文:小松信夫
東南アジアの製品とはまた異なるブラジルのアンダーボーン・バイク
いや世界は広い、まだまだ掘り返せば未知のローカルモデルはあるもんで、今度は南米はブラジルでございます。
ブラジルでのホンダのラインナップを見てみると、CBRとかゴールドウイングとかアフリカツインとか、富裕層に向けたビッグバイクも販売されております。その一方で庶民の実用的な足としてのバイクやスクーターも豊富に揃っておりまして。
中でも、世界のどっかでも見たような気もするオーソドックスな実用的スポーツ車の「CG160」シリーズが定番の人気モデルのようで、バリエーションが4タイプも設定されてたりするんですね。あと日本でもおなじみのグローバルモデル・PCXやADVも販売されてたり。
しかし、その中でも一際目立つ1台が「POP110i」なのです。ブラジルホンダ的には「CG160」と同じ「STREET」カテゴリーに分類…してはいる。
エンジンは先代までのスーパーカブ110系、というかファンバイクのCRF110用ベースらしい、シングルカム2バルブ、PGM-FI仕様の109cc空冷シングル。最高出力7.9PS、ミッションは4速。セルスターターは装備せず、始動はキックのみ。
無理やり分類すればアンダーボーンモデルなんだろうけど、ブラジルで売ってて同じエンジンを積んでる実用的デザインのアンダーボーンモデル「Biz110i」とは真逆の、とにかくユニークなスタイリングが最大の特徴。
異形ヘッドライトが目立つNC750Xにも似たクロスオーバー風フロントマスクから、フレームを覆うアンダーボーン部、シート下のサイドカバーまで一体成型(左右には分割されてる)のボディパネルは、オフロード車風フロントフェンダーや、モダンでシンプルにまとめられたシート周りと合わせた斬新な造形。そのある意味未来的なイメージを強調すべく、シート表皮のデザインにまでこだわっている。
日本のスーパーカブとも、東南アジア各国のさまざまなアンダーボーンモデルとも似ていない「POP110i」、これはもはやブラジル流の超個性的デザインというしかない?
前後ドラムブレーキ、ツインショックという足回りは取り立てて変わったところはない。強いていうならコンバインドブレーキを採用していることくらい。しかしフロント17インチ、リア14インチという前後異径のホイールが採用されているのはアンダーボーンモデルでは珍しい。
昔のミニオフローダー・XLR80なんかは16インチ・14インチだったから、オフロードを想定したってこと? いや、単にシート高を下げたかっただけかな。
超アップライトなハンドルの楽ちんなポジション設定、タンデムも楽そうで快適さも重視した造りのシート、力強く壊れなくて燃費も良いエンジン、軽量で扱いやすいボディと、斬新なスタイルとは裏腹に実用性は抜群な「POP110i」。
おまけに価格も安価だ。ちなみに、ブラジルで人気の「CG160」シリーズの中でも最廉価モデル「CG160 Start」は1万520レアル(日本円換算・約22万円弱)、普通なアンダーボーンモデルの「Biz110i」も8900レアル(同・約19万円)。
しかし「POP110i」は7330レアル(同・約15万円)と、かなり安価に抑えられている。という訳でこの「POP110i」、実用的なファンバイクとしてブラジルでは結構人気のようだ。カスタムパーツもいっぱいあるらしい。
初代「POP100」のデビューが2007年と意外に歴史があって、2015年に2代目の「POP110i」へとモデルチェンジしているということからも、その根強い人気が分かるだろう。
しかし「POP110i」もすでにデビューから6年、来年あたりそろそろ3代目が出てくるんじゃないか。果たしてブラジル産のアンダーボーンは、どんな進化をするんだろうねぇ?
文:小松信夫
ホンダ「POP110i」の主なスペック
全長×全幅×全高 | 1843×745×1033mm |
ホイールベース | 1234mm |
シート高 | 749mm |
車両重量 | 87kg(乾燥) |
エンジン形式 | 空冷4ストOHC2バルブ単気筒 |
総排気量 | 109cc |
ボア×ストローク | 50×55.6mm |
圧縮比 | 9.3 |
最高出力 | 7.9PS/7250rpm |
最大トルク | 0.9kgf・m/5000rpm |
燃料タンク容量 | 4.2L |
変速機形式 | 4速 |
タイヤサイズ(前・後) | 60/100-17・80/100-14 |
ブレーキ形式(前・後) | ドラム・ドラム |