文:小松信夫
「XV250ビラーゴ」が遠い祖先、大陸を走る「Vスター250」
日本では販売終了したけど、海外ではずっと現役というモデルは意外にありまして。ちょっと前に取り上げたヤマハの農業バイク・AG200のように、国内で向けは短命だったモデルもあれば、400モタードとしてそれなりに支持されていたスズキのDR-Z400SMなんかは、日本では10年以上前に販売終了したのにアメリカでは今でも売ってたりする。理由は大抵、排ガス規制絡みみたいですがね。
今回紹介したいのは、そういった日本でも売ってました系の超大物、今もアメリカとオーストラリアでは現役モデルなヤマハの「V STAR 250」でございます。車名こそ変わってますが、かつて日本では「XV250ビラーゴ」としてお馴染みだったモデルの末裔…。
「XV250ビラーゴ」は日本では1988年にデビュー、存在感の強いスタイルの扱いやすい250クルーザーとして根強く支持されロングセラーとなったモデル。2000年にエンジンを受け継いだ「ドラッグスター250」にモデルチェンジ。こちらも2017年まで生産された息の長いモデルでありました。
一方、デビューから33年という現役ご長寿モデルである輸出仕様の「V STAR 250」。当初は「ビラーゴ250」を名乗ってましたが、ヤマハが輸出向けクルーザーの「V STAR」シリーズを設けたのに合わせ、その最小排気量モデルとして2008年に「V STAR 250」に車名変更して現在に至ります。
排気量を感じさせないスマートなスタイル、基本的なメカニズムも実はビラーゴ時代ほぼそのまま(見比べると驚くほど変わってない。エンジンもキャブ仕様のまま)。軽くスリムで扱いやすい250クルーザーだったものが、そのバランスの良さが実用的なベーシックモデルに転じて現在まで生き残った、ということのようで。
スタイルは、兄貴分のミドルクルーザー「ボルト」にもなんとなく似ている。日本で「XV250ビラーゴ」として人気だった頃は、メッキパーツだらけの豪華ギンギラ仕様だったけど、現行の「V STAR 250」はすっきりシンプルな潔い出で立ちになったから、ボルトっぽく感じるのか。
現代の250クルーザー、ということは要するにあれだ、狙ってるところはホンダのレブルと同じってことだ。アメリカでの価格を見ると、レブル250より100ドル安く設定(V STAR 250・4499ドル、レブル300・4599ドル)してて、明らかにレブルを意識してるしね。
ということは、今また日本でも「V STAR 250」を発売すれば、レブルのライバルとしてそこそこ受ける? でもなー、キャブ仕様エンジンそのままでは、多分日本の排ガス規制をはクリアできないもんね。FI化したら多分レブルより高くなっちゃうだろうし。
ちなみにヤマハは「V STAR 250」に加えて、XV250系をベースにした警察用「白バイ」モデル「XV250P」も販売をしておりますな。どうやらアフリカ、中東、中米などの開発途上国向けで、政府や国際機関などに向けた国際協力活動事業の一環、ということらしい。
大人しい動力性能や乗り味から考えれば、交通取り締まり用とかじゃなく、主に警備・パトロール用途向けか。それも長年各国で愛されてきた扱いやすさからの選択なんでしょう、多分。
市販モデルが基本的にスポークホイールなのに対して、タイヤサイズはそのままで前後キャストホイールを採用してるのが「XV250P」の特徴。そこを除けば警察用としての装備以外、ほとんど市販モデルそのままに見える。あ、書類ケースに場所を取られてタンデムシートも無くなってるか。
白バイ装備で面白いのは、リア左側のサイドケースに、車体に搭載されているバッテリーとは別の補助バッテリーを搭載してること。これはエンジンを停止した状態で、ライトやパトランプ、スピーカーなどの装備を使用することを想定しているらしい。多分、他にも見えないところで白バイ用に細かく造り込まれてるんだろうなぁ。
文:小松信夫
ヤマハ「Vスター250」の主なスペック
全長×全幅×全高 | 2190×710×1060mm |
ホイールベース | 1490mm |
シート高 | 685mm |
車両重量 | 147kg |
エンジン形式 | 空冷4ストOHC2バルブV型2気筒 |
総排気量 | 249cc |
ボア×ストローク | 49×66mm |
圧縮比 | 10.0 |
最高出力 | NA |
最大トルク | NA |
燃料タンク容量 | 9.5L |
変速機形式 | 5速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 3.00-18・130/90-15 |
ブレーキ形式(前・後) | φ282mmディスク・ドラム |
※諸元はオーストラリア仕様 |