Ninja ZX-25R ジワジワ増殖してます
一部で少しだけ好評をいただいている、全日本ロードレース選手権、それもMFJカップであるJP250(=ジャパン・プロダクション250)にスポットを当てた超速報詳報レースレポートです。
岡山国際は、昨年の大会が台風でキャンセルされ、全日本選手権は2年ぶりの開催。この岡山国際サーキットはエリア戦のJP250/CBRドリームカップが盛んで、今大会にも地元チームや地元ライダーが多数、参戦しました。ホントはこうやって、各エリア戦が盛り上がって、年に一度の全日本併催MFJカップにエントリー、という流れがJP250の理念なんですけど、各ライダー/チームとも、ついつい本気モードで全日本転戦をしちゃってる、という風になっていますね。
そして、市販250ccスポーツモデルをベースとしたJP250、その対象になるのはホンダCBR250RR、ヤマハYZF-R25、カワサキNinja250、そして今シーズンからカワサキの4気筒モデル、Ninja ZX-25Rも認可されましたが、そのNinja ZX-25Rも、発売から日が経って徐々にレース用パーツが出そろってきたのか、今大会には3チーム3台がエントリー。
鈴鹿大会に続いてANDORACING☆SNIPER・YSSの後藤恵治、カワサキ伝統のプライベートチーム、Team38から高谷純平、そしてJP250の絶対王者こと、18-19-20年と3年連続チャンピオンを獲得している笠井悠太(TEAM TEC2 & YSS)も、マシンを昨年までのCBR250RRからNinja ZX-25Rにスイッチしての参戦! 笠井、今シーズン、初参戦です。
実は笠井、この全日本選手権・岡山大会に先立って、8月にここ岡山でのエリア戦にも出場していたんですが、マシン改造規定を満たせずに失格となっています。雨の予選ではデビューマシンで10番手タイムをマークしていたんですがね。
土曜日に1Dayで予選~決勝が行われるJP250。土曜朝の公式予選は、金曜の夜まで降り続いた雨で路面はウェット状態。ここでトップタイムをマークしたのは、8月のエリア戦でも優勝している田中直哉(JOYONE RACING)。2番手に南 博之(373 & TEAM TEC2 & YSS)、そして3番手に、ここまでランキングを独走している篠崎佐助(TEAM TEC2 & YSS)がつけました。ここまでランキングトップの篠崎は、この岡山大会でランキング2位の中村龍之介(ENDLESS TEAM SHANTI)より先にゴールすればチャンピオンが決まります。
「どんなレースでも勝ちたいのは当たり前ですが、チャンピオンがかかった今回は、その条件さえ満たせばOK。今日は中村くんの順位だけサインボードに出してもらってレースします」とは篠崎。7年ぶりに全日本選手権に帰ってきて、MFJカップとはいえ、復帰即チャンピオンが、チームへの恩返しになる、と語ってくれました。
スタートダッシュを決めて、新設の2コーナーシケインに真っ先に飛び込んだのは田中。予選3番手の篠崎が続き、3番手以降に南、桐石世奈(Challenge Fox & TEAM TEC2 & YSS)、地元・岡山市のバイクショップ「シン ライディングサービス」の土岩直人(SHIN-RS & SUNOCO)がつけます。土岩も、8月のエリアで田中に続いて2位表彰台に上がっているライダーですね。
レースは序盤から、この中から南が徐々に遅れはじめ、田中、篠崎、桐石、土岩がトップグループを形成。この4台が5番手以下を徐々に引き離しながらレースを引っ張っていきます。
トップを走る田中に篠崎が追いつき、そこにくっついてくる土岩もトップに顔を出す、という展開。このとき、篠崎のチャンピオン確定の対象である中村はセカンドグループを引っ張る形で周回。先頭集団に離され、セカンドグループで後ろから突っつかれて、徐々にトップグループが離れていく苦しい展開になってしまいます。
対照的に、中村の位置取りだけ気にしてレースをする、と語っていた篠崎は、トップグループでペースコントロール。田中、土岩が前に出ても、あわてず騒がず集団にくっついていきます。
レースが終盤になると、土岩が遅れ始め、田中がトップに立ったまま周回。篠崎は決して無理しようとせず(に見えました)そのまま2位でフィニッシュ。それでも、田中は実は国内ライセンスクラスのため、篠崎は国際ライセンスクラス優勝! 6戦5勝でチャンピオンを決めました! 田中を前に行かせてもクラス優勝。篠崎はここまで計算していたのかもしれませんね。
国際ライセンスクラス2位には女性ライダーの桐石、3位に中沢寿寛(i-FACTORY & Mガレージ)が入りました。国内ライセンスクラス優勝は、総合でも優勝を飾った田中、2位に土岩、3位に南が入りました。総合優勝した田中は、実は2020年にCBRドリームカップにデビューした、まだロードレース2年生の25歳! 大阪・貝塚が地元で、CBRカップまでは近スポや堺カートランドでミニバイクをやっていたんだって!
これで篠崎は、7年のブランクを経ての復帰でJP250チャンピオンを獲得。所属チームTEC2は笠井が18-19-20年、そして今年は篠崎と、4年連続のJP250チャンピオンチームとなりました。国内ライセンスクラスは田中、土岩とスポット参戦勢が上位につけ、ランキングトップの鈴木悠大(キジマKISSレーシングチーム)はクラス5位。ポイントランキングでも、クラス7位にはいった梶山采千夏(RankUp WingStone)が3.5ポイント差まで追いついてきて、このふたりが最終戦で雌雄を決します!
篠崎佐助 2021年JP250クラスチャンピオン
TEAM TEC2 & YSS 予選3番手/決勝総合2位
「総合では2位になりましたが、とにかくチャンピオンを決められてよかったです。今年の初めに、古巣といえるTEC2さんに声をかけてもらってレースに復帰して、なにがなんでもチャンピオンを獲って恩返ししなきゃ、と思っていたので、それができて本当にうれしい! この岡山国際は、2010年に、まだ2ストロークのGP125クラスで初優勝した思いで深い場所なんです。その時のチームもTEC2で、なんか縁があったのかもしれないですね。復帰したシーズン、正直ブランク前の60%くらいしかスピードや感覚が戻っていない感じだったんですが、なんとか勝ち切りましたね。実はこれでも、すごいプレッシャーがあったので、最終戦はのびのびと、今年のテーマだった『楽しんでレースする』を実行しようと思います。最高の体制とマシンを用意してくださったTEC2をはじめ、たくさんの方に応援いただいて、ありがとうございました!」
田中直哉 予選ポールポジション/決勝総合優勝
「今シーズンは、前回の鈴鹿(総合4位/国内ライセンスクラス2位)とこの岡山だけ出場する予定だったので、前回勝てなかったぶん、今回は優勝できてうれしいです! 予選はウェットで、これは自信もあったし、思い切りいけたんでポールを獲れましたが、決勝はドライになって、どーしようかなぁ、と。先週、ここに練習にきてサスセットに迷ってしまって、そこを修正しながらのレースでした。決勝は、序盤はペース見ながら4台くらい集団ができたので、あれれ僕が邪魔してるんかなぁ、と思いながら走ってたんですが、地元の土岩君が迫ってきて、これはいかん、とペースを上げたら、後ろが離れ始めて4台でトップ争い、というレースでしたね。自分のベストを狙いながら、楽しむことを頭に入れてがんばりました。バトルを楽しみながら優勝狙う、と。それでタイムが上がって優勝できたのでよかったですね。全日本の最終戦は出ずに、岡山のエリア戦は最後まで出よう、と思ってます」
写真・文責/中村浩史