アドベンチャースーツは、春夏秋冬・全天候に対応するとうたう製品も多いが、その実、夏よりも冬寄りのウエアになりがちだ。この記事で紹介するアルパインスターズのジャケットとパンツは、夏に苦しみたくないアドベンチャーライダーへおすすめしたい。
文:太田安治/写真:森 浩輔

【テスト&レポート】アルパインスターズ「ケッチャム ゴアテックスジャケット」「ロードプロ ゴアテックスパンツ」

Alpinestars 「KETCHUM GORE-TEX JACKET」「ROAD PRO GORE-TEX PANTS」

税込価格:ジャケット=8万2280円/パンツ:6万280円

暑い時期も快適なアドベンチャーウエア

タフなツーリング用オートバイとしてアドベンチャーモデルの存在意義を確立したのがヨーロッパ。高速道路網が発達し、アルプスをはじめとする山岳路から温暖な海岸線までを高いアベレージで駆け回るヨーロッパのツアラー達が、防寒/防水性能とプロテクション性能、さらに頑丈で耐久性も高いウエアを求めた結果、ラリースーツとも呼ばれるアドベンチャーウエアが普及した。

僕もオフロード系車両の撮影時やツーリングでは上下セットのラリースーツを着用することが多いが、寒さと雨にめっぽう強く、大きなポケットが数多く付いている実用性の高さにも感心する。だが、ひとつだけ不満がある。『夏場の暑さ』だ。

そもそもアドベンチャーウエアに使われている防水生地は風を通さないし、防寒性能を確保するためウエア内に風が入らないように作られている。部分的なベンチレーターを装備した製品もあるが、日本の夏には能力不足で、外気温が25℃を上回ると「もっとベンチレーション効果の高いタイプが欲しい」と感じていた。

ここで紹介するアルパインスターズ「ケッチャム」は、圧倒的な防水/透湿性能を誇るゴアテックスを採用し、衝撃吸収性の高いCE規格プロテクターを随所に配していることが特徴だが、僕が注目したのはベンチレーション性能

両胸と肘から手首にかけてエアインテークがあり、ここから入った走行風を背中の両側に設けられているエアアウトレットから排出する。どちらも開口部面積が大きいうえに、胸部分はスナップボタン、背中部分はドローコードで大きく開いた状態を維持できるように配慮されている。

付属の防寒インナーを外し、下は長袖Tシャツ一枚で外気温23℃の日に試したところ、走っている限りはベンチレーション効果を体感できる。高速道路では風が抜け過ぎて寒かったから、外気温30℃近くまでは快適に着られるだろう。一日の寒暖差が大きい山岳地域や北海道ツーリングには最適の一着となる。

︎アドベンチャーウエアらしく着丈、袖丈とも長め。プロテクター類もCE規格のしっかりしたものが内蔵されている。身長176cm、体重62kgの僕は国産ブランドだと「L」がフィットするが、アルパインスターズ製品はヨーロッパサイズ表記なので「M」でちょうどいい。

画像: 胸のインテークは縦に大きく開き、スナップボタンで固定できる。止水ファスナーを使用しているので防水性にも不安なし。

胸のインテークは縦に大きく開き、スナップボタンで固定できる。止水ファスナーを使用しているので防水性にも不安なし。

背中のアウトレットはファスナー開閉式で、ドローコードを絞れば開いた状態を保てる。実走テストで最も大きな効果を感じた部分だ。

画像: 肘から手首にかけての長いエアインテーク。走行風をダイレクトに受ける部分だけに、ベンチレーション効果は想像以上に高い。

肘から手首にかけての長いエアインテーク。走行風をダイレクトに受ける部分だけに、ベンチレーション効果は想像以上に高い。

ロードプロパンツは太もも外側にベンチレーターを採用。これもファスナー開閉+スナップボタン固定タイプになっている。


テスター・太田安治の欲張りリクエスト

画像: 【夏でも着られるアドベンチャーウエア】GORE-TEXとベンチレーションの組み合わせで、寒暖差の大きいツーリングにも対応

防水/防寒性能とベンチレーション性能は相反するものながら、納得の快適さを実現しているのは見事。逆に防寒性能よりも蒸し暑い気候への対応を優先した「アジアスペック」があってもいいのでは?


文:太田安治/写真:森 浩輔

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