日本が誇る二輪車メーカー4社は世界各地で高い評価を得ている。そして日本市場では正規販売されていない機種が海外では数多く展開されてもいる。この連載では、そんな海外限定ともいえるモデルをフィーチャー。今回はホンダ「CB125R」とともに欧州で現行販売されている「CB125F」にフォーカス!
文:小松信夫

ヨーロッパで「CB125R」とともに併売されている「CB125F」

画像: Honda CB125F 欧州仕様・2021年モデル 総排気量:124cc エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブ単気筒 シート高:790mm 車両重量:117kg

Honda CB125F
欧州仕様・2021年モデル

総排気量:124cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブ単気筒
シート高:790mm
車両重量:117kg

CB250Rと共通のスタイルと車体に加えて、今年モデルチェンジで新たにDOHCエンジンを搭載し、高精度なSFF-BPフォークも採用、さらに完成度が高まった125ccスポーツのホンダCB125Rは、ヨーロッパ各国でも販売されている。

しかしヨーロッパ向けには、CB125Rに加えてもう1台の125ccスポーツとして「CB125F」が存在しているが、こちらは日本では販売されていない。

画像: CB125R(日本仕様・2021年モデル) www.autoby.jp

CB125R(日本仕様・2021年モデル)

www.autoby.jp

125ccのロードスポーツという点で両車は同じだが、エンジンはRの水冷DOHC4バルブに対してFはシンプルな空冷OHC2バルブと全く別物。車体周りは「R」は250と共通のフレームに倒立フォーク、モノショック、前後ディスクブレーキでフロントはラジアルマウントキャリパーだが、「F」の車体は正立フォーク、リアツインショックというオーソドックスな造り。「F」のブレーキもフロントはディスクだけどリアはドラムだ。

画像1: CB125F(2021年モデル)

CB125F(2021年モデル)

ホイールサイズも「R」は軽快さ重視の前後17インチ、「F」は安定性重視の前後18インチ。スタイリングでも、細部までこだわって美しさとスポーティさを表現した「R」、強い存在感を持ちながら奇を衒わない質実な造りの「F」と、あらゆる部分で対照的。

それは、CB125Rが純粋なスポーツバイクなのに対し、CB125Fが生活のための道具、扱いやすく質実なシティコミュータとしての完成度の高さ求められているからだ。

画像: SP125(インド仕様車)

SP125(インド仕様車)

CB125Fは2020年秋、2021年モデルとしてフルモデルチェンジしている。従来型は中国で生産されていたが、この新しいCB125Fはホンダがインドで販売しているSP125とほぼ同じものとなった。

画像1: ヨーロッパで「CB125R」とともに併売されている「CB125F」

販売競争の厳しいインド市場向けのSP125は、シンプルで粘り強い特性を持ち、信頼性が高く、しかもフリクションロスを徹底的に小さくした高効率なeSPエンジンで、燃費も良くユーロ5規制もクリア。

画像2: ヨーロッパで「CB125R」とともに併売されている「CB125F」

LEDヘッドライトに多機能液晶メーターと装備も現代的で、センタースタンドやコンビブレーキも採用して使い勝手も良い。そしてこれらは、ヨーロッパで要求される実用性、経済性も満たしているわけだ。価格もCB125Rが4749ユーロなのに対し、CB125Fは2/3以下の2799ユーロに抑えられ、コストパフォーマンスも優れている(もっとも、SP125のインド現地価格よりはかなり割高だ)。

画像: SP125のサリーガード

SP125のサリーガード

とはいえ、CB125F=SP125ではなく、細かな差異はある。そもそもCB125Fは生産地がインドではなくイタリアだ。正確にはパーツがインドから供給され、組み立てをイタリアで行うという方式のようだ。

具体的な相違点でいえば、まずSP125の車体左側のリアサス後方には、「サリーガード」と呼ばれるインド女性が着用する民族衣装・サリーの巻き込みを防ぐためのパーツが装着されているが、これはCB125Fにはない。また、SP125はまるでスーパーカブのようにチェーンがフルカバーされているが、CB125Fはチェーンが露出する開放型で、上側のチェーンガードのみを装着している。

画像2: CB125F(2021年モデル)

CB125F(2021年モデル)

画像: SP125

SP125

また、SP125のシフトペダルは踵で踏んでもシフトアップができる形状だが、CB125Fでは一般的なスポーツモデルのように爪先でのみ操作する形状だ。いずれもヨーロッパでの使い方や道路環境に対応するための変更だ。

カラーリングもSP125の派手なグラフィックが目立つものに対し、CB125Fは落ち着いたソリッドカラーで、同じデザインでありながら、かなり印象が異なって見える。

画像3: CB125F(2021年モデル)

CB125F(2021年モデル)

シティコミューター・CB125Fの実用性は、かなり高いレベルにあるのは確かだ。なら日本でも売ればいいのに? という声も出てきそう。しかしイタリアで生産されているCB125Fをそのまま持ってくると、おそらく価格がかなり割高になってしまうだろう。

ただそれは、GB350のようにインド生産にすればクリアできるかもしれない。しかし実用性抜群の原付二種、しかも日本の道に最適化され、圧倒的な支持を集める「スーパーカブ110」が存在している限り、実用車としてCB125Fが入り込む余地は無さそうだ。

文:小松信夫

ホンダ「CB125F」(欧州仕様・2021年モデル)の主なスペック

全長×全幅×全高2015×750×1100mm
シート高790mm
車両重量117kg
エンジン形式空冷4ストOHC2バルブ単気筒
総排気量124cc
圧縮比10.0
最高出力10.9PS/7500rpm
最大トルク10.9Nm/6000rpm
燃料タンク容量11L
変速機形式5速リターン
キャスター角26°
トレール92.4mm
タイヤサイズ(前・後)80/100-18・90/90-18
ブレーキ形式(前・後)Φ240mmディスク・Φ130mmドラム

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