市販レーサーと同時開発されたレプリカを超えたレプリカ!
レプリカの域を超えた公道レーサー時代の幕開け
80年代から90年代にかけてレーサーレプリカブーム期のマシン開発はロードレースと切っても切れない関係にあった。2スト250cc、4スト400ccの市販車をベースにしたプロダクションレースが人気で、この2カテゴリーが混走となる耐久レースなどでは、パワーに勝る4スト400ccが有利な状態が長く続いていた。
その状況を変えたのが、1985年11月に登場したヤマハTZR250だった。ホンダは1985年から市販レーサーRS250Rの販売を開始していたが、実は、その1987年モデルと同時進行で一般市販車の開発を進める手法を導入。そして、1986年10月にNSR250Rの市販を開始した。
RS250RやワークスNSR250Rとそっくりな出で立ちで登場した2ストローク250のNEWモデル、NSR250R。
ULF(ウルトラ・ライト・フレーム)と名付けられたアルミツインチューブフレームに搭載されたエンジンは、吸気にクランクケースリードバルブを採用した完全新設計の水冷90度Vツインで、ATACからさらに一歩進んだ排気デバイスRCバルブやレスポンスに優れるフラットバルブキャブレターを採用。ある回転域から一気に力を増すのではなく、中回転域から比較的フラットにトルクが立ち上がる、新しい感覚のパワー特性を実現していた。
エンジンは完全新設計水冷90度Vツイン。キャブレターはエンジン後方に平行に配置され、前後バンク共に前方排気となった。エンジン回転数に応じて排気タイミングを変更するRCバルブを装備した。
車体は、スリムなエンジン幅を活かし、さらに、エンジン自体をもフレームの一部とした設計。ホンダ独自の「目の字」断面構造をもつアルミフレームの採用とあいまって、軽量・高剛性、低シート高(750mm)を実現している。
Honda NSR250R[MC16] 主なスペック
全長×全幅×全高 | 2035×705×1105mm |
ホイールベース | 1360mm |
最低地上高 | 135mm |
シート高 | 750mm |
車両重量 | 141kg |
エンジン形式 | 水冷2ストケースリードバルブ90度V型2気筒 |
総排気量 | 249cc |
ボア×ストローク | 54.0×54.5mm |
圧縮比 | 6.2 |
最高出力 | 45PS/9500rpm |
最大トルク | 3.6kgf・m/8500rpm |
燃料タンク容量 | 16L |
変速機形式 | 6速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 100/80-17 52H・130/70-18 63H |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク |
当時価格 | 55万9000円 |
※この記事は月刊『オートバイ』2021年6月号別冊付録「RIDE」の特集から一部抜粋し、再構成して掲載しています。当特集のスタッフ 文:安藤佳正、宮﨑健太郎/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸、森 浩輔/撮影協力:ホンダコレクションホール