文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
インディアン「FTR R カーボン」インプレ・解説(宮崎敬一郎)
前後17インチ化でさらにスポーティに進化!
FTRシリーズはダートトラッカーイメージが魅力のインディアンのスポーツモデル。ワイルドな「ラリー」もあるが、基本的にはオンロードモデルと言っていい。
車格的は国産の大型ネイキッドなみ。いかにもアメリカっぽいトラッカーテイストの押し、迫力はかなり個性的。造りも上質だ。
今回試乗したのはFTRシリーズのトップモデル、Rカーボン。外装にカーボンパーツを採用した高級モデルで前後サスにはオーリンズを導入、走りも強化している。加えて2022年モデルから、ラリー以外のモデルは前後タイヤが17インチ化されている。
これで走りが大きく変わった。これまでのフロント19・リア18インチに比べるとやはり身軽だしその動きもダイレクトでカッチリしている。それに加えて、このRはサス自体の作動性の良さから乗り心地がいい。深くリーンさせた時のスタビリティも確実で、これまでより安心して大きくスロットルを開けられる。頑丈なシャシーとのマッチングもよく取れており、大きなギャップをコーナリング中に乗り越えた時の収束も自然だ。
ただ、身軽になったとはいえ、日本車のように俊敏な身のこなしではなく、長さやマスの大きさを感じる落ち着きのあるタイプ。すばらしいのは、重くても素直な応答をするので、身体を使った操作をすればダイレクトに身を翻えせること。かなり意のままに扱える。サスのセッティングを煮詰めればよりクイックな走りも可能になると思うが、そういったモノを追求するバイクではない気がする。本来の素直さを楽しんだ方がより面白いだろう。
エンジンは1203ccで120馬力を発揮する水冷Vツイン。パワーモード切り換えを、最もスポーティな「スポーツ」にしても神経質なところがまるでない。一方で「スタンダード」ではクルーザーのようなパルスと、のどかさを楽しめる。インディアンはキャラクターをはっきり分けたモード設定が面白い。特に「スポーツ」は前モデルよりダイレクトな応答なのにレスポンスは大らか。ECUなどのマネージメントが熟成されたのだろう。
FTR Rカーボンは電制システムの進化と足回りのグレードアップの威力を見せ付けてくれた。スポーティな走りを楽しむのもいいが、その美しくも迫力ある姿、開ければ猛ダッシュするが穏やかなパルスも楽しいエンジンなど、アメリカンスポーツならではのテイストを堪能したい。