文:小松信夫
通常のガソリン車と見た目も重量も価格もほとんど変わらない不思議なハイブリッド・スクーター
特に他意はないんですが、これまでこの連載でスクーターって取り上げてませんでしたね。単純に私の琴線に引っかかるモデルがなかった、それだけの話です。しかし今回、ついにスクーターを取り上げることに! インドでヤマハが販売してる「ファッシーノ125Fi」…なんて、そんな普通のモデルなら紹介なんかしません。そのラインナップに、ついこの間追加された「ハイブリッド」です! 珍しくバリバリの最新モデル。
「ファッシーノ」の初代モデルは2015年のデビュー。「人とは違うおしゃれをしたい」「高級感が欲しい」というインドの若者に向けたスクーターで、「Rich & Classyなモダンレトロ」がコンセプトのスタイリングが特徴。扱いやすく軽快なボディに、高効率な空冷113ccエンジンによる優れた燃費も実現。これが狙い通りに若いライダーに受けて人気モデルになっていったという訳です。
そして2020年には「ファッシーノ125Fi」へとフルモデルチェンジ。もともと軽かった車重がさらに4kg軽くなって99kgにまで軽量化! 正立テレスコピックフォーク、フロント12インチ・リア10インチのキャストホイール、フロントディスクブレーキという充実した足回りを組み合わせる。空冷エンジンは、125ccに排気量を拡大し高効率も追求したブルーコアエンジンに進化。インドに導入されている排出ガス規制「BS6」に適合させながらパワーアップし、「ストップ&スタートシステム」(=アイドリングストップ)も採用して、さらに燃費も向上。
ボディはメッキリングで飾られた逆三角形ヘッドライトが印象的な、より洗練されたデザインのレトロなスタイリングへと変身。
容量21Lのシート下収納スペース、タンデムも余裕のスタイリッシュなシートに使いやすいタンデムグリップ、足着き良好なフットボード形状など、使い勝手も良好で大きく完成度をアップ。また、フロントブレーキがドラムのお買い得な廉価モデルも用意されましたよ。
そして今年になって追加されたのが今回のテーマである「ファッシーノ125Fiハイブリッド」なんですが、ノンハイブリッドのスタンダードとハイブリッド、その外観上の差はほぼ無し! 画像上わかる範囲では、ハイブリッドのみフロントナンバープレート取り付け用のネジ穴があること(なぜかスタンダードには無い)。
あとはカラーラインナップがスタンダードとハイブリッドで共通のカラーに加え、それぞれの専用カラーがあることくらい。ということで見た目が変わりばえしない上に、「ハイブリッド」をアピールするロゴとかも無いもんで、絵柄的に実に扱いづらいです。
で、肝心のハイブリッドシステムなんですが。空冷125ccブルーコアエンジンに新採用された、SMG(スマートモータージェネレーター)でオンボードバッテリーを充電、その電力を使って発進時や追い越し時の加速をアシストするためにSMGをモーターとして駆動。
0-200m加速では従来モデルより7車身分先行でき、時速30〜60kmの範囲の出力を30%向上。さらに燃費も16%向上しているという。いわゆるマイルドハイブリッドってやつで、ホンダのPCX e:HEVとやってることはほぼ同じですな。
エンジンにもともと付いてるSMGを活用する極めてシンプル構造な上に、アシスト専用バッテリーを積むのではなく通常のバッテリーと共用しているようで、スタンダートとハイブリッドで車重が変わらない。要するに制御ユニットのSGCUが追加されただけだもの。
だから価格もスタンダードの7万4530ルピー〜7万5530ルピー(日本円換算・約11万円)に対し、ハイブリッドは7万7530ルピー〜7万9530ルピー(日本円換算・約11万5000円〜11万7000円 / 価格は全てディスクブレーキ仕様)と、その差は5%そこそこ。
PCX e:HEVとスタンダードなPCXの日本での価格差が10万円近いことを考えると脅威的だなぁ。ただまあ、PCX e:HEVはグッとお値段の張るリチウムイオンバッテリー使ってるからね。
果たして「ファッシーノ125Fiハイブリッド」のハイブリッドシステムは、実際に乗ってみたらどんな出来なんだろう。もしPCX e:HEV並みの走りだったら…国内仕様のスクーターにも採用されれば、ファッシーノそのままのインド価格じゃないとしても凄い競争力だよ。うーん、さすがにそこまでは行かないよね〜、じゃないとPCX開発陣の立つ瀬がない。でも、近いうちに日本でもこのシステムを載せたヤマハのハイブリッドスクーターが登場するのかねぇ?
文:小松信夫
ヤマハ「ファッシーノ125Fiハイブリッド」の主なスペック
全長×全幅×全高 | 1920×685×1080mm |
ホイールベース | 1280mm |
シート高 | 780mm |
車両重量 | 99kg |
エンジン形式 | 空冷4ストOHC2バルブ単気筒 |
総排気量 | 125cc |
ボア×ストローク | 52.4×57.9mm |
圧縮比 | 10.2 |
最高出力 | 8.2PS/6500rpm |
最大トルク | 1.1kgf・m/5000rpm(SMGアシスト時) |
燃料タンク容量 | 5.2L |
変速機形式 | Vベルト無段階自動変速 |
タイヤサイズ(前・後) | 90/90-12・110/90-10 |
ブレーキ形式(前・後) | φ190mmディスク・φ130mmドラム |