまで作動しないんですね!

Q. 赤信号で止まった際、すぐにアイドリングストップをしたいと思い、ついスロットルを開度ゼロの位置以上に戻してしまいます。すると、ピタッと反応するかのようにエンジンが止まる気がするのですが、気のせいでしょうか?

A. 作動条件にスロットル開度ゼロがありますので、おそらくスロットル開度ゼロ以上に戻すアクションにより、通常に戻すよりも早くゼロ位置となり、その分、作動する体感が早くなっているのかと思われます。スロットル開度ゼロより戻しても差異があるようにはなっておりません。ちなみに強制的にアイドリングストップを作動させる機構はありません。

画像: ▲停車した瞬間、グッとスロットルを戻してアイドリングストップを強制的に作動させようとしていました。結果的に開度ゼロの位置の戻るのが早まっていただけなんですね(汗)。

▲停車した瞬間、グッとスロットルを戻してアイドリングストップを強制的に作動させようとしていました。結果的に開度ゼロの位置の戻るのが早まっていただけなんですね(汗)。

ホンダさん、どうもありがとうございました!

【まとめ】アイドリングストップが「うざい」と感じる人に体感してほしい

インターネットで「アイドリングストップ」と検索すると、サジェスト(関連キーワード)に「アイドリングストップ うざい」「アイドリングストップ いらない」などネガティブな候補も上がってきます。

たしかに僕も初期型のPCXに乗ったときは、「ちょっと、もたつくなあ」と感じたことも。でも最新型のPCXにおいてイライラは無縁。暖機を済ませた後は、すっとエンジンが止まり、スロットルを開ければ、ストップしていたのを忘れていたくらいに素早く発進してくれます。

画像: 【まとめ】アイドリングストップが「うざい」と感じる人に体感してほしい

そのストレスフリーな動作には「思考を読み取られているのか?」と感じたほどです。

学習機能は備えていないということでしたが、新型エンジン「eSP+」のおかげによって始動性が向上していたんですね。

ホンダ車の「アイドリングストップ・システム」は、オンオフ切り替え式でストップさせないこともできますが、最新型なら「うざい」なんて思うことはないはず。

日々通勤や買い物など街中で使うことが多いスクーターですから、燃費は大事。賢く利用して、最高でどのくらいの実測燃費を出せるのか試してみるのも面白そうですね。

まとめ:西野鉄兵

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