全身でタフネスギアであることを押し出すキャラクターのADV150は、スクーターというジャンルにおいて他のモデルとの差別化を果たせたのか否か? というポイントに焦点を合わせ、通勤のみにて長期間使用してみた。
文:山口銀次郎/写真:柴田直行

ホンダ「ADV150」通勤インプレ(山口銀次郎)

画像: Honda ADV150 総排気量:149cc エンジン形式:水冷4ストOHC単気筒 シート高:795mm 車両重量:134kg 発売日:2020年2月14日 税込価格:45万1000円

Honda ADV150

総排気量:149cc
エンジン形式:水冷4ストOHC単気筒
シート高:795mm
車両重量:134kg

発売日:2020年2月14日 
税込価格:45万1000円

兄弟車といっても過言ではない、並列2気筒750cc電子制御6段変速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)エンジン搭載のX-ADVのデザインやコンセプトを色濃く引き継ぎ、アクティブかつシティランを意識した無骨さと先進的で特徴的な外観となっている。その意欲的な造り込みは、スペックを見てもオーソドックスなスクーターと一線を画す設定であることがわかる。

まず、大きくクリアランスを持たせた最低地上高を確保するが、それはそのままシート高となって表れるもので、足着き性が犠牲になってしまうというのは否めない事実である。しかし、シート形状やフットボード形状にて足着き性を考慮しすることで、数値以上の不便さを感じさせることはなかった。

画像1: ホンダ「ADV150」通勤インプレ(山口銀次郎)

一見とっつき辛く感じてしまうクリアランスが大きい最低地上高だが、可動領域の広い前後サスペンションにより、クラスを超えた優雅かつ衝撃吸収性に富んだ乗り心地を提供してくれる。

未舗装路を走行せずとも、舗装の継ぎ目などといったバンプが多く存在する街道では、ある程度の速度に乗って“不意をついて”障害やバンプに“当たる”感覚に近く、その衝撃は相当なものであることはバイク乗りの皆さんなら経験済みのことだろう。それだけ、普段の走行では煩わしさに直面しつつ走行しているのだが、「慣れてしまえばナントやら」で身体が自然と対処してしまっているものだ。

ストローク量のあるサスペンションは、2人乗りや高速道路走行も想定したものなので、きめ細やかな動きで静粛性を保ちつつフワフワとした余計な動きがない、柔さより硬質な印象が強いものとなっている。

また、14インチでブロックパターンのタイヤとのセットになると、軽快さをスポイルするようなクセが出てきそうだが、その心配は無用といえる。車格に見合った落ち着きと、クセのないハンドリングは、ある意味意表をつくほどの素直さがあった。タイヤによる連続的なノイズやバンキング時に独特の踏ん張りが若干あるものの、機敏さや軽快感を損なうほどのものではない。

高いシート高で視線も通常のスクーターより若干高く感じるが、特にコックピットの特異性で気になったのが、ハンドル形状や位置設定であった。取り付け位置などの数値的にも、ハンドルバーの形状も他のスクーターと大きく変化しているように思えないのだが、明らかにその操縦感覚はスクーターではないオートバイのものに近いのだ。

大型タンデム一体シートの先端からさほど離れていない、スクーターなではのアップライトかつ扱いやすさに重点を置いた、セオリー通りのハンドル位置設定なのにも関わらず、なのだ。強いて言えば、グリップ部分の絞り具合が緩く、一文字ハンドル形状寄りではあった。それだけで、通常オートバイの落ち着いた雰囲気を再現できるのであろうか? 大径ホイールと足長腰高設定とのセットでそういった印象に繋がるのかもしれないが、確証はまったく持てないでいるのが現実だ。

画像2: ホンダ「ADV150」通勤インプレ(山口銀次郎)

エンジンは高回転域まで即刻吹け上り、Vベルト特有のクセのない速度のノせ方をみせる。80km/h以内であれば加減速は淀みなくパワフルに行え、さすが150ccの余裕感を堪能できることだろう。一般道では流れを確実にリードできるダッシュ力を誇り、高速道路では他車との流れに同調できるほどの伸びの良い力強さを秘めている。街乗りなどの下道に特化した設定ではなく、高速道路巡行も見据えているので、越県してのロングトリップも苦もなくできるだろう。

小ぶりで可動調整式のフロントスクリーンは、高速道路巡行時にはやや物足りないスクリーン効果だが、オートバイ感溢れ立ちの強い乗車姿勢であること考慮すれば致し方ないだろう。とはいえ、基本的には胸部より下はスクーター特有の形状なので、多少の雨でも防いでくれるほどの防風効果が得られる。

街乗りでは幹線道路からクランクが続くような裏道まで走行したが、250ccのビッグスクーターの様な張り出しや重量感がなく、50ccや125ccスクーターの系統を感じるほど軽快さを持ち合わせていた。また、ストップ&ゴーが続く様なシチュエーションでも、姿勢を崩すことのない節度ある加減速を可能にする器用さもある。

画像3: ホンダ「ADV150」通勤インプレ(山口銀次郎)

他にはない個性的なルックスで、異端の存在感が乗り味にも影響するかという予想に反し、オールマイティなスクーター特有の懐の深さがあり、それでいてADV150ならではのフィーリングも活きている。もちろん、飽きのこないキャラクターと高いパフォーマンスを兼ね備えているので、週末には冒険に旅立ちたくなるというもの。

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